【雑感】2023年J2リーグ 第39節 対ジェフ千葉~不屈の緑の魂~

東京ヴェルディ 3-2 ジェフ千葉

 あまりにも劇的な勝利に鳥肌が立ち、震えてしまった。良い攻撃をしてもここ一番に弱い”いつものヴェルディ”になりかけたところからの大逆転劇を振り返りたい。


スタメン

 前節・大分に1-0で勝利したヴェルディ。同じ11名で臨む。河村と染野の2トップで1442にて臨む。
 対する千葉は前節・水戸と1-1引き分けて連勝は止まった。田中が出場停止で、左SB日高は欠場。メンデスがCBに入り佐々木が左SBへ回る。右SHには古巣対戦となる高木が起用される。

前半

 自動昇格へ勝ち続けないといけないヴェルディは、前節の引き分けで連勝こそ止まったもののいま一番強いのでは評される千葉をホームに迎えてのオリジナル10対決に臨む。

 立ち上がり早々、サイド深い位置で起点を作った千葉がFKを獲得。キッカー田口にはヴェルディは何度も苦渋を味わっており、絶好調のチームにおいていきなりセットプレーを与えてしまった。ここは何とか防ぐものの与えてはいけない機会をさっそく作られ、むしろ千葉が狙っていたのかという試合の入りになった。

 千葉はボール保持時、田口がアンカーになり風間と見木がIH、右SH高木はサイドに張りがちだが、左SHドゥドゥは流動的に内外と動く。これに対してヴェルディは1442で構えて、2トップ河村と染野が田口をマークしながら鈴木とメンデスへプレス、SH中原と齋藤が対面するSB高橋と佐々木を見る。時間経過するに連れて染野と河村は2CBとGKを見て、田口には稲見か森田晃樹がつくハイプレスを敷く。プレス、プレスバック効果的に決まり染野を中心にパスカットからそのままゴールへ向かう場面が見られた。

 一方でボール保持する千葉は前線の呉屋など目掛けてにアバウトなボールを入れてそこで収めて2列目の選手たちが前を向いてスピードを殺さずにそのままゴールへ向かう。特にヴェルディのCKからのカウンターは脅威を感じた。
 または、最終ラインのビルドアップでプレスが緩くなりフリーになった瞬間に左SB佐々木が対角へ正確なロングフィードを入れて右サイドへ振る。ここも効果的であった。

 対するヴェルディはボール保持時にシンプルに後ろ4枚で回す。千葉は呉屋と風間の2トップとSH、1DHがプレスをかける。田口、見木の残った方のどちらかの脇でボールを貰い(特に染野が下りてくることが多かった)サイドへ散らしてクロス攻撃を仕掛ける。河村がそのまま抜け出す、左は加藤蓮と齋藤、右は中原と宮原と連携で崩しを見せる。先述のとおりに千葉はビルドアップ時に中盤3枚になることで2枚のヴェルディに対して数的優位を作り押し込む場面もあったがボールを失うとアンカー周辺にスペースを空けてしまうため、ヴェルディのポジトラからのショートカウンターも立ち上がりから効いていた。

 ヴェルディが攻撃を押し進める割合は高かっただろう。しかし、先制点は千葉に生まれる。左SB佐々木からのサイドチェンジをカウンターで右サイドに動いていたドゥドゥがボールを受ける。中へ侵入していき思いっきりよく右足を振り抜くとDFにあたってコースが変わり、マテウスの手にあたるもそのままゴールイン。押されつつあったアウェイチームが先制する。

 この失点で動揺したのかヴェルディは技術的なミス、消極性が散見し始める。すると、直後にも自陣でのスローインからボールを貰いに下がった染野がパスミスをしてドゥドゥにプレゼント。先制点で気分よくなったドゥドゥは豪快に遠い位置からシュートを放ち、これもDFにあたりコースが変わりゴールイン。あっという間に差が2点に広がる。

 勝ち続けないといけない大一番で力なく2失点を喫して、いつもの”勝負弱い”ヴェルディかとガッカリしてしまう。攻めながらも相手のシュート2本で2失点をポジティブに捉えていたチームは継続してサイド中心の攻撃を仕掛け染野、加藤蓮が合わせるも枠を捉え切れず、決定力を嘆く。しかし、千葉の守り方を見ているとCBメンデスと鈴木の守備が気になった。ブロックを敷いて単純に跳ね返すだけならば鉄壁であるが、対面する相手がサイドへ流れると喰いつきがちに持ち場を離れてしまう、4バックの距離感が開いたりスペースを空けてしまう守り方はニアゾーン攻略を志向するヴェルディにとっては都合が良かった。

後半

 2点ビハインドになったヴェルディ。前半にドゥドウのタックルで負傷した森田晃樹が退き平を投入。平は左SBに入って、左SH齋藤がDHへ、SB加藤蓮がSHへ回る。これは前節・大分戦でも見せたオプションである。対する千葉は古巣対戦になりながらも低調なパフォーマンスに終わった高木に代えてベテランの米倉を投入する。

 2点リードということもあったのか千葉のプレスが前半に比べると落ちた気がした。ここで存在感を出したのが後半から腕章を巻く谷口栄斗だった。
縦への鋭いパスを左右両足から蹴り入れ、相手が来ない、スペースがあると見るやそのまま持ち運び1列突破し千葉陣形を乱すと最終ラインから攻撃の起点になっていた。また後半は45分間を通じて相手カウンターの芽を摘む素早いカバーリング、クリアと先にボールに触れてはマイボールにする。怪我で離脱していた期間が長かったが逞しさが増してきている。そんな栄斗であったが、カウンターのピンチから米倉、ドゥドゥと繋がれてPA内に入ったボールに対して呉屋と交錯して倒したとみなされPKの判定。
 とどめを刺されると終戦に近い状況でキッカーはこの2得点のドゥドゥ。あまりにもゆっくりと時間をかけた助走からのキックをマテウスが完全に読み切り、PKセーブ。試合を決定づける3点目を阻止したヴェルディ、暗雲漂ったスタジアムの雰囲気が変わり始めた。

 直後に選手交代が行なわれ、ヴェルディは河村と加藤蓮に代えて、山田と綱島悠斗を投入。山田はそのままトップに入り、齋藤がSHへ戻り綱島悠斗がDHに入った。一方の千葉は呉屋に代えて小森を投入。小森と中盤の選手たちの間にスペースが出来はじめたことでヴェルディがセカンドボール回収し敵陣でプレーする時間帯が長くなった。悠斗はサイズを活かしたプレーでピッチ中央にデンと君臨しパワーを加え押し進めて行く。前線の山田は小柄ながらも体幹強く、ポストプレーでうまくボールを収め、この日はとてもよかった。

 ヴェルディが点を取れそうな空気になりながらも得点を奪えず0-2の状況の中で齋藤に代えて長谷川を投入。千葉はドゥドゥと風間に代えて、西堂と小林を入れて見木が1列上がった。結果としてドゥドゥを下げたことで千葉は推進力を失い、防戦一方になってしまった。右サイドの宮原の攻撃参加も増えて、中原との攻撃に厚みが出て、左からは長谷川が巧みなテクニックを駆使して左右両足でクロス供給。

 SB宮原は守備時は1対1をほぼ止めて、攻撃になると猛烈なスピードで駆け上がりPA内まで侵入し、シュートと年間を通して安定したパフォーマンスであるがこの日はそのなかでも№1とも言える圧巻のパフォーマンスだった。その勢いに乗るように中原も仕掛けが増えていき、得点の匂いがしてきた。

 宮原のパスを山田が右サイドに流れながらメンデスを背負いポストになると中原へパス。メンデスを外へ釣り出したことでPA内には千葉守備陣は2枚とヴェルディと数的同数。ファーへの浮き球のクロスに、長谷川が頭で合わせて1点返した。

 1点差になったヴェルディ、攻撃の勢いは止まらず押し込んで行くと、90分にとうとう追いつく。右からのクロスを長谷川が折り返し、千葉DFの姿勢と目線を乱すと最後は染野が身体ごとボールを押し込んでゴールラインを超えて同点。前半のミスからの失点を挽回するように染野の勝負強さが光った。1ゴール1アシストとようやく数字がついた長谷川。期待され加入するもなかなかパフォーマンスが上がらず苦しい時期を過ごしただろうが、ようやく結果が出て、残りわずかな試合だが大爆発を願いたい。

 絶望感もあった2点ビハインドから追いついたヴェルディ、ドラマはまだ終わらない。リスタートからも千葉ゴールへ迫り、CKを獲得してはクロス、再びCK。サイドに流れたボールを山田が身体を上手く使ってキープすると中原へ。ここまで浮き球クロス中心だった中原が意表をつくようにグラウンダーの速いボールを入れるとボールは流れ、綱島悠斗が見事にスルーし、GK鈴木は動けず、ゴールネットに吸い込まれた。劇的な逆転弾、割れんばかりの歓喜に包まれた味の素スタジアム、自動昇格への選手、監督コーチ、サポーターの執念で勝利をもぎ取った。

まとめ

 結果がすべての状況で10年に1度くらいの大逆転劇を演じて魅せた。マテウスのPKストップが流れを変え、宮原、中原、長谷川の本気プレーとも思えるJ2では別次元のような強度高いプレーで勝利を手繰り寄せた。まだまだ自動昇格を諦めないと言わんばかりの気迫であった。連勝中だった千葉はトランジション強度、プレス強度高く、手強く、出場停止だった田中や欠場した日高が居たらさらなる恐怖を感じた。PK失敗で大きく流れを手放したことが悔やまれる。
 ヴェルディは前半から攻撃の形は出来ているが、ここぞでの個の決定力向上、要は札束なのかと痛感する場面もあったし、失点はなんてこともない自滅でもあり技術的なミスを極力失くすことは喜びを味わう上では、追求しなければならない。
 次節も昇格争いのライバルになる磐田だ。2018年J1参入PO決定戦とリベンジを果たす舞台は整った。