両親が離婚した。嘘みたいな理由で

結婚生活30周年を目前に、うちの両親は離婚した。
僕が想像する日本の平均的家庭と比べてみても、かなり仲の良い部類に入る夫婦だったと思う。おしどり偏差値60。息子のひいき目もあるかもしれないが、そのくらいのイメージだ。

だから、2人を知る人間でその離婚を予想した者は誰もいなかっただろうし、まさかそんな理由で離婚するとは誰も思っていなかっただろう。

うちの両親は、いちゃいちゃ夫婦でもなく、けんか夫婦でもなく、特別なところのない平凡な夫婦だった。そして彼らは平凡という名の幸福を全身で享受するタイプの結婚生活を送っていたように思える。変わったところと言えば、長男がニートになってフランス人と同棲を始めたくらいのものだろう。

その長男にしてニートという不届き者って一体誰なんだ?という方に向けて一文とリンクを差し挟んでおく。

それ、僕です。
 →http://rlee1984.hatenablog.com/entry/2014/03/27/065351
   日本人は友達付き合いが少ない!?  
 →http://rlee1984.hatenablog.com/entry/2014/03/15/031222
   彼女の母に言われたコトバ  
 →http://rlee1984.hatenablog.com/entry/2013/12/20/153409
   フランス人と同棲はじめた 
 →http://rlee1984.hatenablog.com/entry/2014/01/17/061551
   中学時代のコンプレックス

僕は、実家とあまり連絡を取らない。
仲が悪いというわけではなく、お世話になりっぱなしでどうしようもない息子なのだけれど、そういうタイプなので仕方がない。連絡と言えば、ふた月にいちどくらい、母から電話があるくらいだ。

その電話で、いつものように近況を聞かれ、大した返答をするでもなく答えたあと。
「そういえば、あんた。お父さんから聞いた?」
勿体ぶった口調で母が言った。
「え、なに?」
「母さんらな、離婚してん(笑)」
その言葉が持つ一般的なイメージとは裏腹に、母の声は楽しげだ。悪戯好きの子どもが、ご自慢の昆虫標本を披露するかのような声。

やれやれ。。。
この気持ちを、いったいどう表現すればいいだろう?
「うん、父さんからメールで、そういう感じのことを聞いた」
「そうか(笑) びっくりした?」
「まあ、聞いてたし」
驚かせたかったのに、という様子の母。離婚という初めての人生経験に、少しはしゃいでいるのだろう。…少し腹立たしい。その気持ちを説明したくて、僕はこの文章を書いている。

ここで、先に謝罪しておく。
うちの両親の離婚は世間一般のイメージとはだいぶかけ離れた実態を持つものであり、その離婚理由も滅多にない変わったものだ。おそらく今、この文章を読まれている方でその理由を当てられるという方は1人もいないだろう。期待された話とは違う展開になってガッカリされる方もいると思うので、先に謝っておく。ごめんなさい。

まず、両親の離婚理由を簡単に言う。
「面倒くさいから」だ。
あいそが尽きたとか子どもが成人しての中年クライシスとかそういうのじゃなく、「面倒くさいから」。具体的には、「姓(苗字)を変えるのが面倒くさいから」ということらしい。

詳しい事情を説明する。

母は鹿児島生まれの日本人だが、うちの父は尼崎生まれの在日韓国人2世だ。つまり父は生まれも育ちも日本だし日本語しか話せないのだけれど、国籍としては韓国だ。そのため、2人の結婚は、法的には国際結婚になっていた。だから婦別姓が認められていて、母は旧姓をそのまま使い続けていたのだ。

とはいえ、父は生まれも育ちも日本なので、韓国とそこまで縁があるわけでもない。そこで、父は帰化して日本国籍を取得することにした。

その結果、国際結婚だから適用されていた『夫婦別姓』が認められなくなり、結婚30周年を前にした父母のどちらかが改姓する必要が出てきたのだ。

「帰化しても夫婦別姓は維持できんじゃないの?」という、どっかしらから得た怪しげな情報を信じて1年にわたる帰化手続をしてきた父は、最後の戸籍登録の段で別姓維持がムリだと知って愕然としていた。

市役所からの帰り道、父はこう言った。
「じゃあ、仕方ないし離婚しようかな。母さんも手続きやら面倒くさくて困るやろし」
…おい! 
そう思って、やんわりと咎めてみる。
「そんな簡単に離婚とか言うと、母さん怒るんちゃう?」
「そうかなあ?まあ、話してみるわ」

しかし、僕の予想は外れた。どうやら父が正しかったようで、1週間後に父から「離婚することになった」とメールが届き、その数日後に母から「離婚してん(笑)」と電話が来たのだ。

どうやら父母は、銀行やら税務署やら職場やらにいちいち苗字を変更届けするのが「面倒くさすぎる」と合意したらしい。


とはいえ、彼らの生活は何ひとつ変わらない。
これまでと同じように、6畳の和室に布団を並べて寝ているようだ。法的にはもう夫婦ではないので、同棲カップルと呼ぶべきなのだろうか? しかし、それも少し腹立たしい。やれやれ、としか言いようのない僕の感情はここに起因する。母が、ちょっと面白いことになりました的な感じで「離婚してん(笑)」と言ってくるのは、ドロドロ離婚劇を経験したひとに対して失礼な惚気なんじゃないのか?とも思ったからだ。親の惚気など聞きたくない。下手すれば舌打ちものである。

しかし僕自身が、はてな村民を憤死させかねない惚気記事を量産しているらしいので、他人のことは言えないのかもしれない。

日本も今や、3組に1組は離婚しているらしいが、、同居離婚(と呼ぶべきか?)はどのくらいあるのだろう?

選択的夫婦別姓、早く認めちゃえばいいのに。

そしたら、うちの両親は離婚しなくて済んで、僕の舌打ち的なやれやれ感情が引き出されることもなかったのにと思う。

やれやれ。

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