【雑感】2019年J2リーグ 第12節 対V・ファーレン長崎~1つずつ課題を克服していく~

東京ヴェルディ 2-1 V・ファーレン長崎

 味スタのピッチで躍動する選手たち、前節・岡山戦から継続するようなプレーで何度も相手ゴールへ迫り、苦労していた2点目を挙げることが出来て6試合ぶりの勝利を手にした。着実に進歩している姿を見せたこの試合を振り返ってみたい。

<スタメン>

ヴェルディは良い動きを見せた前節・岡山戦と基本的には同じ布陣。CBには休養たっぷりの近藤が復帰。対する長崎はイサンミン、磯村、呉屋に替えて、ベテランの高杉、島田とルヴァン杯で得点を挙げた畑を先発起用。左SB香川は昨シーズン所属した古巣との一戦である。

<ハーフスペースに起用された小池純輝>

立ち上がりからチーム全体でプレッシングを強めるヴェルディは若狭が敵陣でのタックルでボール奪取後、藤本寛也⇒佐藤優平⇒井上潮音と繋ぎ右サイドに開いた渡辺皓太のクロスを寛也がヘディングで流して左から走り込んだ小池純輝がダイレクトに右足を振りぬいて、4分にいきなり先制点を挙げる。端戸と寛也の動きに長崎両CB高杉と角田が釣られる。長崎は基本的に人につく守り方をしているためCBが釣り出されてPA内がら空きという場面が前節・鹿児島との試合でも見られており、この場面でも弱点を上手くつくことが出来たという印象だった。

 ヴェルディは2CB近藤と平+潮音もしくは優平の3枚で基本的にビルドアップを図る。左はSB奈良輪が大外、左SH小池はハーフスペースに位置して、右はSB若狭とSH藤本が大外で皓太がハーフスペースになることが多く、5レーン理論に基づく配置のように見えた。皓太と優平もしくは潮音はビルドアップの出口のなる。長崎の前線がプレッシングが弱く、2トップ脇から大外~ハーフスペースと斜めにボールを動かす。特に左SH小池は長崎442システムの間に位置することでマークの基準を作らせず、大外へ開いたり、センター(長崎PA内へ侵入)へと斜めの動き出しをして目立つ動きを見せた。

<同点へ追いつきたい長崎>

ヴェルディが主導権を握る時間を凌いだ長崎は徐々に落ち着きを取り戻す。攻撃時に両SBが高い位置を取り、2242のような形になる。20分にオーバーラップした香川のクロスに畑がヘディングで合わすも枠外、ヴェルディが451でスペースを消す守り方をするが、1トップ端戸に対して長崎はCB角田がフリーになる場面が増えて攻撃に絡む。37分、角田が持ち上がり、右SH大竹へ斜めのパスを入れることでヴェルディ中盤ラインを一気に通されて、最後は畑がシュートを放つが上福元がセーブ、前半終了間際にもクリアボール回収して大竹⇒澤田とつないで畑の際どいシュートもまたしても上福元がセーブして前半が終了する。ここまで流れの中からの得点がたった1点という状態を表す出来となった。

<ボール奪取からのショートカウンターを見せるヴェルディ>

後半、優平ら前線からプレッシングがはまる場面が見られた。ロングボールに小池が競り合ってこぼれ球に反応した端戸から優平⇒皓太と繋ぎ端戸がドリブル仕掛けて角田に倒されてFKを得る。このFKを優平が見事に直接決めてヴェルディが追加点を挙げる。

その後も55分には潮音がボール奪取してショートカウンターからPA内へ入り込み中央でフリーの寛也はラストパスを送るが、深く入りすぎたため合わせきれずに3点目のチャンスを逃す。長崎はDH島田に替えて吉岡が右SHへ入り、右SHの大竹がボランチになる。この大竹が中央でボールを触り左右からのサイド攻撃をより高めていき香川がかなり深い位置まで入ってくるようになる。長崎に攻め込まれてヴェルディは全体的に選手たちがずるずると低くなる。苦しまみれのクリアしたロングボールに対して、長崎CB高杉、角田に競り負けて簡単に跳ね返されてしまい、セカンドボール回収されて長崎の攻撃ターンが続き、呉屋、イジョンホと攻撃のカードを次々に投入する。

<システム変更の狙いとは>

 劣勢のなか、ヴェルディは寛也に替えてレアンドロを投入して前節・岡山戦同様に532へシステム変更する。若狭がCB、左SH小池が右WBへ回り、奈良輪が左WBとなり端戸とレアンドロが縦関係の2トップである。『試合を終わらせるため』とのメッセージであったが、中盤3枚になることでサイドが数的不利になり、レアンドロのプレッシングも弱く、より一層、長崎に押し込まれて防戦一方になる。77分、長崎はCKのチャンスに大竹が蹴ったボールに上福元が飛び出すも触れられず、競り合いのこぼれ球を香川に詰められて失点を喫する。

このタイミングで長崎のサイドの選手にきちんとアプローチにいけるようにヴェルディは再度システム変更して元の4141へ戻す。レアンドロ投入して5バックにしたことが失敗をしたことを意味する。ヴェルディはJデビューとなる17歳山本理仁、終了間際には永田を入れて守りを固めようとする。しかし、長崎の猛攻は続く。90分、大竹のパスを受けた亀川のシュートは上福元の手をかすめてポスト直撃、93分には大竹がミドルシュートを放ち、畳みかけるような攻撃をみせるがなんとか1点差を守り抜きヴェルディが勝利を手にした。

<まとめ>

先制後に追加点をしっかりと取る事が出来て見事に勝利を手にしたものの相変わらずヒヤヒヤする終わり方であった。選手たちのコメントにあったように昨年までのような中央を固める守り方に+αで前線からしっかりとプレッシングをかけてボール奪取する複数パターンに挑んでいる。しかし、リード時は全体的に重心が後ろに下がりリトリートする戦いになってしまう。その結果、相手が攻め込んだ際の苦し紛れのクリアへのロングボールでの競り合い、ボールキープの役割を担うことを前線の選手は行うことになる。試合を終わらせるのであればレアンドロにこの役目を要求する事は疑問が残る。2試合連続でシステム変更後の失点かつ3試合連続でCKからの失点と避けては通れない大きな課題が目の前にある。532から4141への再度システム変更は選手たちの判断だったという。リトリートすることが守備を固める最適な方法ではないのかもしれない。ピッチ内のイレブンの考えで対応するのは、以前の徳島戦でも起こっている(相手WBが高い位置を取るためにSHが最終ラインに入り5バック化)。選手たち独断についてどこまで許容されているのか、監督の求心力は?と気になるところがあるが、攻撃での課題を克服していったように、新たな壁に対しても一つ一つクリアしていく前向きな姿勢に期待したい。