中島

9/10 もし日本が強くなったのだとすれば

サッカー日本代表、パラグアイ戦。

堂安、久保、冨安はじめ、若い世代の台頭がここまで目覚ましいのは頼もしい限りで勝利を喜んだが、心に澱のように残っていた気持ちのモヤモヤがあった。

そのモヤモヤを文章にして下さった方がいたのでご紹介したい。

事件は前半46分に起きた

前半アディショナルタイムに突入した46分。中島は左サイドにポッカリ空いたスペースでリフティングドリブルを披露した(披露したと言って間違いではないだろう、清水氏も言及していたとおり必要の無いプレーだったから)。それに激高したパラグアイ代表FWサナブリアは中島の背後から厳しいスライディングをお見舞いした。

流れの中でのプレーであれば一発レッドカードで退場させられてもおかしくない危険なタックルだったろう。それでも、イエローカードで済んだのは審判も「中島が行ったプレーの受け取られ方」と「その行為に対する報復プレーであること」。加えて、解説を担当していた都並さんが仰っていたが中島は後ろから削られるということをある程度分かっていて削られる瞬間少し足を浮かして大けがになることを意識的に避けていた。審判はその点も見越してのイエローだったように思う。審判ってよく見てんだなと感心した。

中島のことを肯定的に見て言うと

”あのサッカー日本代表”が南米の強豪パラグアイ相手に前半で2-0のリード。試合内容も完全に主導権を握っていて、パラグアイに好きにやらせていなかった。「あぁ、日本もパラグアイ相手にここまでやるようになったんだなぁ」と嬉しい気持ちになった。もうアジアの弱小国ではない。南米・欧州の各国とも互角とまではいかないが競り合うことができると。ロシアW杯でベルギーをあそこまで苦しめたじゃないか!

中島が行ったプレーを好意的に捉えるならば、「俺が知ってるパラグアイはもっと強いはずだ、もっと掛かってこいよ。俺を楽しませてくれよ」と相手の奮起を促したのではないか。(よく捉えすぎ?)

相手FWは最前線から敢えて中島のところまで下がって削りにきたのだ。相当に怒っていたはずだ。それはパラグアイ選手自身がFWとして十分なプレーができていないというフラストレーションもあったに違いない。その心境であれを見せられたら激高するのは当然だ。歴史的にみて南米では「日本人(ハポネ)=サッカーの下手な奴ら」とバカにされる存在であったし、そういう奴らにやり返された気持ちにもなったかもしれない。とにかく、カチンとさせたのだ。

実際、中島翔哉は相手監督がベタ褒めする程の存在感と力量を持っていた。

サッカーを文化として受け入れるとは?

これまで日本人をバカにしてきた奴らを見返したい。それは苦労をしてきた人間であればサッカー選手に限らず誰もが抱く気持ちだろう。中島にそんな気持ちがあったようには思えないが(どうかは分からない)、我々はそういうサッカーが積み重ねてきた歴史という大きな流れの中にいるということを知らないといけない。イングランドとアルゼンチンは過去のフォークランド紛争のことを覚えていて、今でもW杯で対戦する時にはその戦争の話が持ちだされる。

過去どういうことがあって今に至っているのか。そういうことを選手やクラブだけでなく、サポーターや国民が積み重ねていくことこそ、サッカーが文化として国に根付いていくということなのではないか?

そういった意味で今回の中島翔哉の行為と、それが結果的にもたらしたら論議というのはとても良いことだと思った。というか、必要なことだと思った。

相手へのリスペクト

昨今、我々は簡単に「Respect(リスペクト)」という言葉を多用してしまう。本当の意味でリスペクトを理解できていたならば、中島はどういったプレーをとっただろうか?我々サポーターはどういった反応をしただろうか?

まだまだ日本はサッカー後進国であることは言うまでもないが、個人としても未だ成熟しきれていない部分が多々ある。いま幸いなことに、イニエスタやトーレス、ポドルスキ、スサエタなど欧州で大活躍した選手が日本に来てくれている。彼らのファンタスティックなプレーを楽しむのは勿論だが、それだけでなく人間性も彼らから学びたい。イニエスタは人間としても素晴らしいと聞くじゃないか。我々サッカーファンも彼らから多くを学びたい。

個人がチームが強くなる過程でいっとき傲慢になってしまうこともあるかもしれないが、強さは他人を辱めたり貶めるようなものであってはならないと思う。勝負の世界にいるからこそ、本当の意味で相手をリスペクトできる人であって欲しいし、戦いの世界に直接は身を置いていないファン・サポーターにもそれが(リスペクトの気持ちが)伝わるように振る舞って欲しい。

強い日本代表というのが単に試合に勝つだけの人の集まりではなく、強い日本人の集まりであって欲しいと思う。

※サムネイル写真はsoccerdigestサイトからの引用です。



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