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死ねない男が羨む死んだ女の赤い血の話

聖永の刹那、有為の奥山抱えし麓の賽の河原で石を積む。

川は流れど終着はなく、追えば気づいて積まれた石。

歩けど届かぬ最果てに、憂えて自死さえよぎるけど、そんな勇気はありゃしない。

ふと現れた人型に、人肌恋しさの心の小躍り沸かせるも、既に事切れて目は魚。

彩乏しき白と黒の世界に、滴る赤のあなたの生命の残滓が美しくて、しかし終わりを選べたことが羨ましくも妬ましく。

かくて現れた赤色は、余計に度胸を縮こませ、終わらぬ刹那を永遠に、げに情けなく生きさせた。

どれほど時間が経っただろう。

決して訪れない終焉に、今なおこうして石を積む。

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