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勇者または勇者のパーティーになれと王様に命令されたが 超絶面倒臭いので断わりました 12話

    超絶面倒臭いのでお断りします
 今彰と萌は残り数人の兵士とセシルと村人の力を借りて戦後処理をしている。輝は何をしているのかと言うと村の周囲を徘徊し危険度が高い場所にスキルで造った結界を張っていた。一通り結界を張り終え村に戻るが、作業はまだ終わっていない。流石に二万もの戦士達を片付けるのはそう簡単には終わらない。輝は手伝う事はせず少し小高い丘の上から切り株に腰を降ろし皆の作業を見ていた。時折セシルが輝に何度か笑顔を見せ手を降る、輝が戻っている事に気付いた萌が作業を抜け出し輝の元へ向った。
萌「黒い剣士話しがあるの」
輝「前回会った時に自己紹介しなかったか?」
萌「えぇそうね?あなたは元地球人である事を私達に知られない様に名乗らず話しを聞いているだけだった」
輝「それは済まなかった、俺は陽向輝元51歳バツ2の引き籠もりゲーマーだ、何故バツ2なのかは触れないでくれると助かる」
 萌はバツが2つもある事よりも51と言う年齢に驚いていた、現在の見た目はどう見ても20歳よりも若く見える、萌が輝を疑いの目で見ているとそれが面倒と思い賢い萌にならと、彰にさえ他言無用を条件に転生までの経緯を話した。
 時折驚き、時折怪しむ。また感心したりと萌の表情はせわしない。一通り話しが終わると大事な話しがあるから今晩時間を作れと、更に彰とセシルは抜きで二人だけと言って来たので流石にそれは断った、執拗に理由を求めて来たから素直にセシルの嫉妬が面倒臭いと言うと、ならばセシルにも関係ある話しだから共にとの事で合意した。

 死体の片付けはまだ続いている、夜は交代制で彰を中心に行動をする事になった。これも話しに彰を加えない萌の計画なのだが、輝とセシルは時間になり萌が指定した家に向った。
 中に入ると既に萌えは来ていて酒の用意がしてある、二人が腰を降ろすと萌から口を開いた。
萌「単刀直入に結論から言います···輝さん!!いいえ輝様!!私達のパーティーに入って下さい、勿論セシルちゃんもです」
 そして輝が明らかに不機嫌な顔をし、口を開く前に萌は話しの続きを始めた。
萌「納得出来ないのは承知している、いえ承知しています。ですがこれはセシルちゃんの為でもあるのです」
 セシルは眉間に皺を寄せ首を傾げ、輝の表情は益々険しくなった。
萌「詳しくは今から話します」
 萌は今回の戦闘で兵士が数人だけでも残ってしまった事が原因だと語る、更に報告の為に彰が一人城へと先に戻してしまったからだと。生き残った兵士達は戦闘中での会話を全て聞いていた、問題だらけの内容なのは輝もセシルも理解している。それは輝が転生者であった事、これは転移や召喚よりも貴重だからであった。また邪神国を潰した剣士だったと言う事、セシルの力はSSS級だと言う事、元奴隷だった事、そして櫻井澪の事、この言葉に輝はピクリと右眉を上げた。
 王は必ずセシルが奴隷だったと言う事を持ち札として輝に交渉···命令して来る、だがそれを素直に飲めばセシルの身は安全になると···輝がその時はと言うが、後ろにはベスタニル共和国があるし、邪神国を崩壊させた事で協会や帝国も輝を最重要災害者と認定している。口の上手いベスタニル王が世界協定を結んでしまったらそれこそこの世界を一人相手にする事になると、輝の実力ならば大した事は無いのかもしれないし余裕で勝てるのだろう、だがそれで巻き込まれる民間人の被害は桁外れだ。その言葉に輝は反論が出来なかった。
 萌が調べ上げた事を輝に全て話し、目的を告げた。
萌「この世界の癌であるベスタニルの王、そしてそれに賛同しているグラニウム王、この二人を抹消します、更にその計画を知る直近も始末します」
輝「それでこの国は大人しくなるのか?」
萌「それには1つ条件があります、それはその直後あなたが2つの国の王になる事です、それで帝国も協会も下手に動く事は出来ません」
 輝は小さく横に首を振りそれは絶対に有り得ない、他の方法を探す事を提案した。そこでセシルが勇者彰ならと萌に聞くが、萌と輝が同時に「あんな何も考えていない馬鹿に国を纏める事など出来ない」と一蹴し、セシルは苦笑いをするしかなかった。
 どんな計画にしろ、一度でも輝とセシルは王に会わなければ事が大きくなる事を告げると、渋々気が乗らないが、気が向いたらと曖昧な返事をする。萌は無言でセシルに目で訴えると瞬きで任せて下さいと返事を返した。
 話しも終盤に入った頃、彰は兵士の処理を終え三人が居る部屋へと入って来て、行き成り滅茶苦茶な事を言い始めた。
 バン!!
彰「輝の兄貴!!いや師匠!!俺を弟子にして下さい!!一生付いて行きます!!」
輝「この阿呆は何を言っているんだ?」
萌「さぁ?どうせ目的はセシルちゃんじゃないですかね?いつもセシルちゃんの話ししかしないので」
セシル「え?」
彰「ば!!お前それ言うなよ!!」
 輝と萌が彰に呆れていると、今日1番の会心の一撃が彰を襲った。
セシル「彰さん有り難う御座います、お気持凄く嬉しいです、ですが私にはもう心に決めてしまった方が居ますので、お気持だけ受け取りますね?」
彰「どこの誰ですか!!強い男が好きならば俺がそいつと戦って勝って見せますから!!」
ピキッ
 輝の額に青筋が立ち、萌からは大きなため息が溢れる。
セシル「止めて下さい!!彰さんに何かあったら私が困ります!!」
 そう言いちらりと萌を見た。萌は驚きはしたものの、流石女だな?と納得し、ウインクで黙っていて欲しいと合図を送り、セシルも小さく頷いた。だがセシルの言葉に男二人は完全に勘違いをしている、彰はまだ自分には脈があると勘違いし、輝は己に気があったのでは無かったんだと思い込みをしていた。
 そんな二人を見て萌は敢えて黙り、可笑しな二人を見て楽しんでいた。


 あれからひと月が経ち、輝とセシルは王都に来ていた。当然目的は観光などではなく、王に呼び出されたからである。
 萌の言っていた事は事実だった、グラニウム王は矢張りセシルを餌に輝を釣り上げようとしていた。そして更に言えば奴隷商に居た頃、唯一セシルの味方をし、凄く世話をしてくれていたカフカと言う女性従業員の身を切り札として来た。これには流石に輝もキレたが全てセシルの為だからとお決まりの台詞を吐き城へと向った。
 今目の前にはグラニウム王、両脇には側近と彰に萌、そして全員がS級のグラニウム最高騎士団数十名が周囲を固めている。
王「よく来た黒い魔神よ、そなたの活躍は我が耳にも届いておるぞ?」
輝「はぁ···それはどうにも迷惑な事で」
王「む?何と申した?」
輝「いえ、こちらの話しですのでお気になさらず」
萌『ちょっと!!こんな所で話しを拗らせないでよね?セシルちゃんの為なんだから』
彰『はぁ···いつ見てもセシルちゃんは最高の女性だよ』
王「そこでたが、そなたには公爵の爵位を与える、本日よりそなたは貴族の仲間入りとなるのだ、そして勇者彰のパーティーに加わりこの国を守護する事を命じる」
 爵位、それも最高位の公爵と言う言葉に一堂ざわめきが起こる、だがその事よりも勇者のパーティーと言う事で彰が王に話し始めた。
彰「王様、申し訳無いけど、剣士様は俺のパーティーに加わると言うのは無しだ、俺よりも桁外れに強い師匠を指揮なんか出来やしない」
王「ふむ、彰の言い分は分かった、成程な?扱えるレベルを超越しておるのか、ならばこうしよう、黒い魔神よ、本日よりそなたが勇者を名乗れ、そして彰と萌をパーティーに加えるが良い、だがそこの元奴隷は我が下に置く、何でもSSS級魔人を圧倒する力があるとか、ならば24時間我が下で護衛する事を命じる」
輝「あぁ?」
萌『あちゃぁ···馬鹿だこの王は、輝様の事は確り伝えたのに、セシルちゃんの美貌に欲を出しちゃって、はぁ······この話し崩れたな?輝様が暴れなきゃ良いんだけど、まぁそんときゃ彰を引き摺って輝様の所に行くかな?』
セシル「て、輝様、落ち着いて下さい」
王「何じゃ?これ以上に無い条件じゃろ?早く返事をせぬか」
輝「返事?···そうだな?では、とても有り難いお気遣いにこれ以上無い位感謝を述べさせて頂きます」
王「うむうむ」
輝「それで私の返事と致しましては······超絶面倒臭いのでお断りします私は面倒事がとても嫌いでしてね?ましては複数人で行動するなど以ての外私はこのセシルと慎ましく暮らして行きますそれと万が一にでもセシルやセシルに関わりのある人物に何か起きる様でしたらその時は······」
 そこまで一息で話すと口を瞑り、王を睨み付けセシルの肩を抱き部屋を出て行った。「無礼者!!」と王は騎士団長に指示を出すが、萌が冷静に輝の危険度を説明する、流石にSSS級魔人にダメージがあったと言え、SS級の萌と彰の二人がどうやって一撃で斃したのか分からなかった、と話すと誰もがその場から動く事が出来なかった。いや彰以外は······。
彰「ちょっと待って下さいよ師匠!!どうして俺を仲間に入れてくれないんですか?」
輝「煩い黙れ!!いつ俺がお前を弟子に取った!!消されたく無かったらさっさと戻ってあのいけ好かない王の犬になってろ!!」
彰「そんな事言わないでくださいよぉ~師匠~」


勇者または勇者のパーティーになれと王様に命令されたが 超絶面倒臭いので断わりました
             完

ご愛読有り難う御座いました。
シーズン2は未定です。ですがその時がありましたらまたご愛読願います。
            白河 夜(ナイト)

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