【雑感】2023年J2リーグ 第42節 対大宮アルディージャ~やれることはやった~

東京ヴェルディ 2-0 大宮アルディージャ

 運命の最終戦。他会場の結果により自動昇格を掴み取ることは出来なかったが前線からのコンパクトな守備、ニアゾーン攻略からの攻撃と今季のサッカーを象徴する内容で勝利した試合を振り返りたい。


スタメン

 前節・栃木に1-0勝利したヴェルディ。退場処分を受けた深澤が出場停止。左SBには古巣対戦になる山越が起用。体調不良で欠場していた主将・森田晃樹も復帰。逆転での自動昇格へ望みをかける。
 一方の大宮は前節・清水に敗れて21位が確定。現役引退発表した南がスタメンでラストマッチを飾る。前節から6名を入れ替えて臨む。

前半

 ついに迎えたシーズン最終戦。ヴェルディは勝って、自動昇格のライバル清水と磐田が引き分け以下なら昇格という状況であった。スタジアムを包む観衆の熱狂に独特の緊張感が漂い、立ち上がりはらしくないミスや動きの固さも目立った。

 前節同様に前線を染野と齋藤の組み合わせ。齋藤が染野の周りを動くことが多く中盤3枚で1トップ染野という見方も出来た。アンカーに森田晃樹、左右に稲見と齋藤が基本であるがここは流動的にポジションチェンジしていく。GKマテウスもビルドアップに加わり林と谷口栄斗の2CBと横並びのようになることもあった。これに対して大宮は1442で構えて2SH大澤と黒川もプレッシングにいき4トップになることもあった。富山がマテウスをみて、大澤と中野が2CB。マテウスが右サイドに蹴ろうと体勢を向けると、4枚が全体的に同サイドに寄る。ここでマテウスは身体を捻るようにフェイントをして左SB山越へ黒川を浮き球で交わすようにしてパスを入れる。山越はヘディングやボレーキックでダイレクトに繋いだり、そのまま持ち上がったりする。配置は若干異なるが、前節の栃木戦でも左SBがビルドアップの出口となっていたこともあり、攻撃時のPA内に飛び込む役割と思わせておいて自陣でのターゲットにもなっていた。

 山越と加藤蓮の左サイドで攻め上がり、山越の鋭いクロスに染野がダイビングヘッドで合わす場面もあった。CB起用時もロングフィードの上手い山越がほぼ初めてみた左SBでもそれとなくこなしていた。ただ、左サイドからのチャンスは数少なく仕掛けやクロスの質の部分では物足りない面も感じた。

 後方から繋いで行こうとする志向は見られたもののパスミスやこの日の大宮の前線から連動した強度あるプレスを前になかなかフィニッシュまで持って行く場面は少なかった。その代わりに大宮ボール時に1442で守るヴェルディは前線からのプレスとプレスバックでボールホルダーを複数名で潰しにかかりボール奪取してショートカウンターから大宮ゴールへ迫った。ファーストディフェンダーの最適者・河村がベンチスタートになったものの出場していた選手たちは強度高いプレーを披露してくれた。DH森田晃樹と稲見は中盤でも身体を上手く使って当たり負けせずによくボールを狩っていた。前線からの守備、敵陣でのプレー時間を長くするということがよく体現出来ていた試合の入りであった。

 一方の大宮、前節で21位が確定し、いわゆる消化試合になり、この日は6名を入れ替えてる。献身的なプレーが出来る中野と富山の2トップが牽引してこちらも前線からの守備が嵌っていた。ショートカウンターからチャンスを作り、クロスにPA内で中野が飛び込む決定機も立ち上がりには作った。ただ、ボール保持時はヴェルディの帰陣してセットされた守備をなかなか崩すようなオフザボールの動きが少なく攻め切れない場面もあり、シーズン順位を表していると感じてしまうこともあった。

 ショートカウンターから攻撃する場面が目立つヴェルディであるがラストパスが合わなかったりして決定機を作ることはなく、スコアレスで前半を折り返す。

後半

 お互いにメンバー交代無しで後半を迎える。ヴェルディは片方のサイドへ選手を集めると対角へロングボールを入れて反対サイドのフリーの選手が深い位置を抉るサイド攻撃をする。ピッチを大きく使うようになり大宮PA内まで攻め込むことが出てくる。大宮もサイド攻撃から中野のクロスに富山が合わせるなどサイド攻撃から両者チャンス創出していく。

 拮抗した状態で、ヴェルディは60分に林と加藤蓮に代えて平と綱島悠斗を投入。ここのところSB起用が続いて平であるがこの日は本職の左CBに入って谷口栄斗が右CBへ移る。綱島悠斗は前線に入り齋藤が左SHへ回る。悠斗は染野と横並びではっきりとした2トップとなる。大宮も直後に中野に代えて室井がそのまま入る。

 テクニシャンの齋藤が左サイドに回ったことでサイドでの起点を作ることが出来てよりサイド攻撃に厚みが出る。前線にはターゲットを染野に加えて長身の悠斗を置いて得点を取りにきた。連動して人数をかけた攻撃がだんだんと出来てくると63分に試合が動く。

 大宮が攻め込むも自陣でボールカットするとそこから鋭いカウンターを繰り出す。大宮の選手よりも多くの選手がスプリントして前線へ駆け上がっていくと途中出場の悠斗がボールキープしてそこから右の中原へ渡る。ニアを取る森田晃樹へ縦パスを入れると折り返しを染野が潰れて、悠斗が押し込みヴェルディが先制する。前線起用の悠斗がこの大一番で見事に期待に応えた。

 前半は思うように自分たちのリズムからの攻撃が出来なかったが先制をして躍動感が出てきたヴェルディ。対して大宮は失点を喫したことで直近の甲府戦のようにトーンダウンしてしまい、ここからはヴェルディが主導権を握る。集中した守備で相手を押し返すとテンポよく流動的なパスワークから敵陣でプレーする時間が増えて行く。

 またしても魅せたのは絶好調の漢の左足だった。前半早々に相手選手と交錯をしてヒヤリとするが、プレスキックでは鋭いボールを入れてチャンスメイクし、時間経過するにつれて仕掛ける場面が増えていくと78分に追加点が挙げる。右サイドのパス交換から中が空いていると見ると、そのままカットインしていき、コースが空いた瞬間、狙い澄ましたコントロールショットはゴールイン。差を2点とする。毎試合得点に絡む大活躍ぶりで格の違いを見せつける。

  試合を締めるようにベテラン奈良輪を左SHに投入。ここぞと相手へ思い切りよいプレス、プレスバックで前進を許さず試合の強度を維持していくと、後半ATには前線に河村を入れてクローズさせて2-0で勝利。2位清水は水戸と引き分けたものの3位磐田が栃木に勝ったため磐田が自動昇格し、ヴェルディは3位フィニッシュでシーズンを締めくくった。

まとめ

 勝って他会場の結果を願う状況であった。自分たちがやるべくことはやった上での結果であり悲観的な感情にはならなかった。前半は粘り強くスコアレスで折り返して後半にチャンスと見ると出力を上げて2得点を奪い完勝。今季を象徴するような試合運びで21勝目を挙げた。
 中原は絶好調を維持し、悠斗は念願の得点を挙げてより力が付くような大仕事をやってのけた。引退表明した大宮GK南も言及していたようにヴェルディは勝負強くなった。42試合を戦って3位は立派な成績であり、自信をもって昇格POへ臨んでもらいたい。