劇場

どうしようもない日常の中に愛が溢れている、優しくて切ない作品だった。
永くんと沙希ちゃんの間に必要なものは、何だったのだろう。少しのスパイスを加えるだけで崩れてしまう2人の日常は、何も加えないことが1番だったのだろうか。いや、それとも永くんが結果を得ることが2人の幸せに繋がったのだろうか。
永くんは、どーしようもなくて、才能も無かったのかも知れないけれど、それでも沙希ちゃんに信じて貰えた、沙希ちゃんにとっての自慢だったことが、どれほど永くんを救ったのだろう。あと少し、永くんが言葉で伝えられていたなら。

最後の永くんのセリフの場面には涙せずにはいられなかった。そのセリフに「ごめんね」だけを返す沙希ちゃんにも胸が締め付けられた。どうか沙希ちゃんが心から幸せになりますように。「好き」だけではどーにもならないことを、2人の世界が狭くて明るかったことを、2人が2人の未来を思い描いていたことを、繊細な文章で描いた2人の日常は、私には眩しかった。
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