誰も知らない

あまりに当たり前に訪れる残酷さにどんな言葉がふさわしいのか分からなかった。
一見、愛情たっぷり育てられているようにも見えるその兄弟達は戸籍がなかった。
当たり前に母親が大好きで、当たり前に家から出てはいけなくて、当たり前に学校にも行けない。それだけでも残酷だと思った。
母親の身勝手さは言うまでもなく、兄弟たちのそれぞれの父親の身勝手さにも驚いた。子どもは親を選べないとよく言うけれど、その通りだと思った。

長男が、友達ができて、家に連れてきてゲームをしたりするそんな日常が、辛かった。そして友達が自分達とは違うこの家に気付いて離れていく場面も残酷だった。

映画を見終わった後、「誰も知らない」と言うタイトルの重さと残酷さを思い知らされたような気がした。「誰も知らない」ではなく、誰かが知らなきゃいけないと思わされた。

この映画のモデルとなった事件について調べると、映画の内容よりずっとずっと残酷で悲惨で衝撃的だった。ニュースや新聞で文字にするだけではいけない、こんな現実があってはならないと強く感じた。

言葉にならないやるせなさと一生忘れられない衝撃を与えられた映画だった。

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