【雑感】2019年J2リーグ 第30節 対V・ファーレン長崎~守備構築を考えさせらる~

V・ファーレン長崎 2-1 東京ヴェルディ

戦前から予想していたかのように前半戦の試合内容に近い展開になってしまった。。。攻撃志向が強く、面白味があるサッカーに見えるようで、かなり脆弱な守備がなかなか向上せず、どういった内容になるかが容易に想像できてしまった深刻さ。両チームの守り方の違いを中心にこの試合を振り返ってみたい。

スタメン

 前節・水戸を2-1で下して8月初勝利を挙げたヴェルディ。カターレ富山から加入した新井が左ワイドで移籍後初スタメン起用され、システムはお馴染みになりつつある中盤ダイヤモンド型1442をこの日も採用する。対する長崎は前節・山口に4-0と大勝。GK徳重に代わって富澤が起用され、それ以外は同じメンバーでこちらは2ボランチの1442システムでスタート。

攻撃のタクトを振るう山本理仁

 攻撃志向が強い両チーム、同じような守備陣営を敷きながらもそのやり方の違いが試合序盤から現れる。どちらもボール非保持時は1442となる。長崎は2トップ呉屋と玉田にSHの大竹と澤田のどちらかを加えて3枚がヴェルディの最終ラインに対してプレスをかける。守備ラインを越えられたとしてもプレスバックする動きも見せる。DHカイオセザールは終始、アンカー・山本理仁へマークする。中盤に生まれるスペースに対してフロントボランチ森田晃樹と梶川、フリーマン・レアンドロが利用してボールを運びゾーン2から3へ進入してサイドへ展開。もしくは理仁からのロングボールで長崎守備ラインを突破というのがヴェルディの攻撃であった。

 すると、初出場の新井がいきなり魅せた。6分、理仁からの大きく展開されたボールをタッチライン際でトラップするとそのままカットインしてPA外からのミドルシュートを放ち、GK富澤の手を弾いてそのままゴールイン、ヴェルディが幸先よく先制する。

効果的な守り方とは 

 ヴェルディも1442で守る。長崎のビルドアップ形成する2CB徳永、角田+2DH秋野、カイオセザールに対して2トップレアンドロと新井の2枚のみがプレッシャーをかける場面が多く長崎に比べて枚数が少なく、あまり効果が見られずに簡単に前進を許してしまう。中盤4枚も含めてヴェルディは基本的にボールホルダーのみへ1人がプレッシャーをかけるため、ボールが動いたら人が動く守り方になり強度が弱い。横スライドが遅いことも重なりスペースを長崎の選手たちが先に陣取り、先制点を挙げながらも次第に押し込まれる展開になる。長崎選手のコメントでもこのような指摘があった。

長崎の攻撃も最終ラインからボール繋ぐ丁寧な仕掛けが目立つ。富澤もしくは秋野が加わりビルドアップして、右に左にボールを動かすことで横スライドの間に合わないヴェルディに対して、SB亀川と香川がフリーで高い位置を取りそこからのクロスでのフィニッシュと、前半戦と同じような崩され方からピンチを招く。または、玉田が下りてきてライン間でボール受けて呉屋や大竹とのコンビネーションでフィニッシュまで持っていく。27分の同点ゴールも玉田が大竹との連携から豪快なミドルシュートを決めた。

 39分ごろ、ヴェルディ永井監督は早くも動く。先制点を挙げた新井に替えて河野広貴を投入して、レアンドロとポジション変更。試合後の監督コメントでは新井の守備面での対応に満足出来ずに交代したとのことであった。投入された広貴は、前線から激しくチェイスすることで守備の活性化を試みるが、周囲がそれについて来れ無いまま前半を終えた。

プレッシングのかけ方

 後半、ヴェルディは若干、守り方を変える。1442のSH的な位置に入る小池と森田が長崎SBへ高い位置からプレスをかけるようになり、位置的優位性を作っていた亀川と香川を抑えこむことが出来て、反撃を許さない。

 攻撃では、理仁から右ワイド小池へロングボール展開してサイド突破を仕掛ける場面があったものの、これくらいしか見せ場は作れない。フロントボランチの攻撃参加があまり見られず、左サイドに回ったレアンドロは中央へ寄りすぎて周囲との間延びが生まれて迫力を出せない。
 勝ち越しゴールを目指すべく長崎は切り札のイバルボを投入する。J2では抜きに出た圧倒的な能力を兼ね備え、この日もヴェルディ守備陣へ脅威を与える。フィジカル、技術力を活かしたボールキープからの仕掛けでヴェルディが志向する『時間の確保』と『前進』を一人で実行してチャンスを作る。一連のチャンスから得たCKより角田のヘディングシュートが決まり長崎に逆転許す。ヴェルディも反撃に出るが、攻撃が停滞してしまい、チャンスらしいチャンスすら作れない。CB近藤や内田が持ち運び敵陣へ進入して全体を押し上げるものの、長崎は高い位置からでも前線がしっかりと守備をして最終ラインが下がらない。重心を下げられないため、固いブロックを作り、崩すまでには至らない。敵陣ゴール付近で試合を支配する事が出来ず攻めあぐねてしまい、このままタイムアップ。1-2で逆転負けを喫して8月の戦いを終えた。

まとめ

 両チームの守り方を考えてみた。ボール非保持時に同じシステムからスタートするが、ボールと人のどこに守備の基準をもっていくか、中盤の選手たちの前プレの違いなどから全く異なる戦術になっている。どういう風にボールを奪うのかというイメージの共有化が低いため、相手ボールになるとフィニッシュまで持っていかれることが多く、ボール支配率とシュート数が逆転している一因と考える。攻撃⇔守備は繋がっていて良い守備をすることが良い攻撃に結びつくだけに守備構築を再考する必要性がある。初出場して得点を挙げた新井は攻撃面では光るものを感じさせてくれるが、にもかかわらず前半途中で交代したのは個人守備の部分ではまだまだ劣っているようにも見えて、他選手を含めてチーム全体的に向上させていくことが求められる。