【雑感】2019年J2リーグ 第25節 対栃木SC~GKがフィールドプレーヤーに!?~

栃木SC 0-0 東京ヴェルディ

ミッドウィーク開催、高温多湿と悪条件のなかでの一戦。時計の針が進むにつれて両クラブは、あまりにもはっきりとした戦い方を見せた。意図、狙いそして今後のサッカー観が変わるかもしれない驚きのプレーからこの試合を振り返ってみたい。

スタメン

2連勝中のヴェルディは、スタメンに定着していたCBリヨンジが累積警告で出場停止。連戦ということもあり、メンバーも大きく入れ替え田村直也や内田は久しぶりの起用、フランスリーグへ1年間の期限付き移籍から復帰した澤井直人は今季初出場。怪我が癒えた奈良輪も左WBで出場。一方のホーム・栃木も菅と荒井の2名を入れ替えてきた。荒井はプロ初出場となる。両チームともに3421の同じシステムを敷く。

対策を練ってきた栃木

前半立ち上がり、ボールを繋いでいこうとするヴェルディに対して栃木が前線から激しくプレスをかける。ミスを誘発してボール奪取すると早い攻撃からゴールを目指す。CK のこぼれ球を瀬川が豪快にミドルシュートを放つがポストを叩く、DHヘニキが前線へ上がりロングボールのターゲットになり、その周囲に選手を密集させてセカンドボールをキープしてエース・大黒へボールを集めてシュート場面を作りヴェルディ守備へ脅威を与えるが、直也や平がうまく抑える。

試合は徐々に落ち着きはじめると、次第にヴェルディ3バック理仁、直也、平を中心にボールを握る。栃木は541守備ブロックを形成して対抗。この3ラインがとてもコンパクトで、ヴェルディが自陣でボール持つ時は栃木最終ラインはハーフライン付近まで押し上げる。栃木陣地まで押し込んでくると、低い位置までリトリートするが、縦圧縮が徹底される。フリーマンのレアンドロやシャドーの寛也と晃樹がブロックの中に居るものの、圧縮して守ることでスペースを与えずに栃木ゴールを向いてプレーさせない。右サイド直人、寛也、理仁が絡んで数回栃木PA付近までボールを持って進入するが、シュート打てずに、ブロックの外でパスを回す展開で前半をスコアレスで終える。

中盤で数的優位を作る

後半からヴェルディは内田に代えて小池を投入して、右SBに。理仁がアンカー、寛也と皓太がフロントボランチ、直人と晃樹がワイドで442へシステム変更して局面の打開を図る。中盤の人数を3枚に増やして栃木のDH(荒井とヘニキ)に数的優位を作り、ボールを高い位置へ運び、固いブロックをこじ開けたい狙いがあった。理仁からの縦パス、右サイドに入った小池の個人技からチャンスメイクで攻撃を仕掛けるが集中力高くプレーする栃木守備を崩すことが出来ない。

新戦術となるのか?GKの攻撃参加

 67分、ここまで大黒をうまくマークしていた直也であった万全ではないコンディションだったため井上潮音と交代する。理仁がCBにおりて、皓太がアンカー、潮音はフロントボランチになる。さらに攻勢を強めるヴェルディはGK上福元までも栃木陣地に入ってボールを回してチャンスを伺う。右から理仁、上福元、平で3バックを形成して栃木541の1トップ大黒を囲むようにして左右へボールを揺さぶり、縦パスを入れることで栃木第2守備ラインを突破する。ブロック内でボールを回すことが出来て、ゴールを目指す。栃木も前がかりになるヴェルディに対してスピードある大崎、平岡を入れて虎視眈々とカウンターを狙う。がら空きのゴールめがけて大きく蹴ったボールを上福元がうまく足元で捌いてクリアするなどフィールドプレーヤー並のプレーを披露する。(試合前の公式インスタグラムには練習する姿も)

最終盤に平岡が持ち前のスピードを活かしてゴールに迫る場面が何回かあったものの上福元や理仁の守備もあり、最後までゴールを割らせずスコアレスドローで終わった。

まとめ

ボールを繋ぎ、全体的に押し上げる部分までは出来ていたが、どうやってシュートに持っていくかという道筋がピッチ上の11名で共有出来ていなかったように感じた。ボールは動くものの、人が動いておらず悪い姿勢でボールを受けてしまい次のプレーが苦しい場面が多かった。この状況になってしまうと、次第にボールを触ろうと下がってくる選手が多く栃木守備陣が自らが裏抜けをしてスペースを作ることや、立ち位置を制限(簡単に下がって来ない)してピッチの縦と横で幅を取ることを約束事にしていく必要があるだろうと考える。全体の重心が後ろに傾くがゆえに、GK上福元にかなり高い位置を取らせていた。持ち前の足元の技術もあり遜色なくフィールドプレーヤーの動きが出来ることは大きなアドバンテージである。今後もこういう起用法があるかもしれず、ゼロトップや偽SBのように偽GKがこれからのサッカー界での新たな戦術となる可能性も大いにあるかと個人的には考える。但し、11対10で圧倒的にボール支配しても全員が良い立ち位置を取れなければ、今節のようにシュートまで持ち込めず機能しないため、そのバランスが大事になる。