その日だった
そうは言っても毎月1日は映画の日であるからして、「キャプテン・マーベル」を観るべく開場と同時に劇場に入って着席し、眠気予防の仮眠のために目を閉じていた。TOHOシネマズの場合、予告編の前に流れる映画情報番組のナビゲーター・山崎紘菜ちゃんの声を聞きながら夢と現実の間を行ったり来たり。これももう何年も続く習慣になってるんだが、今回はいつもと違う声が聞こえてきた。
思わず目を開けると、スクリーンには浜辺美波ちゃんが映っていた。膵臓を食べたがってる(食べたがられてるだったかも)のも観たし、すごく勢いのある俳優さんだ。その勢いでこの4月からはここのナビゲーターも務めます、ってのも十分考えられるが、焦ってはいけない。前にも一度こういうことがあってかなり動揺したが、山崎紘菜ちゃんは挨拶もなしにいきなり姿を消すような不義理はしないのである。おれ寝なきゃいけないから。すまんね。
余裕ぶって夢の世界へ。が、向こう側に行きかけたところで、今度はとても聞き慣れた声によって引きずり出された。そこには後輩とともに映る山崎紘菜ちゃんの姿があった。
「ナビゲーター交替の挨拶だ……!」
直感的にそう思った。ついにこの日が来てしまった。と、思った次の瞬間、浜辺美波ちゃんが言った。
「エイプリルフールでしたー!」
騙された。ものすごくきれいに騙された。後から考えれば、たまにしか映画館に来ない人にとっては全くなんのこっちゃわかんない冗談だろうが、こっちゃあもう完全に顎の骨砕かれた。
昨日の深夜、明けて月曜発売の週刊プレイボーイをコンビニで買ってきた。表紙と巻頭グラビアは武田玲奈ちゃんである。煽りの文句は「ラストグラビア」だった。
そうか、まあ元々モデルと掛け持ちだし、役者仕事も増えてきてるんだろうし、寂しいけどありがちな流れだ。「今までありがとう」、「(略)…楽しい思い出です」、「これからは女優として…(略)」なんていう言葉とともにページをめくって行くと最後に、
「ウソで〜す!今日は4月1日、エイプリルフールでした!!(笑)ごめんなさい♡」
その約10時間後に映画館。1日に2度も、こんなにきれいに、しかもなんとも似た形で騙されたエイプリルフールは人生初だった。なんだろうな、この非対称なイチャつき。情けなくも少しだけ嬉しい。歴史的な日だった。
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