【雑感】2024年J1リーグ 第5節 対京都サンガFC~正々堂々と~

東京ヴェルディ 2-2 京都サンガFC


スタメン

 前節・新潟相手に土壇場で得点で追いつき引き分けに持ち込んだヴェルディ。この日は京都から期限付き移籍の山田楓喜、木村が契約上出場不可。負傷明けの宮原が今季初スタメン、右SHに松橋優安、トップに山田剛綺が入る。
 一方の京都は前節・横浜FMに2-3で敗戦。一発退場のアピアタウィアが出場停止で代わりに宮本がCBを務める。金子に代わって武田が入り、アンカーは川崎が担う。

前半

 代表ウィーク明けの金J開催となった一戦、年度末、プロ野球開幕と重なりどれくらいの来場が見込まれるか心配もあったが1万人を超える観衆を集めた。パリ五輪候補に染野、川﨑が選出されたこともあり報道陣も多く心配はなんのその良い雰囲気での試合になる。

 立ち上がり、ヴェルディがロングボールを入れて京都陣地深くに攻め込むも京都が跳ね返す。すると、3分京都が前線へボールを入れるとルーズボールに反応したトゥーリオが前へ繋ぎ、抜け出した豊川がシュートでネットを揺らす。これはVARでオフサイド判定になり助かったが立ち上がりからボールホルダーへの寄せが緩いヴェルディに不安を感じる。

 試合開始から面白かったのはお互いのボール非保持時の配置であった。ヴェルディは前節の後半同様に左SH翁長が最終ラインに下がり5バック化し1532となりロングボールのターゲットとなる長身・原をマークし跳ね返す目的であっただろう。翁長はWB⇔SHと戦術兵器になり、攻撃時には7分に縦へ仕掛けて左足で鋭いクロス。中に飛び込んだ剛綺にはわずかに合わなかったが、それでも順足配置の翁長の良さが出た。

 ヴェルディのゴールキックに対して京都の最終ラインはハーフウェーあたりに敷く超ハイライン。原が森田晃樹をマークして豊川とトゥーリオがCB、松田と武田がSBへプレス。ハイプレスを敷く京都を前にCB→SBのパスが真横になり身体の向きが悪くビルドアップが詰まる。ハイプレスの餌食になるも、ヴェルディはなぜか拘って何度も低い位置から繋ごうとする。もちろん上手く繋がらず京都へボールを渡してしまいずっと押し込まれるターンが続く。

 ハイプレスに苦労するからマテウスがドカンと蹴ると、アンカー川崎が最終ラインに加わり5バックに。空中戦対応する麻田と宮本のスペースを川崎が埋める徹底ぶり。縦を超圧縮する京都に押される。京都は攻撃をシュートで終われせてヴェルディのゴールキックからスタートさせようとする意図を感じる。前線からの守備を行なうには前線からの守備機会を作ることが大事である。

 前線からのアグレッシブな守備が嵌る京都がペースを握り敵陣でサッカーをする時間帯がひたすら続くと21分に京都が先制。宮本からのロングフィード。林はゴールから距離があると判断したのかなぜか競らず豊川をフリーに。豊川は落ち着いて胸でトラップしシュート。無回転のボールはクロスバーを叩いてゴールへ。豊川の個人技には脱帽だが、林の球際の甘さ、競らない守備にマテウスが怒るのもよくわかる。立ち上がりから自分たちのやりたいサッカーを表現して先制点を挙げた京都がここまでプラン通りに進める。

 押し込まれて先制点を喫したヴェルディは動揺したのかプレー強度が上がらない。直後の25分、クロスを谷口栄斗が跳ね返すもボールを拾った松田のスルーパスに反応した原がパスを殺さないままPA内に入っていくと豪快に右足を振り抜き瞬く間に追加点を挙げた。25分、京都追加点。ヴェルディはまたも失点して集中力切れたのかふわっとしてしまった。

 晃樹と見木をボールが通り超すことが多く最終ラインに吸収されてしまい新潟戦同様にこぼれ球を拾う選手が不在になりセカンドボールを相手に渡すばかり。どちらかはバイタル埋める守り方しないと今後も狙われるだろう。

 30分ごろから見木や晃樹がボールに触る機会が増えて行きようやくリズムが生まれる。彼らが前を向いてボールを持ち縦パスを入れられるとゴール前の迫力が出てる。しかし、1442でビルドアップからシステムに変化なくゴールへ向かうヴェルディに対して京都は守りやすかっただろう。決定機をほぼ作らせず0-2京都リードで折り返す。

後半

 ハーフタイム明け、ヴェルディは翁長と山田剛に代えて齋藤と稲見を投入して中盤3枚へシステム変更。宮原の負傷もありSB起用が続いていた稲見がようやく本職に入った。右SHに齋藤で左SHへ松橋優安が回る。

 アカデミー時代から左サイドを主戦場としていた優安にとってはやはり左からの景色の方が視界良いみたいだ。タイミングよい攻撃参加をするといきなりFKを獲得。少し遠い位置であったが染野が狙う。ボール1個分外れた。これまでカンペイ砲のイメージだった染野だがついにベールを脱いだようだ。

 染野が1トップになり空中戦を競るのが明確になり、中盤の選手たちはそのこぼれ球を狙うことがシンプルになった。中盤を厚くして、ビルドアップ時に最終ラインに晃樹や稲見、時には右SH齋藤が顔を出したりパス受け手になることで後ろに枚数かけながらも立ち位置に変化つけていくことで京都の守備基準を乱し始める。前半は低い位置だったSBが強制的に高くもなり斜めのパスコースも生まれだんだんと京都はリトリートすることになりヴェルディが主導権を握る。

 60分すぎ、豊川が負傷交代強いられる。前節は金子も負傷交代でこの試合は欠場しており豊川も離脱となったら痛手になるだろう。一方のヴェルディは深澤大輝に代えて山見を投入し、優安を左SBへ落とすファイヤーシステムへ。

 ゲームチェンジャーを期待されて投入された山見の仕掛けがこの日は目立つ。本人も身体のキレが増してきたというように5戦目にしてサポーターが期待した姿をピッチで魅せてくれる。また、仕掛けで時間を作ると左SBになった優安との連携で左サイドから分厚い攻めをする。右からは齋藤と宮原が技術と緩急つけた攻撃で、左だけじゃないよと京都に右も意識させて守備間を広げて行く。
 中央ではビルドアップ時に晃樹が底にいるが、ボールが繋がると晃樹はPA内まで上がって行き、稲見が後ろでバランス取ってくれてる。押される京都は前線に原を残すも林と栄斗に加えてフィジカル優れる稲見と3枚居ることでクリアボールを再び拾い攻撃を続けることが出来た。

 攻撃しているも得点を奪えないまま時計の針は進む。75分、ヴェルディは優安に代えて綱島悠斗を投入。稲見が左SBへ回り長身の悠斗が最前線へ入り前線でのターゲットになる。78分、左サイドから山見が仕掛けて、裏街道でPA内へ侵入すると福田に倒されてPK獲得。このチャンスに今季未だ得点の無い染野がキッカーを名乗り出る。染野はお馴染みのあのコースへ落ち着いて蹴り込み、今季初得点でヴェルディが1点返す。

 1点差になったヴェルディは攻撃を緩めない。ホームの声援を受けて攻め込むと後半ATに再びドラマが待っていた。左サイドから稲見が対角へクロスを入れる。悠斗が京都のDF2枚と競りながら頭で逸らすと右の大外で齋藤がフリーに。齋藤は素早くグラウンダーのクロスを入れると走り込む染野がスライディングしながら足を伸ばして押し込み土壇場でヴェルディが同点に追いついた。染野が勝負強さを見せこの2点目。自分たちの時間に得点を奪い2点ビハインドから引き分けに持ち込み貴重な勝点1を挙げた。

まとめ

 お互いにメンタル状態がピッチで出てしまったなという90分。前半はヴェルディ、後半は京都が弱気な面を見せてしまい押し込まれた。逆の言い方をすると自信をもってプレーできた時間帯はボールを握りゴールへベクトルを向けて得点を挙げることができた。
 ヴェルディは試合後に宮原が述べたように、上手く行かないビルドアップをそのあとも執拗に繰り返し失敗を重ねたことは改善点で、ダメなことにはさっさと見切りつけてBプランCプランへすぐに切り替えることも大事になるだろう。後半は中盤3枚の形にして内外を上手く使いながらボールを動かし攻め込むことが出来た。山田楓喜、木村不在によるシステム変更もあったと思われるが今後も1433で攻めるのは選手たちのキャラクターに合っているかもしれない。ボールを握って崩して得点できているのはポジティブ要素であり、これからも続けていくべきだろう。
 一方で守備面で、個にねじ伏せられることは覚悟していたが球際に強くいけなかったり守備ラインが下がってしまったりというのが試合を経過するごとに増えているようにも見えて昨季のような自信を持ったプレーを思い出して貰いたい。次節は中4日の水曜日開催と連戦になり待望の初勝利を期待したい。