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de、愛永遠彼(であいとはかれ)7話

       美由紀と由紀
 私は幼い頃から父親が嫌いだった、優しいお母さんをいつも苛めているから。毎日のようにその光景を見て来たからか私は人を信じられなくなり誰とも話が出来なくなってしまった。
 中学に入る少し前からお母さんが隠れて泣いている事が多くなり、父親に対して殺意さえ覚える様になっしまっていた。
 そんなある日私は父親に乱暴されてしまう、もう何が何だか分からなかった。私が抵抗するとお母さんが今までよりも大変な事になってしまう、だから一切の抵抗は止めて何度も何度も目を瞑り歯を食いしばって我慢して来た。

 お母さんのお陰で父親は警察に捕まりやっと私達は自由になったのだが、父親に乱暴された日から異性に接触する事が恐怖で話し掛けられるダケデモ立っていられない程体調が悪くなってしまった。
 私の事を本当に心配してくれたお母さんは側にいてくれるからと一緒に病院に行くと私は極度の対人恐怖症と異性恐怖症だと診断された。
 新しい土地に移動して気分が少しは変わるかもとも思っていたが、矢張り改善される事はなかった。あの人に会うまでは··········。

 初めて会ったのは引越の日私より少し年上で今大学生で一人暮らしをしているらしい。名前は由紀雄さんと言っていた。言葉は使いは丁寧で声のトーンもお母さんの様に聞き触りの良い声をしていた。でも話し掛けられたけど緊張してお母さんの影に隠れてしまった············緊張した?
 住む場所が変わっても私は何も変わる事は無かった。きっと死ぬまでずっとこのままなのだろうと·····お母さんが居なくなっちゃったら私ってどうなるんだろう。何て事を考える事が多くなっていた。
     でも··············
 一人で街に出る事が二度あり予想していた以上にどっちの時も倒れそうになるくらい体調が悪くなった、だけど本当にもう駄目だと思った時二度とも由紀雄さんが助けてくれた。本人は偶然だとも言っていたけれど······でも由紀雄さんに限って変な意味はないよね?そう自分に言い聞かせていた。
 本当に不思議な人だ由紀雄さんからは異性としての恐怖も人としての恐怖も思わない、まだ会話をする勇気は出ないけどお母さんと接している時と同じ安心感がある。何かそれが当たり前のように······。
二度目に助けられてから暫くしてお母さんが何処となく落ち着きが無くなっているのを感じた。その原因を知るのは意外と早かった······。
 由紀雄さんとお母さんが付き合う事になっていた······それを知った時胸の奥が少し苦しかった·······お母さんを取られたとかそんな感じじゃなく·········私······由紀雄の事··················。

 それからと言うもの私も落ち着きがなくなって行くのが分かる。夜私が自分の部屋に入るとお母さんは毎晩の様に外に出掛けて行く。行き先は隣、由紀雄さんの所に行っているのだ。私は布団を頭から被って意識しない様にするけどそんなに防音がされていないこの家はお母さんの声が漏れて聞こえてくる。両耳を塞いで聞かない努力をするけど涙が勝手に溢れてくる。

 最近のお母さんはとても楽しそうに生活している、そんなお母さんは初めて見た。今までは苦労ばかりだったから今度は幸せになってもらいたい···ヤッパそれは嘘。
 私だって誰かを愛したい、幸せになりたい。そんな気持ちが、そんな自分にイライラしてお母さんとも会話が減ってしまった。
自分の気持ちに嘘は付きたくない、だから······。

 お母さんが買い物に出ていった。由紀雄さんは今日大学もバイトも無いらしく家にいる。私はいつの間にかインターホンを鳴らしていた。
 由紀雄さんはまさか私が居るとは思ってもいなかったらしく凄く驚いている『何か話さないと、でも何て言ったら』
困って下を向いてしまう私に由紀雄さんは頭に手を乗せて優しく撫でてくれると「はいる?」と一言言ってくれた。私は無言で頷くと無意識に由紀雄さんの袖を掴んでしまっていた。
 中に入ると温かいお茶を淹れてくれるもまだ言葉が出せない、そんな私に気を使ってくれたのか由紀雄さんは私から話し始めるのを待っていてくれた。
 3回小さく息を吐いたと思う、顔を上げて由紀雄さんの顔を見たら自然に話し始める事が出来た。
「突然すみません、でも由紀雄さんに話して置かなければならないから」
「うん、お母さんの事だね?ごめんね黙っていて」
 私は首を横に振るといつの間にか涙が溢れていた、当然由紀雄さんは驚いていたが私は元父親の事を洗いざらい話しそれが原因で対人恐怖と異性恐怖になってしまった事を話した。
『由紀雄さんは余り驚いていない···あぁそっか、お母さんから全部聞いているんだ』
 その時に何故か凄く悔しい気持ちが高ぶってしまい自分を抑える事が出来なくなってしまった。
「私!!由紀雄さんが好きです、お母さんには幸せになってもらいたいけど私だって幸せになりたい!!」
「でも俺は」
 もう後戻りは出来ない、だから私はこの先どんな事があったとしても絶対に由紀雄さん以外を好きになる事は無い、だからお母さんの様に私も愛して欲しいって。
 でも、それでも由紀雄さんはお母さんが大切だからと言う。
「私は幸せになっちゃ行けないの!!だったら何で私なんか生まれてきたの!!生きている意味がないんだったら私もう死んだほうがまし!!」
 涙が止まらない、でも言いたい事は全部言った、だからもう何も未練なんか。そして私は外に出ようと立ち上がると由紀雄さんが後ろから強く抱きしめて言ってくれた。
「美由紀ちゃんの気持ちは有り難いしとても嬉しい、でも俺はもうお母さんと付き合ってしまっているんだだから」
「分かってる!!だから私なんかいないほうがもっと幸せになれる」
 そこまで言うと由紀雄さんは正面で私を抱き締めなおしたと思ったらキスをしてくれた。
 突然の事で頭が真っ白になってしまったけどとっさに「抱いて下さい」と言ってしまった。

 お母さんが帰る少し前に私は自分の部屋に戻るも別れ際に由紀雄さんから言われた事を思い出していた。
「美由紀ちゃんは凄く素敵だし可愛いと思う、こうなってしまった以上俺にも責任はあるから美由紀ちゃんの事もちゃんと見るよ、でもやっぱり俺は由紀さんを諦める事は出来ないんだよ」
 どんなに頑張ってもお母さんには勝てない···でもこのまま負けていたくもない、そんな時にお母さんが帰って来た。私は直ぐに部屋を出てお母さんの所へ行くと宣戦布告をした。
「お母さんが由紀雄さんと付き合っている事も毎日由紀雄さんの所へ行ってSEXしてる事も知ってる、だけど私負けないから」
「知ってたんだ···でも美由紀」
「私さっき由紀雄に告白してSEXして来た、由紀雄さんはお母さんを選ぶって言ってたけど私絶対負けないから」
 それだけ言って私は部屋に戻るとお母さんが由紀雄さんの所へ行く音が聞こえた。

 

 

 
 

 

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