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de、愛永遠彼(であいとはかれ)5話

       明日香と由紀雄
 今日は明日香の快気祝いも兼ねて外で飯を食いに行く事になった。健一は相変わらず彼女と一緒だ、そう言えば健一と出掛けたのって······ん?去年の冬に明日香と3人でお好み焼きを食べに行って以来だから···はぁ······もう直ぐ夏だぞ?それにしてもオタクでボッチ傾向の健一がよく長続きするもんだ。ってこんな事聞かれたら絶対怒るよな?「お前なんか彼女出来た事無いくせに」って。別に彼女が要らない訳ではないが俺は今の生活に満足しているからそれでいいんだ······そう、叶わぬ恋ならしない方がいい。
「ん?どうしたの?」
「いや、風邪酷くならなくてよかったな?」
「うんありがと、心配かけちゃったね?」
 まぁ然程心配はしていなかったが、ここはあえて黙っておこう。
 俺達は明日香の希望でサ○ゼリアに行った。流石に回復したてで重いものは食したくないようだ、そんな明日香に気を遣い俺も軽めの食事にする事にした。

 いつもと変わらない明日香との一日を終わりにするために、駅まで送って行く。
「あれ?」
「ん?何?」
「いや、何でもない」
 また美由紀ちゃんが一人で居る、『またトラブルにならなければいいのだが』などと考えていたら俺の僅かな視線に明日香が気付いたようだ。
「あの子凄く綺麗だね?」
「ん?···そうか?それ程でもないと思うけど?」
 と言っては見たが、明日香には俺の嘘や誤魔化しが通用しなかった。「あんな子が由紀雄の好みだったんだ」などと嫌味を言われてしまい、咄嗟にまだ子供じゃないかと言い訳。納得行かなかった明日香はムスクれた顔をしている。仕方なくあの子はこの間隣に引っ越して来た事を話した。知り合いなら声を掛ける?と言われたが美由紀ちゃんの事情を説明して声を掛けるのを止めさせた。
 明日大学でと別れた俺は小走りで美由紀ちゃんを見掛けた場所へと向かった。
「参ったなぁ···意識してなかったのに、やっぱ由紀さんにあぁ言われてしまっては」
 次第に小走りから全力疾走に変わっていた事など気にもせず目的地に着いた。
「いた!!······嘘だろ!!この間よりヤバイじゃないか」
 何故あの子は自分の状態がああなってしまうと分かっているのに一人で買い物に行くのだろう。とにかく急いで向かわないと行けなかった、美由紀ちゃんは左肘で身体を支える体制で今にも倒れてしまいそうだ。
 急いだお陰で何とか倒れる前に身体を支える事が出来た。
「すみません、彼女は体調が良くないので続きは俺が聞きますので」
「え?···あ、由紀雄さん」
『あ、この子喋れるんだ』
 前回同様俺は美由紀ちゃんに先に家に帰らそうとしたのだが、彼女は俺の腕にしがみつき首を左右に降った、そこで一緒にいれば大丈夫か?と尋ねると小さく頷いた。店員さんも事情を理解したのか説明を短縮してくれお陰で早く店を出る事になった。
 それにしてもコスメセットだったとは、残っていてくれて助かった。でも······外にあまり出ないのに化粧って。違うか、やっぱ年頃の女の子なんだ。
 
 とにかく無事買えた事で良かったのだが······にしてもお店からずっとくっついたままなんだよなぁ、本当に対人恐怖症と異性恐怖症なのか?
「大丈夫かい?もう直ぐ家に付くからね?」
 美由紀ちゃんは下を向いたままだったから表情は分からなかったが、小さい声で「ありがとう」とは聞こえた。
 家に着くと外で由紀さんが待っていて俺達に気付くと慌てて走り寄ってきた···のだが。
「美由紀大丈夫!!」
「少し身体が重い」
 無事家に着き母親も来た。なのに何故美由紀ちゃんはまだ俺に引っ付いたままでいる?由紀さんが反対側を支えると予想通り家まで連れて行く事になった。
「お邪魔します」
 結局美由紀ちゃんの部屋まで連れて行く事になったのだが、初めて人の家に入った·········。
 俺は施設で育ち父と母の養子になるまで他人の家に入る事は無かった。それ以降も親しき人は出来るが遊ぶのはいつも外で家に上がる事はしなかったんだ。だから今物凄く緊張している、女性の家に上がるのも年頃の女の子の部屋に入るのも。物凄く高いハードルを一発で飛び越えてしまいかなり緊張してしまっていた。
「今日は美由紀と一緒に出掛けたのですか?」
 まぁあの状態ならばそう思うのは当然か。俺はあった事を全て話したのだが、由紀さんと同じ事で首を傾げる事になってしまった。
「どうして由紀雄さんとは一緒に要られるのでしょう」
「ですね?それに店からずっと腕にしがみついたままでしたし」
 何故か俺ならば美由紀ちゃんは大丈夫と言う事になって、改めて由紀さんにお願いされてしまった。
「で、でも·····それは困ります」
「······そうですよね?出逢って間もないですし、ただ隣に住んでいると言うだけですから」
 しまった!!そう言う意味で断った訳ではなかったのに、これ以上由紀さんを困らせる訳には行かないと思った俺は勢いに任せて告白をしてしまった。
「お、俺···初めて会った日からずっと由紀さんの事が頭から離れなくて」
 案の定驚いている、でも流石大人だ「こんなおばさんでも嬉しいですよ?」と軽くかわされてしまった。
「人を好きになるのに年齢って関係ありますか?俺は初めて人を···異性を好きだと思いました」
「え?」
 当然の反応だと思った俺は、捨てられた事は話さず施設で育った所から説明した。健一の事、明日香とは何度も告白をされているが親しい友人でいたい事などを全て。俺の話を最後まで真剣に聞いてくれていた由紀さんは、一言「娘の事もありますから少し考えさせて下さい」と言われ俺は素直に家に戻る事にした。
 いざ家に戻ると急に自分の告白に恥ずかしくなり赤面してしまった。
「だだだだ大丈夫だったのか?勢いに任せて告ってしまったが、で、でもいいんだよな?うん、いいんだ。モヤモヤのままでいるよりかはこれでスッキリした」
 とは自身で納得してみたものの次に考えたのは振られてしまった後のことだった。
「し、しまった······家は隣、もしフラれてしまったら物凄く気不味いんじゃ」
 この後の俺はもういつもの俺ではいられない、付き合う事が出来たらと喜びと想像を膨らませ興奮し、フラれてしまったらと悲しみと後悔を膨らませ落ち込み。

        そして

 その答えを知るのはそう遠くなかった
 
 

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