愉しめば下手の横好き幸せ掴む 第3章の3

 老後の手習いという言葉がある。人生の中で自分の仕事や子供の養育など、ある程度の峠を超えた時に、何か自分の好きなことを始めようと言う状況で使われる。そうした状況でいつももう一つの言葉が頭をもたげる。それは二兎追うものは一兎をも得ずという言葉である。何かを極めるときに複数のことに目を向けていたのでは成就できないということで、昔はその通りだと頷いていた。若い頃には、趣味であれ、仕事であれ、複数のことに取り組んでいると、それぞれ中途半端となり、目標が達成できないといった状況が日常的であった。
 しかし、それは目標達成という絶対基準がある。それもかなり高いレベルの目標達成を前提にしている。あれもこれもと手を出さず、1つに絞って全力投球するのが最短の手法であることは当然である。何に絞るかその選択の決断力が重要であり、決断後に生じる迷いや後悔の念をも振り切る必要もある。こうした猪突猛進型のパターンは問題解決指向性に有利であろう。立ちはだかった大きな問題を解決するために突き進むには、周りの諸事情にこだわっていては妨げになる。眼前に吊り下げられた餌を求めて進むのみである。
 最初の目標が達成されればそこに達成感が得られ、気分が向上する。そして、もっとやりたいといった次の目標に向けたモチベーションが高まるのである。こうしてステップアップ式に高い目標に向けて突き進む。山登りが典型例である。1つの種類のことに対してレベルアップしていくには最適な手法である。メカニズムにはドーパミンやエンドルフィンによる活動性と気分高揚作用が指摘されている。皮肉なことに嗜癖性に近いともいえる。例えば、近所のウォーキングから始めた人が、ジョギングとなり、ローカルマラソン大会の5kmコースに参加、10km、20kmとなり、ついにはマラソン大会に出場することとなる。次に、日本から世界各国のマラソン大会に出ると、さらにとどまらず、トライアスロン系に挑み始める。トライアスロンにも極限コースがあるようで、砂漠や寒地などとどまるところを知らない。
 こうした1つの方向性に嵌りやすいタイプは、コレクターにもみられる。最近流行となっているポケモンGOもその1つである。

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