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de、愛永遠彼(であいとはかれ)8話

       河野由紀雄
 美由紀ちゃんと関係を持ってからは暇を作るのが難しくなってしう。昼は美由紀ちゃんと過ごし夜は由紀さんと夜を明かす。大学は勿論バイトも行かなくなってしまい生活は二人中心に変わってしまった。
 驚いたのは美由紀ちゃんの事を由紀さんが認め共に付き合う事になった事だ。俺は由紀さんに謝罪するも美由紀ちゃんから全てを聞いていたらしく逆にこの関係を続けて欲しいと言われたのだ。あれから2ヶ月経つが未だにぎこちなさが取れない。
 そして今由紀さんとの時間を楽しんだ後、俺の腕の中で寝ていると思っていた由紀さんが昔の話を始めた。
「前に子供の頃の話をしたわよね、でもまだ由紀雄君に話していない事があるの」
「辛い思い出なんか無理に話さなくていいよ」
「ううん、私の全てを知って欲しいから」
 そう言うと学生の頃に親友に裏切られた後の事を話し始めた。由紀さんは4ヶ月後辺りから生理が来なくなり体調が一気に悪くなってしまったと言う、まさかとは思ったが矢張り予想通り妊娠してしまった。こんな事誰にも相談出来なかったらしく産む2ヶ月前までは休み休み学校へ行っていたらしい。当時の父親は海外の自社で不在していて母親は弁護士の仕事が忙しかったらしく顔を合わせる事が殆ど無かったがと言う。そしてある日突然破水してしまい風呂場で子供を産み落とした、処置の仕方なんか分かるはずもなく臍の緒を引き千切ると産み落とした子供をタオルで包み一度部屋に戻って考え込んでしまったらしい。名前を考えていたが母親の帰宅に焦ってしまい子供を連れ外に飛び出した様だ。暫く公園で泣いていたがたまたま落ちていた新聞に児童福祉施設の事が書いてあり近くに落ちていたダンボールを拾い持って子供を施設の裏口に置き去りにしてしまったと言う。
 そんな事が······その日は雪がちらつく寒い日だったらしく恐らくその子供はもう。
 由紀さんは自分を責め続け私は人殺しだから。だから俺と一緒に居てはいけない存在、でも美由紀ちゃんには何の罪もない。だからこれからは美由紀ちゃんをと俺に泣きながら言って来た。
 俺はもしかしたら施設の人が保護してくれているかもしれないからと言って見たが俺自身も動揺していたのだろう。子供を置いて来てからの事を聞いてしまった。
「家に帰ると玄関で偶然母親に出会してしまって、子供を産んでそのまま何もしていなかったから母親の前で胎盤が落ちたの」
「それでお母さんに出産した事を気付かれてしまったんだね」
「えぇ、慌てた母親は直ぐに知り合いの医者を呼んだわ。その時に全てを話したの」
 その後由紀さんの母親は事件が表沙汰にならない様にだけ気にしていた様子で、由紀さんを祖母の家に預けてしまったらしい。
 どんな事を言えば良いのか分からなかった。どんな事を言っても慰めにもならない様な気がした。
「男の子は母親に似ると言うからもしかしたらどこかで偶然会えるかもしれないし」
『何を言ってるんだ俺は、こんな言葉を掛けるつもりじゃなかったはずなのに』
「どこか特徴でもあったの?諦めずに探してみるのも良いんじゃないかな」
『馬鹿だ俺は···本人は死んでしまっていると思っているのに何を言って』
 でも由紀さんは今まで誰かにそんな言葉を言って貰いたかったのだろう、だからなのか子供には右肩に星型の痣が·············星型の痣って。


 由紀雄さんが突然家を引き払ってから4ヶ月が経った、美由紀もすっかり引き籠もってしまい一切外に出なくなる所か私とも顔を合わせなくなってしまった。
 それから数日が経ち宛名のない一通の手紙が届いた。でもそれが由紀雄さんからなのだと何となく分かった。そして震える手を無理矢理動かし手紙を読んでみると。

 突然姿を消してしまった事は本当に申し訳ありませんでした。ですが俺はあなた達親子とは
関わっては行けないのです。だからこれからは二人で新しいパートナーを見付けて幸せになって下さい。もう二度と会う事はありません、俺の分まで幸せになって下さい。もっと違う形で出会っていたらと今は後悔しています。ですが所在の分からなかった母親に会えた事は素直に嬉しかったです。お元気でお母さん、それに妹にも頑張れと伝えて下さい。
              由紀雄

 由紀雄さんが私の息子?···嘘でしょ?で、でも確か由紀雄さんは施設で······何でこんな事に。


 そして························。
     
      バタバタバタバタ
「ウゲぇ~」
『う、嘘でしょ!!こ、これってまさか』
「お、お母さん!!早く出て来て!!私も気持ち·········ウゲぇ~」
『え!!み、美由紀も』
 私は直ぐにトイレから出ると洗面所で嘔吐している美由紀の背中を擦った。
「あ、アナタいつから生理来ていないの?」
「わ、分かんない···多分3ヶ月くらいだと······ウゲぇ」
 間違いない、この子も妊娠している。私達は共に由紀雄さんの子供を身籠ってしまった。
「私分かってるよ、お母さんも由紀雄さんの子供を妊娠してるんでしょ?でも私産むからね?」
「だ、駄目!!それだけは絶対に」
「何でよ!!由紀雄さんがいなくなっのはお母さんの所為でしょ!!これ以上私から何も奪わない···ウゲぇ~」
 そんな事···でも真実を知ってしまったらこの子は。



 俺は······俺は何のために生まれて来たのだろう······俺は母親と妹を··········。
         もう···························
       バタン!!
「由紀雄駄目!!お願いだからそんな事しないで!!メール見た、由紀雄が凄く傷付いた事も何で死のうかと思っている事も分かってる!!でも」
『明日香?······何で俺の場所が分かったんだ···止めてくれよ、離してくれよ、俺はもう』
「お願い!!由紀雄の悲しみを私にも分けて!!この先ずっと由紀雄の悲しみを私も一緒に背負って行くから!!」

              おしまい



短い間でしたがお付き合いありがとう御座いました。
また投稿する機会がありましたら読んで頂けると凄く励みになります。
恐らく白河夜としての執筆活動はこれが最後となりますが、今別サイトでの投稿にパートナーと共に取り組んでいます。名前はは変更しますが新しい名前と投稿先が決まりましたらお知らせ致しますので見に来て頂ける事を願っています。今まで白河夜の投稿を見に来て頂けた事を心より感謝致します。


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