【雑感】2019年J2リーグ第35節 対ファジアーノ岡山~必然だった結末~

東京ヴェルディ 1-2 ファジアーノ岡山

 幸先よく先制、相手の守備構造の弱点をみた攻撃、可変システムとこれまでから変化する場面をみることが出来た。しかし、守備面ではあまり変わらないプレー内容に次第に漂う嫌な予感。そして分かり切っていたかのような失点。なぜこのようなことになってしまったのか試合を振り返りながら考えてみたい。

スタメン

 前節柏に0-3と完敗したヴェルディ、スタメンだった河野がトレーニング中の怪我により欠場。フリーマンにはリヨンジを起用。離脱していたジャイルトンパライバ、若狭も先発へ復帰して変則的な1442システムで臨む。対する岡山は、昇格PO圏内入りを目指して戦っている。この日も基本となる中盤2ボランチの1442システムで前節と同じメンバーでスタートとなる。

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変化をつけた攻撃

 この日のヴェルディは、スタート位置こそいつもと変わらないように見えたが、可変システム採用して攻守に変化をつけて岡山の守備陣営を崩そうとする。CB若狭、近藤、内田の3枚に両サイドの奈良輪とクレビーニョがSB⇔SH⇔WGの役割を果たす。先制点は思わぬ形で生まれた。3分、岡山のバックパスが逸れることを見逃さなかったパライバがスプリントからボール奪取して、走り込んだヨンジが流し込んでヴェルディが先制する。

 その後もヴェルディが優位に試合を進める。ボール非保持時は奈良輪がSH化して1442になり、ボール保持をすると内田が左サイドへ開き奈良輪が高い位置を取り、梶川と森田晃樹が前線へ張り付き1415へ可変する。そこからクレビーニョがインサイドに絞る偽SB化の動きをみせて1325になる場面もあった。岡山は基本的に1442のフラットで守るため前線の枚数を5枚にすることで5対4の数的有利が出来る。この日、スタメン起用された若狭からハーフスペースに位置する梶川へ何度も縦パスが入る場面があった。そこからサイドへ散らしクロスを挙げて得点をうかがうという設計になっていた。

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 対する岡山はDHがCBの間に下りて、最終ラインを3枚でビルドアップ、大外で幅を取るSBがパスを貰い、SHが裏のスペースへ走りサイドからクロスを挙げる攻撃を見せるも序盤はヴェルディに押されてなかなか主導権が握れない。

ターニングポイントになった飲水タイム

 30℃に迫ろうとする暑さもあり、前半途中には飲水タイムが設けられた。これがきっかけのように岡山の選手たちがギアを上げた良い動きをみせる。まずはボール非保持時システム1442を14132もしくは15131へ変更する。ヴェルディのリベロ山本理仁へ中野、上田がしっかりとマーク、最終ラインには2トップ+2SHがかなり強くプレスをかけて人につく守備を積極的に行なう。攻め込まれても喜山が下がり5バックで5レーンをしっかりと埋める。

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 プレッシングの強度が上がったことでだんだんとヴェルディの選手たちには技術的なミスが出始める。岡山のビルドアップは変わらず2CB+1DHでありヴェルディは2トップが対応するも守備強度が高くもなく、前線への展開、田中が持ち運ぶ場面、跳ね返されても二次攻撃とCBがフリーになる構図。こうしたことが重なることで試合の流れは岡山に傾く。立ち上がりから同様にビルドアップ際にSHが裏抜けスペースを活かしてサイド攻撃、イヨンジェがクレビーニョと対面することで仲間が余り、さらに大外の廣木もフリーになる。

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 流れを変えたいヴェルディは43分ごろに左サイド内田とリベロ理仁の位置を変更して、マークに苦しむ理仁を楽な状況にしようとした。

次第に押し込まれる展開になり

 後半、ヴェルディは内田-梶川の横並びの2ボランチとして岡山の激しいプレスに対してのビルドアップの出口を2つに増やそうとする。しかし、ビルドアップから繋げずにボールロストする場面が目立つ。ヴェルディの前線からの守備も緩く、岡山が全体的に押し上げて、右サイド増谷、関戸からのクロス中心にゴールへ迫る。

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 50分、同点ゴールとなった場面も岡山のプレスに対して苦し紛れのビルドアップとなりフリーマンのヨンジが低い位置まで下がってボールを受けるがコントロールミスから岡山がボールを奪い、中野→仲間と渡り、シュートを決める。
 59分、ヴェルディは内田に変えて新井を投入する。再び理仁が1ボランチに入り、奈良輪が左SBへ下りる。反撃に出る交代であったが、守備面でも脆さが出ることになった。ここまでも攻勢に出ていたこちらのサイドに体格で劣る新井、奈良輪が居ることでイヨンジェが流れてくることが増えて岡山に押し込まれる。

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 ヴェルディもクレビーニョがインサイドに絞り梶川が高い位置を取り5トップ気味になり反撃に出て、68分にはヨンジが振り向き様に強烈なシュートを放ち、73分にはCKのこぼれからクレビーニョがカットインシュートを放つもいずれもGK一森の好守に阻まれる。岡山は右サイドで選手を寄せることで左サイドで仲間、廣木がクレビーニョとマッチアップすることが増えて反対サイドからも攻撃チャンスを作る。
 82分、右からのイヨンジェのクロスが流れ、左から仲間が折り返し、クリアボール走り込んだ上田がダイレクトで合わせ岡山が逆転する。
 そのあとは自陣ゴール前にブロックを敷き、守備を固める岡山に対してヴェルディは85分、左ワイドの新井からのクロスにヨンジがヘディングシュートをするもまたしても一森にセーブされ、87分にはビルドアップの流れからフリーランした理仁が左の深い位置まで流れ、クロスにクレビーニョが合わすも枠外で追いつくことが出来ずタイムアップ。痛恨の3連敗を喫した。

まとめ

 相手守備構造上の弱点をつく攻撃というこれまでにはあまり見られなかった形もあったヴェルディ、GK一森の好守もあり追加点をゴールを奪うことが出来なかった。
 守備面では奈良輪が中盤に入りサイドから前線を追う強度は増したものの、CBやボランチへのマーク、プレスやパスコースを制限する動きが少なく前節とあまり変わらず、自由にボールを持たす場面が多かった。その結果、チャンスクリエイト数は同じくらいあったのかもしれないが、試合そのものの流れは岡山が握る時間が多く、得点のにおい(失点のにおい)が出てしまい、予想通りの結末になってしまった。
  岡山の前線からの守備、最終ラインやボランチの守り方と比較すると一目瞭然の違いがある。相手CBやボランチなどへしっかりと人につく守備をすること、そして中盤も縦横のスライドを早くすることなど基礎をきちんとこなしていかないと自分が試合を支配する時間は少なく、厳しい戦いとなることは目に見えてしまう。