偶のインドは大抵すごい

新しく出来たアップリンク吉祥寺の何気に有り難いとこは、ロビーに座るとこがたくさんあることだ。作品の面白さに関係なく映画鑑賞中に高確率で眠気が襲ってくる体質と戦う身として。上映20分前に着けば、外で10分、入場後に10分の仮眠ができる。「バジュランギおじさんと、小さな迷子」は上映時間2時間半を超えるインド映画だったが、こういう作品にも果敢に挑める。

さて、まずはタイトル通り、迷子が迷子になる。バカみたいな文章だ。じゃあ、次はおじさんだと。どうやって出てくんだろうかと思ったら、もう町の群衆を引き連れて歌うの、踊るの。どうやらこの真ん中で踊ってる体格のいい男前がおじさんらしい。自分がインド映画に抱いてる稚拙な先入観「とりあえず踊る」を、そのまんま。直球過ぎてやられる。

とは言え、ただ楽しく歌って踊るだけでもない。さっき「迷子が迷子になる」で済ませた例の迷子、これがパキスタン人の女の子で、さらに口がきけない。この子を「力が強い」、「正直」が取り柄のおじさんが、お互いに核兵器作っちゃうくらいの緊張関係にあるインドとパキスタンの国境を越えて家に送り届けるっていう。

主人公はマジで一切嘘が付けない上、よっぽどのことがない限り暴力も振るわない。熱い台詞を大声で言ったりもしない。映画としても基本はコメディで、あとは要所々々で歌って踊って、アクションを披露する。これで国境越えてパキスタン行っちゃう。デリケートな事情を含んだゴリゴリの美談を、祭りのテンションで、ふんどし一丁で、丸太で正門をぶち破るみたいに成立させちゃう、しかも超ヒット(インド映画の世界興行成績歴代3位)させちゃう、このエネルギー。単純に羨ましいと思った。

1つ残念なのは、自分がインドの文化にあまりに無知なもんで、劇中でたくさん描かれるインド国内での信仰の違いとか、パキスタンとの文化とか政治事情のギャップとか、その辺を何となくしかわからなかったことだ。詳しい人に話を聞きたい。さすがに2時間半、疲れてエンドロールで寝ちゃったけど、これは気持ちいいからよし。

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