【雑感】2019年J2リーグ 第19節 対大宮アルディージャ~主導権を巡るピッチ上での戦術駆け引き~

東京ヴェルディ 0-0 大宮アルディージャ

大量失点が止まり、ようやく連敗脱出したヴェルディ。シーズン当初から甲府、大宮連戦が前半戦の山場と位置付けて取り組んできており今日はどんな戦いぶりを見せるのだろうかと期待をして迎えた。10年前の指揮官で、それから戦術家として評価を上げる高木監督とのピッチ上での駆け引きとなった熱い一戦を振り返ってみたい。

<スタメン>

 前節甲府戦でシステム変更が功を奏して4戦ぶりに白星を挙げたヴェルディ。この日も3421システムを継続する。不動のレギュラー奈良輪が負傷のためベンチ外となり、永田が移籍後初スタメンとなる。ベンチにはベテランの田村直也と近藤が入る。渡辺皓太は引き続きコパアメリカ日本代表のため不在である。対する大宮は、戦術が浸透し始めてここぞの勝負強さもあり14戦無敗と好調を維持して2位につける。システムは前節岐阜戦同様に3322を採用。前節スタメンだった茨田がベンチスタートで小島が抜擢された。

<主導権を巡る攻防>

 前節で久しぶりの完封勝利を挙げたヴェルディは自信を取り戻したかのように勢いそのままに立ち上がりからプレーする。ボール保持時に3142の大宮対して523でセットするヴェルディ。前線3枚がこの日も果敢にプレッシングをかけて大宮の最終ラインに圧をかけていく。中盤でボールを握ると大宮CBとWBの間を狙ってサイドからのクロスで攻撃をみせる。右WB小池は対面する吉永や河面とのマッチアップ、裏抜けでチャンスメイクをする。ボール保持時はDHの井上潮音もしくは藤本寛也が下りて、415になる。532で守る大宮陣形のなかでシャドーの梶川と佐藤優平が3ボランチと最終ラインの間に上手く位置取りしてボールを貰い、反転して前を向くことでゴールを目指す。昨年のPO1回戦でもよく見られた光景である。

 対する大宮は、前線のフアンマに当てて近い距離を保つ奥抜、小島らが絡む展開を見せる。3バックに石川が最終ラインに下りてきて、左サイドへ三門が流れてビルドアップの出口を作る。右WB奥井は低めで、三門が流れたことで左WB吉永を高い位置へ押し上げてサイド攻撃を図る。しかし上記のようにヴェルディのプレスが早くなかなか思う通りに試合を運べない。

<システム変更で流れを変える>

 前半34分ごろ、大宮・高木監督がシステム変更をピッチ内の選手へ伝えている場面が映る。小島、石川、三門の3ボランチからシャドー・小島で石川と三門の2ボランチにしてこれまで使用していた3421とする。中盤のスペースを使われていたことからヴェルディと同システムにする。これで選手たちの役割を明確にして大宮が徐々に流れを取り戻していく。試合後のコメントでは高木監督は元々プランBを使う予定であり、ホワイト監督もこのシステム変更は想定して準備していたと言う。

<スペースを活かした攻撃を繰り広げる両者>

 後半も両チームそのままのシステムで始まる。541で守る大宮に対して、ヴェルディは1トップ・フアンマの横を使っていく。特に、平やヨンジが持ち上がることで小島を釣り出す、そこで空いたスペースに優平が下りてくる。そこにWB永田も絡んで左サイドに人数をかけてチャンスを作ろうとする。しかし、大宮も奥井、畑尾らがしっかりと対応することで簡単には崩れない。CF陵平までボールサイドに寄ってくると、今度はPA内ががら空きになてしまい攻撃の形が出来ていなかった。

 ボール回収した大宮は攻め上がったヴェルディ両WB裏をつくようにショートカウンター中心に攻撃を仕掛ける。負傷した奥抜に替えてバブンスキーが投入されてそのままシャドーへ、同じくフアンマに替えてシモビッチが入る。小島や吉永が決定的なチャンスを作るがゴールには至らず。長身のシモビッチがターゲットになることで大宮の攻撃がよりはっきりとした。対するヴェルディもCBとDHでしっかりと挟み込み懸命の守備をみせる。DH潮音は縦横無尽にピッチを走りファーストディフェンダーとしてボール奪取してピンチの芽を摘む活躍ぶりを披露する。後半中盤になり次第にヴェルディの前線からのプレス強度も落ちてくると、林陵平に替えて端戸を投入。しかし、全体的な勢いは大宮にあった。リトリートするヴェルディに大宮CB畑尾と河面もボールを持ち運ぶ場面が出てかなり圧をかけてくる。76分には畑尾が深い位置まで攻め上がってのクロスに石川がシュートを放ちゴールを脅かす。

 ヴェルディは疲れの見える永田に替えて山本理仁が投入されてこの日もDHへ入り、寛也がWBに回る。対する大宮も吉永に替えて茨田が投入されてシャドーに入り、三門が左サイドへ移動。石川へのマークが緩くなったこともありここで起点を作られてその後も大宮がチャンスを作るが、決めきれなかった。ヴェルディも優平に替えてヴァウメルソンを投入して攻撃に出るものの最後まで大宮守備を崩すことが出来ずにスコアレスドローに終わった。

<まとめ>

 塩田、菊地、石川、三門と実力者中心に手堅いサッカーをする大宮守備を最後まで崩すことが出来なかったが、攻守においてやりたいことが明確に分かる内容だったと感じた。対戦相手の大宮も試合中の修正力で最後まで締まった試合を見せてくれた。両クラブの中盤の潮音と三門の2選手の動きは特に際立っており、適切なポジショニングから効果的なプレーを披露してくれた。その一方で、ヴェルディはPA内へ入る選手が少ない、大宮もCB-DH間で簡単にボールを受けられてそのままゴール方向へ仕掛けられるといった部分が監督変わったとは言え、昨年対戦時の課題がそのままという印象もあった。次回対戦までにどう手を打ってくるかは注目したい。