20年前の忘れ物〜スポーツは素晴らしい〜


20年前の夏、僕たちは岩手の雫石にいた。
僕たち八千代高校はサッカー部は千葉県代表としてインターハイの決勝戦まで駒を進めていた。

相手は広島代表の広島皆実高校。
どちらが勝っても初優勝。

決勝前夜、今泉先生は言った。
「20年前に忘れ物をした。ずっと取りに行けないんだ。明日、俺の忘れ物を取ってきて欲しい。」

そう、20年前、今泉先生自身も八千代高校で全国大会に出場。決勝で敗れて全国制覇をすることができなかったのだ。
それがずっと心残りだった。と言った。


決勝当日、真夏の連戦で両チーム共に疲労は限界に達していた。

刺すような日差しの中、
取って取られての2-2で延長戦。

延長早々に勝ち越され2-3。
僕たちのチームはスターがいる訳でもなく、特別強くもなく、運と一体感で勝ち上がって来ていた。

掴みかけた全国制覇のチャンス。
諦めずに走りきる。
そして、ついに、2年生の兵働(後に清水エスパルスでもキャプテンを務める)が得意の左足で突き刺すミドルシュートを突き刺して追いつく。

激闘の末、3-3の同点のまま試合終了。
PK戦はない。
それが意味するのは、同校優勝。
ここまで来て決着がつけられない。

そんな勝負事ってあるか?

表彰式。
両チームともに暗い表情。
消化不良の全国制覇。
いや、制覇はしてないので全国両校優勝。

今泉先生への忘れ物は半分だけ持って帰れた。
(今泉先生は嬉しかったらしく、本当かどうか、千葉に帰って飲んで酔っ払い、パンツ一丁で優勝旗を持ってグランドを一周行進したという噂が笑)

時は過ぎ、プロになったやつ、大学でもサッカーを続けたやつ、僕のように高校でサッカーを辞めたやつ。
そして、みんな仕事を始めた。
時々集まって飲む時は当然サッカーの話になる。
すごく楽しいのだけど、何かが足りない。

そう、あの場所に忘れ物をしたままだから。

広島皆実のメンバーで大学が同じメンバーがいて、いつか決着をつけたいよね。と話していた。

彼らも同じ気持ちだった。
そして、15年の時が過ぎた時、広島皆実高校がグランドを人工芝にするという。

そこで、15年前の決着をつけるべく、
2014年の7月広島皆実高校での再戦が実現。

当日はあの日と同じように刺すような日差し。
青春が蘇る。

聞こえはかっこ良いのだが、
なんせ30過ぎのおっさん達だ。
足がつる人続出。ある意味あの日た同じ死闘。笑

結果はあの日と同じような展開で2-2で競り合う。
しかし、結果はホーム(招集人数)で勝る広島皆実の2-4の勝利。

試合終了後は、流川で両チーム入り混じって飲む。
試合には負けたけど、飲みは勝つ、なんて言いながら、お互いのことはそれまでほとんど知らないのに、すぐに打ち解けた。

15年持っていた想いは同じだったのか、ずっと昔からの親友のよう。

本当にスポーツって素晴らしいと感じた。
初めて話す人同士をこんなにもすぐに、深く、近づけるのだから。

それから、東京にいる広島メンバーと時々飲むようになった。

時は過ぎ、八千代高校も人工芝に。
という活動が始まった。

特に支援者がいる訳でも無く、難航した。
集まらなかったらどうするの?
問題起きたらどうするの?
まずは足並みを揃えてから、、
●●さんの顔を立てて、、
いつでも挑戦を止めるのはこういった声だ。

できるかな?じゃねえよ、やるんだよ。を合言葉にサッカー部OBを中心に4,000万円寄付を集めてついに実現した。

そして、2019年4月に完成した。
そう、あの日からたまたまちょうど20年。

15年前は負けたけど、ホーム&アウェーで勝敗を決めるべきだ。
今度は八千代高校のグランドで。

今年の7月13日。
20年前の忘れ物を取りに行く。

色褪せたおっさん達の色褪せない戦い。
スポーツは素晴らしい。


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