アヒルと鴨と全裸のおじさん

今年、覚えてる心温まるニュースっていうと、モト冬樹が弱ったスズメを保護して鳥獣保護法に触れたことくらいしかなかったんだけど、年末の気配がし始めてきたところで滑り込んできたな。仙台駅のコインロッカーに全裸のおじさん。

仙台は一応地元なので、「駅1階のタクシープール近くにある上下2段のコインロッカーの上段」(河北新報)っていうロケーションも、かなりリアルに想像がつく。たぶんあそこだ。で、開けたら全裸のおじさんが入ってたと。

「タイムスリップだ!」って、一瞬興奮したんだけど、よくよく読むとロッカーの近くに服が落ちてたらしいので、これはぬか喜び。ただ、その可能性を除いても、やっぱり魅力的なニュースだ。記事からわかる情報を整理しよう。

・通報は午前9時半頃で、駅員さんが「裸の男性がコインロッカーに入っている」と
・お巡りさんが駆けつけたら全裸の男性が背中を向けて体育座りでロッカーに入ってた
・男性は市内在住の40代で、低体温症で病院へ

前段階として、誰かがロッカー使おうとしたら全裸がいて、駅員さんに知らせたのか、脱ぎ捨てられた衣服を不審に思った駅員さんがロッカーを開けて発見したのかって問題もある。個人的な希望としては前者がいいけど、まあ、これは置いておこう。とにかく、最小限の情報に味わいが凝縮されてる。出汁が濃い。

駅員さんの通報でお巡りさんが駆けつけてもなお、ロッカーに入ってたこと、背中を向けていたこと、午前9時半に低体温症の状態だったことから察するに、11月の仙台の夜に、本当に、ただ、全裸になって、コインロッカーに入って、寝たまま夜を明かしちゃったんだろう。脱いじゃう、かつ狭いところに入りたくなる酒癖なのか、コインロッカーを家の風呂だと思ったのか、それ以外の何かか。いずれにせよ、仙台でよかった。もうちょい北なら深刻なニュースになってたかもしれない。

仙台駅とコインロッカーといえば、伊坂幸太郎著「アヒルと鴨のコインロッカー」があるので、伊坂先生にはぜひともこれをモチーフに次回作を執筆してほしい。コインロッカーを開けたら全裸のおじさんが寝てる可能性もあるし、モト冬樹がスズメを助けたら法に触れる可能性もある。それ自体がロマンチックじゃないか。世界が想像を超えた方向に分岐し得ることを感じさせてくれるのが、いいニュースだ。それをただそのまま楽しみたいし、そのためにも、おじさんには是非とも無事回復していただきたい。そうすれば、年末には聖地巡礼ができる。楽しみだ。

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