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テレビディレクターの僕がこの正月に考えたことの話

あけましておめでとうございます

フジテレビの日置です。
2024年最初の投稿は2023年の僕の仕事まとめからかな〜なんて思っていたのですが、1月1日の北陸の地震と2日の飛行機の事故、そして3日は電車内での刃物切りつけなど、ものすごくショッキングなニュースが続いているのでテレビディレクターの僕はどう考えたかを書いてみたいと思いました。
ともあれ、2024年も何か新しいものを作れるように精進してまいりますのでよろしくお願いします。

1月1日

まずは被災した皆さまには心よりお見舞い申し上げます。今も不安な日々を過ごされているかと思います。1日も早い復旧をお祈りいたします。

今年も僕は生放送「爆笑ヒットパレード」に立ち会うためにフジテレビにいました。これは毎年のことなのですが、僕はこの番組に一切関わっていません。関わっていないのですが、ナイナイさんが司会を務めるようになってからほぼ皆勤で収録を見に行っています。
若手の頃はナイナイさんに挨拶をするためと、生でお笑いを合法的に見られるチャンスということで顔を出していました。最近はナイナイさんはもちろんのこと、番組でご一緒している芸人さんに新年の挨拶をするためや、フジテレビの上層部に媚を売る挨拶をする、ついでに今年の仕事のプランを伝える、さらには各事務所の重役の方々が集まるのでそこにもご挨拶をするという、一粒で二度美味しい、いや一日で三度も四度も美味しいボンバーチャンスデーとなっているのです。

今年は「呼び出し先生タナカ」でお世話になっているあのちゃんや村重さん、ゆうちゃみさんといった芸人以外のタレントさんにも挨拶できてとても有意義な1日でした。

そんなわけでスタジオや楽屋口を行ったり来たりして生放送中は過ごし、終了後は芸人さんたちの打ち上げ部屋にもちゃっかり潜入。深夜のハチミツに出演する若手芸人さんにアドバイスを求められたぶん間違えまくっている助言をしたのちに、帰ろうかというところでテレビに地震速報が流れていました。
そのときは震度5弱という速報だったかと思います。「もう少し大きかったらニュースカットインだったね。」「生放送中だったら色々大変だったろうね。」なんて思っていたら情報が更新され(おそらく本震がきた?)震度7という情報が。
あとは皆さんご存知の通り各局が報道特番に切り替わり、民放各局の新年の番組が軒並み放送されない事態になりました。

元日の夜のバラエティはどの局も力を入れる渾身のコンテンツが放送されます。当然お金もかかっているし、スポンサーの期待も大きいため巨額のお金が動いています。ということは自ずとそれを任されたスタッフは気合が入りまくっているし。
年末は血眼になって編集をして、
「元日のお茶の間に届け!よろしくおねがいしま〜〜〜〜〜す!!!」
という気持ちで納品しているかと思います。

それが流れないというのはかなり辛いことですし、ショックも大きいと思います。しかしテレビ局が報道機関である以上、これは致し方ないことです。
各局気合の入った番組なので、早く放送したいという気持ちの表れなのか早速振り替え放送が決まった番組もあります。
MCは羽織袴や晴れ着を着て「あけましておめでとうございます」と言っているでしょうから当然と言えば当然なのですが、
この日程をこじ開けるのにもかなり大変な作業があったかと思います。

おかげでその超人気コンテンツが自分の番組の裏にきてしまって「おいおいそりゃないぜ」と言っているスタッフもいます。
いつも通りの裏番組かと思ったら、超ビッグコンテンツがきたらひとたまりもありません。

テレビ東京はバラエティを放送

一方でテレビ東京さんは「出川さんの充電旅」を6時半から放送していました。本来は6時から放送予定だったのが、途中から放送したとのこと。
これには賞賛の声が多く、さらには他局が軒並み報道番組だったことも手伝って視聴率もダントツでした。

バラエティ番組が大好きな自分としては、もっとバラエティに放送を戻す局があってもいいのにな。と思うのですが、全国にネット局があるとそうもいかないのでしょう。
さらにいうと報道番組にするかどうかの権限は僕たちディレクターはもちろんのこと、プロデューサーにも権限はありません。もっと局の中枢の方々で決めています。
なので地震速報が流れた瞬間に編成部の皆さんは編成フロアにダッシュして行きました。
そして某アナウンサーがほぼ化粧をしていない状態で報道フロアに走っていくのもすれ違いました。

これは生放送を去年経験したから知ったのですが、地震の場合、明確に関東なら震度何度以上で、それ以外の地域では震度何度以上でニュースが強制的にカットインする。というルールというかレギュレーションが存在します。
今回もおそらくそれが発動されたのかと思います。

1月2日

旅客機事故は実家でくつろいでいる最中にニュースで知りました。
最初はこんなに大きなニュースになるとは思わなかったのは1日の地震と全く同じです。
こちらも旅客機の乗客が全員脱出できたという奇跡が本当に不幸中の幸いでしたが、海保機の乗組員の方が亡くなられたということが本当に残念です。

こちらも同じようにニュースのカットインなどで放送が途中からになってしまった番組があったかと思います。

1月3日

今度は電車内での刃物による傷害事件。見ず知らずの人に電車でいきなり刺されるって恐ろしすぎる。そして今までだと「男性」が弱い者をねらってがこの事件の定石だったのに今回は違うというのも驚きでした。

3日連続でショッキングな出来事が続き、今年はどうなっちゃうんだろうという不安が募ります。

僕は何をするか

旅客機事故や刃物の事件に関して僕が動けることは特にないのですが
やはり地震で被災した方の生活はとても気になるところです。

被災地に自車などでボランティアに行くのはよくない
という考えが今はスタンダードです。
なので僕ができることといえば募金ということで早速、コンビニの募金箱に募金をするようにしています。
去年はTHE SECONDの記事をたくさんの方に購入していただいたので、
僕がコーヒーを飲むよりかはそちらのほうが有効に使ってもらえると思います。

※僕があのセカンドの記事で相当儲かってると思っている皆さん、実は
あの売り上げの数十%はフジテレビに入れないといけないんですよ。
僕はフジテレビの社員ですし、フジテレビのコンテンツについて書いた記事なので当然そうなるんです。いや、それが当然らしいです。

そんなわけで皆さん、いまはとにかく募金をしましょう。

これからの収録これからのバラエティ

1月収録の番組からは〇〇が無くなる

1月に僕は2つの特番の収録を抱えています。
さてここからが勝負なのです。
例えばコント番組で「地震」「飛行機事故」「刃物」が出てくるものがあった場合、台本を変えなくてはいけません。
「地震」に関しては2011年の震災がまだ記憶にある中で、バラエティに「地震」が取り入れられることは滅多にありません。これは簡単なことです「笑えない」からです。誰かが当時のことを思い出して嫌な気持ちになったりしてはバラエティの使命から大きくかけ離れてしまいます。
よってバラエティの企画でも、芸人さんのネタでも「地震」が取り入れられることが少ないのです。

「飛行機事故」はどうでしょう?
これは航空会社が民放の大事なスポンサーであることが大きな理由です。同じ理由で自動車事故をコントなどで扱う場合も営業の方が、困難な調整をしてくれて放送しています。
なので元々扱うことが少ない事象なので今回も大きな変更を余儀なくされるということはなさそうです。

1番の問題は「刃物」です。
今回は幸い死者も出なかったですし、地震や航空機事故が連日ニュースで取り上げているためそれほどセンシティブになる必要はないかもしれませんが、今回は少し大きく捉えた場合で書いてみます。
「刃物」はコントで結構な確率で登場します。去年のKOCでもナイフ、出てきましたよね?
強盗や不良、時には全く関係ない学校や家族のネタにでも「刃物」は出てきます。1月に芸人さんのネタ番組を撮る場合、台本にある「ナイフ」はおそらく無くなる可能性が高いです。
これは制作サイドから「変えてもらえませんか」というからというのもあるのですが、芸人さんからも「これ変えます」と言ってくることがほとんどです。
理由は簡単です。「ウケないから」です。
芸人さんはお客さんの反応にとても敏感です。いまナイフをだしたら「笑いづらいかも」・・・。最悪の場合「悲鳴があがるかも」と考えるはずです。

そんなわけで今年の1月に「刃物」はかなり危険です。
実際に、安倍元首相の銃撃事件があった際には、
THE CONTEで「銃」や「鉄砲」「銃声」が出てくるものはすべて変更になりました。
これも局側の働きかけよりも先に、芸人さん側から変えたいという要望がほとんどでした。

「昔のバラエティはよかった」

「昔のバラエティの方がよかった。面白かった。」なんて声をよく耳にしますが、もちろんそういった側面もあるかもしれません。でも、今のバラエティの方が、見ている人のことを考えて作られている気がするんです。たまにXでテレビマンの傲慢な振る舞いが吊し上げられていますが、僕の周りではあまり見かけません。(ん?僕自身が傲慢だから気づいていないのか?)

もちろんコンプライアンスや制限を逆手にとって面白いものを僕も作れるようになりたいですが、まずは視聴者が見ていて「楽しい」気持ちになるものを作れることを目指していかなくてはなりません。

兎にも角にも2024年も「楽しい」「新しい」テレビを作って行きたいと思います。

※5日の午前中にはこの記事を書いていたのですが
 こんなこと偉そうに書いちゃって大丈夫か?
 炎上しないか?
 ここは言い過ぎだな
 一部有料にして拡散しないようにするか?
 とか色々考えて躊躇していたら6日になってしまいました。
 とりあえず出してから対策はまた考えようということで
 公開いたします。

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