未必のソイ

いつものスーパーでふと、「買ったことのないものを買ってみよう」と思い立った。考えてみれば、商品棚に陳列された商品の数々、ほとんど買ったことがないものばっかりだ。当たり前である。行きつけのスーパーでも、購入したことのある商品は全体の1%にも満たないだろう。ものすごい数の未知の商品に取り囲まれながら、日々買い物してるわけだ。

何か買ったことのないものはないだろうか。いや、そこらじゅうにあるっつってんだけど、なんていうかその中でも「これだ!」というものを見つけたい。普段の自分では絶対に選択しない、見向きもしないようなものを。野菜、肉、鮮魚、酒、乾物、乳製品、冷凍食品、調味料など、売り場を転々とした。

もちろんわんさかある未知の商品たち。それだけに、選択肢が多すぎてなかなかひとつに決まらない。なんか疲れた。そうだ、だからこそ普段、これらには目を向けてないんだ。すべての選択肢と常に向き合ってたら、心も身体も保たない。スーパー行く事自体が嫌になる。それはよくわかった。でも、せっかく思い立ったんだから何か買って帰りたい。

そんなタイミングで、お菓子売り場のスナック菓子の隣、さきイカとかナッツなんかが置いてあるおつまみ系のコーナーに差し掛かった。でも、こっち系は割りと普段からお世話になってるしなあ、と思っていたら、それが目に入った。「ソイジャーキー」。肉の代わりに大豆で作ったジャーキー。こちとらベジタリアンでもなければダイエットもしてない。肉食いたきゃ肉を食う。絶対買わないやつだ。これだ。これにしよう。

噛むと、めちゃくちゃスパイシーな豆乳みたいな味がした。ああ、198円…。ビーフジャーキー買いたかった。一体何をやってんだ、おれは。しかし、後悔はしてない。いいんだ、今回はこれで。夜中、満たされない思いを解消しにほろ酔いでいつものコンビニに行った。おつまみ系コーナーを物色していると、見覚えのある色味のパッケージがあった。「ソイジャーキー」。お前、ここにもいたのか。

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