寿司日乗37

2019年6月12日(水) 曇り

「何かあったら自分の心の声を聴いて」

月曜日。
報道ステーションを観ていたらこの言葉だけがスッと入って来た。松岡修造が会話の中で言っていたのだけれど、この人はいつもテレビで観るたびに画面からはみ出しそうな熱量とは裏腹に、話していることはとても冷静だな。缶ビールを2本開けてほろ酔いの脳みそにまっすぐ届いた一日の終わり。テレビから流れてくるもの全てげんなりするようなことばかりの昨今だけれど、自分の言葉で話すひとの声も電波に乗って多くの人に一斉に届く。それはコメントやもっともらしい発言とは違って、とても普遍的で質素な言葉。誰がそれを言うかはとても重要だけれど。
「そうか、自分の心の声か」独り言。心の声に従うと、私の今の暮らしは全部破綻するかな。いや、破綻していいのかもしれないな。維持する意味はなんだろうというところで眠たくなる。

「買い被らないでください。私はささくれだった女です」

火曜日。
ドラマ深夜食堂を観ていたら女優が言ったセリフ。
卑屈にも聴こえるけれど、自分のことがわかっていないとこんなセリフ言えないなぁと思う。夜のおやつにと楽しみにしていた塩大福を口いっぱいにほうばって私も言ってみる。
「くぅあいかぶららいでくらさい。わたすはすぁさくぅれだたうぉんられす」
自分で言った後に鼻で笑ってしまう。塩大福を口いっぱい頬張る女には似合わないセリフだなと言うことだけよくわかった。

「紫陽花って、そのまま天ぷらにしたらおいしそう〜」

本日昼間。
夕食の買い物にでたとき、民家の軒先に咲く紫陽花を見ていた女性が放ったひとこと。独り言。私は立ち止まってしまった。まるで自分が言いそうなことを見知らぬ女性が言っている。つい話しかけてしまった。
「ほんと、美味しそうですね」「ねぇ〜」
その会話も至極自然でそのまま私達は笑いあって別れた。
なんだろうこの胸がじゅわっとする感じ。女性はアイスクリームを舐めていた。今日を感じるままに生きているように見えて、
ちょっとだけ羨ましいと思った。


やるべきことがあるのに手につかないときほど、
人の言葉が飛び込んでくる。
「どうでもいいんだよそんなこと。些細なことだよ自分で悩ましいと思っていることなんて」と、
見知らぬ人達に励まされている気がするのは私の色眼鏡のせいか。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?