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かつてないほど強い、サッカー日本代表。だからこそ… (オーストラリア戦 感想)

(選手の敬称略でおとどけします)

ワールドカップアジア予選オーストラリア戦。は〜、なんとか2対1で勝利しましたね。


ほんとうに大変な試合でした…。

ちょっと感想を書きたくなったので、キーボードを打っています。


柴崎、メンタル強すぎワロタ

前節のサウジアラビア戦で”戦犯”となった中盤の柴崎選手。

あれは戦犯と言われてもしょうがないミスでした。それ以前に流れの中でのプレーでミスが多く、全体的に出来が悪かった。サウジアラビア戦での柴崎選手の評価は妥当だと言わざるを得ないし、オーストラリア戦で先発から外したのもうなづけます。


オーストラリア戦の後半、同点に追いつかれてから、日本はスピードのあるフォワードを投入しました。(大迫選手の怪我もあるけど)


その時、「あぁ、ここで柴崎が使えればなぁ…」とわたしの頭によぎる。

終盤、足が止まって広大なスペースができている状態で、足の早いフォワード。


それなら、柴崎選手のパス能力が十二分に活かせます。しかし前節のミスで、完全にメンタルがやられていると思いました。


サッカーにおいてメンタルは極めて重要です。

そのつど、そのつど、コンマ0秒で新しい判断と決断を繰り返すサッカーにおいて、頭と心にストレスがかかった状態だと、判断が遅くなります。


日本の先制点の場面。

南野選手のクロスが僅かに相手選手の足に当たっています。っいうことはコンマ数秒、判断が遅れていたらカットされていた、もしくはボールの軌道が著しくズレて、田中選手にまで通らなかったはずです。


みなさんも夕方に嫌な仕事があると、日中の仕事も集中できない、みたいな経験はありませんか?(笑)

ストレスがメンタルを悪化させ、判断を鈍らせるとは、そんな状況に似ています。


柴崎選手には甚大なストレスが掛かっていることが想像できました。

正直、スペインの2部に所属で29歳という年齢を考えても、もし日本がこのままワールドカップに出られなかったら、引退するんじゃないかな?と個人的には思ったほどです。

それだけ大きな(わかりやすい)ミスでした。


しかし!


森保監督は柴崎を投入!残り10分ないぐらいのプレー時間だったので、ほとんどボールに触れませんでしたが、交代直後の84分。

そのワンプレーの精度にびっくり。


冨安→柴崎→浅野と繋いだシーン。

浅野をポストプレーに使い、柴崎はゴールに向かってナナメにランニングしました。

浅野が柴崎のランニングを察することができず、不発に終わりましたが、柴崎選手の判断の早さ、アグレッシブさは評価できるワンプレーでした。


柴崎がボールを保持したプレーはこれっきりでしたが、しかしわたしは「柴崎すげぇ…」ってなりました。

それはサッカー選手としてと言うより、「人として」というレベルです。


同点の84分。

あそこはリスクを取って、相手にとって危険なプレーにチャレンジするのが大事な局面です。つまり柴崎選手は「正しい判断」をした。これはメンタルが回復していなければできない判断だと思います。その意味で柴崎選手はすごいなと。

この10分は彼のキャリアにとっても大きな10分だったと思います。

「柴崎はまだ戦える」そう感じたワンプレーと10分間でした。

守田と田中碧の評価

そんな柴崎選手にとってかわって出場した感じなのが田中碧選手。先制点を叩き出し、シンデレボーイ的に評価を上げています。

そして川崎フロンターレでチームメイトだった守田選手。安定したプレーでチームに貢献しました。


しかし、点を取った田中碧選手と同点につながるファウルをした守田選手とでは、とうぜん田中選手をより評価する論調が目につきます。

しかし流れの中での「ミスの少なさ」を見ると、守田選手のほうが良かったと思います。田中選手は少なくとも1回、危険なボールロストがありました。

また守田選手のファウルは、その前の段階で相手のサイドバックをドフリーにしてしまった長友選手のミスです。(本人ものちの取材で言っていたみたい)あるいはラインが低すぎた。

むしろあのファウルはペナルティエリア外、イエローカードで済ませたことを考えれば守田選手はファインプレイだったとも言えます。


田中碧選手は才能あふれる選手ですが、オリンピックで勝てていない(チームを勝たせることができなかった)ことを考えても、過剰な期待は本人のためにならない気がします。

なのでミッドフィルダーの序列は遠藤→守田→田中碧→柴崎、というのが現状ではないでしょうか。


余談ですが、これを踏まえると次のアフェーでのオーストラリア戦では、今回の4−3−3をベースに、田中碧→板倉、長友→中山とし、守備重視で引き分け狙いが妥当な気がします。(っと言うかアフェーでオーストラリアに勝ったことあったっけ?)

日本のサッカー(選手)は強くなった

しかし、選手の選択肢が多いこの状況。ずっとサッカーを追いかけてきて、初めてです。


一昔前なら、どんなに調子悪くても柴崎を外すことは考えられなかった。昔は意地でも中田英や中村俊輔を招集していましたよね(笑)

前線には若き久保建英に堂安律、三笘薫。

古橋もオナイウもリーグでちゃんと点を取っているし、招集外には鈴木優磨も。


中盤にだって中山雄太とか、まだまだ使ってみたい選手いるし…。

こんな、よりどりみどり。冷静に考えると、ほんとビックリしちゃいます。

選手のレベルは着実に上がっていると思います。


アジア二次予選。

日本は5点とか6点とかとって、相手を叩きのめしました。これも今まであまりなかった現象です。

相手に合わせてしまう傾向のあった日本選手が、どんな相手でもヨーロッパー基準の高いレベルのプレーで相手に挑んだ結果だと思います。

これはとても評価できることだと思います。

そしてまた相手からしても、日本を通してヨーロッパを見ることができるので、長い目で見ると決して無駄な敗戦ではないでしょう。

「リバプール所属の、全力の南野拓実」と対戦した選手が指導者となり、そのレベルを後輩に伝えていく。そうやって長い時間をかけてアジア全体のレベルが上がっていくのだと思います。

監督の評価

さてそんな選手たちを従える森保監督は、今までの監督よりもさらに腕が試されます。

ある意味で「中田英頼み」みたいな方が、選考は楽ですよね。しかし前述の通り、今は世界レベルで戦える選手がゴロゴロいる。


そしてまた、交代枠が5人になってしまいました。

それでなくても重要な監督の手腕が勝敗を決定づける割合が、極めて上がっています。

事実EUROを制したイタリア代表で、マンチーニ監督はかなりまんべんなく選手を使って、歴史的な連勝街道をひた走り優勝しました。


チームの半分が交代できるわけですから、野球の先発→リリーフみたいに、あらかじめ交代を前提した戦略が成立します。

「おまえは前半までな、だから死ぬ気ではしれ」みたいな選手を少なくともふたりは想定できる。


今は一昔前より、監督次第で勝敗が大きく左右される状況です。

そう思ったとき、わたしは森保監督にはちょっと不満をいだいていますね。


森保監督の批判で合点がいくのは「最初の作戦を跳ね返されたとき、さらなる打開策をこうじることができない」ということです。

今回のオーストラリア戦は「最初の作戦」がばっちりハマりました。スリートップが相手の最終ラインにきっちりプレスを掛けて、ロングボールの精度を悪化させる。精度の悪いボールをきっちり競り合い、セカンドボールをモノにする。

序盤の20分間などはかなりハマっていたように見えます。


攻撃ではサイドバックが大きく開き、ワイドに展開していました。

前半は長友選手がタッチライン際でフリーでボールを受けることが、5回くらいあったように思います。


物足りないと感じたひとつは、前半の日本がボールを持たされている時です。

オーストラリアは日本の最終ラインにあまりプレッシャーをかけていないように見えました。これは「ロングボールの蹴り合い」に持ち込みたい意図が透けて見えます。

日本はそれに付き合うことなく、よく我慢しましたが、つなぎながら効果的な攻撃を仕掛けられる場面はほとんどありませんでした。もうすこし「遅攻」の場面で相手をどう崩すか、意図があっても良かった気がします。


もうひとつの不満点は後半。

後半になって、オーストラリアは長友選手の上がりをケアしてきているように見えました。しかしそうなると、中央にスペースができます。

しかし日本は中央のエリアを上手く使うことができませんでした。思い返してみてもバイタルエリア(ペナルティエリアのすこし手前)でプレーしていた記憶はほとんどなありません。つまり、良くいえば守備から攻撃につなげる戦略ですが、悪く言えば相手のミス待ちとも言える。


かつて日本代表を指揮したオシム監督の言葉に「勝てるかどうか?相手にきいてくれ」というのがあります。(細かい言い回しは違うかも)

これはサッカーが相対的なスポーツであることを意味しています。


こっちが弱くても、相手がもっと弱ければ勝てる。

逆にこっちが強くても、相手がもっと強ければ負ける。


当たり前のようですが、サッカーでは90分間リアルタイムで相手が強くなったり、弱くなったりしているわけです。だからその都度、こっちも効果的な戦略を繰り返していかなければならない。

まぁ、それは理想論ですが、ヨーロッパのトップリーグとかチャンピオンズリーグを見ていると、ひとりの交代で劇的にゲームを支配しだすような名采配にときどき出くわすんですよね。


今回のオーストラリア戦でも、森保監督の「最初の作戦を跳ね返されたとき、さらなる打開策をこうじることができない」という問題は、改善されていないように見えました。

交代がいつもより早かったのは良かったと思うのですが、大迫選手の怪我からのなし崩し的な交代でもありますし、正当な評価がむずかしい。


チームがピンチのときに知恵を授けるのが監督です。

二の矢、三の矢が用意されているかどうかは、特に「最初の作戦」が発揮しづらいアウェーにおいて重要でしょう。


思い返せば、オリンピックのニュージーランド戦からケチがつき始めました。正直、わたしも「ぜんぜん勝てる」と思っていましたけど(笑)、ニュージーランドは信じられないほど高いクオリティで「日本対策」をこうじてきました。

結果はPKで勝ちましたけど、内容的には負けだと思います。


そしてニュージーランドがアジアに示した「日本対策」を放置したまま、日本はアジア最終予選のオマーン戦に突入してしまったように見えます。

それは監督の責任であり、その失敗は重い。


っというわけで、森保監督自身のさらなる成長にも期待しいところです。

柴崎選手の起用のように、選手のメンタルを見切る力は日本人ならではだと思います。

日本人監督のメリット、森保監督のメリットはあると思うので、やっぱり監督自身が実力アップするのが理想だと。(それはそれで大変だけど…)


っというわけで、言いたいこと言ってすっきりしました(笑)


次の試合も楽しみです。




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