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今年もお盆で父を思い出す

 父は1922年生まれだから終戦で23歳。生きていれば100歳になる。お盆の時期になると亡くなった父の面影と共に、原爆記念日、終戦記念日がやってくる。戦後は78年になる。映画やドラマ、報道番組を見ても身近な出来事だとは感じないまでも、父を通して戦争の話を聞いていたから戦争を恐怖する感情は存在している。だから、戦時中の様子や当時の人々の気持ちを知りたいと思うし、知っておくべきだと考える。ところが私のような感情を持つ人間は減少している。
「台湾有事って言葉、知ってますか?」
沖縄や石垣島に観光に来ている若者への質問に、アッケラカンと「知らない」と答えたテレビ画面を見た時は衝撃を受けた。安保法制も防衛費倍増も興味がないらしい。彼らは私と同様に選挙権を持つ成人である。
 麻生自民党副総裁が台湾を訪問して「日本が軍事力を行使する覚悟が必要だ」との発言は「台湾有事」の言葉すら知らない若者以上に恐怖を感じる。政権与党No.2であるこの人は、いつも自民党の本音をチラつかせることによって大物感を演じている。自民党が打ち出してきた機密保護法・防衛費倍増・敵基地攻撃能力の保有(専守防衛の破棄)などの政策は閣議だけで決定された。自民党代表団や維新の会代表の台湾訪問のあとで麻生氏が訪問してこの発言があった。
 政治へ無関心な国民が増え、原爆や敗戦の報道は一部に限られるようになっている状況を心配している。

 9月に高浜まちづくり協議会のメンバーとして、夜間や休日など市役所職員がいない場合に南海トラフ大地震が起きた想定で避難所開設方法について訓練を計画している。この仕事をコロナ前から毎年実施している。しかし、この訓練を計画する以前から私は2つの素朴な疑問を持っている。
 地震も怖いが巨大化した台風も怖い。地球温暖化による山火事や異常気象や地球規模の食糧不足も心配である。それなのに南海トラフにばかり気を遣っていて良いのだろうか。
「地震訓練は台風でも役に立つ。」
「そうではない。」
台風巨大化の原因は地球温暖化であり、化石燃料の使い過ぎにある訳だから、火力発電をやめて再生可能エネルギーに転換する必要があることは明らかであり、また、便利だが燃やすと二酸化炭素を大量に消費するプラスティック製品の使用をやめることが総合防災訓練以上に必要である。
 9月に防災訓練を行うのは100年前の1922年9月1日に起きた関東大震災で10万人以上が亡くなったからである。大震災は天災だが、
「朝鮮人が放火をした。」
「井戸に毒を入れた。」
これらの噂を行政機関や新聞が広めた事実があり、この偽情報を信じて日本人が朝鮮や中国の人々を数千人も殺害した犯罪行為の方が心をいためる。9月に行う避難訓練で日本人死者が問題に上がっても、虐殺された外国の人々を話題にすることは少ない。訓練すべきは日本人の心ではないだろうか?

 父は定年まで働いて得られる年金にプラスして「軍人恩給」がもらえて喜んでいた。この恩給について昨日の報道特集で台湾出身の元日本兵は貰えていないことを知った。彼は14歳か15歳で日本にやってきて、軍国少年となり、志願して日本兵になり、悪名高いインパール作戦で生き残り、朝鮮でソ連の捕虜となり、カザフスタンで捕虜生活を送り、日本に帰ってきた。同じく日本兵として戦い、シベリアで捕虜生活を送って、帰還した父の軍歴と重なる。しかし、父には恩給があり、彼には無かったばかりではなく、日本に帰化しようとしても「出来ない」と言われ、落胆したと報じられた。日本兵として戦っても軍人恩給も渡そうとしない。帰化しようとしても認めない。そんな国の有力政治家が台湾有事には軍事力を使う覚悟が必要だといっている。
「誰のために使うのだろうか?」
台湾のためだとは思えない。まずは過去を反省すべきところから出発すべきではないだろうか。


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