へレディタリー/尻込

「へレディタリー/継承」がとにかく面白そうだが、観られない。ものすごく怖そうだからだ。予告編や、漏れ聞こえてくる評判に好奇心を掻き立てられるものの、やっぱ怖そうだし、そしてその怖さは面白さと不可分な感じだし、気になるけどやっぱ怖いけど気になる。

勇気を出して観に行った「クワイエット・プレイス」は結局何とかだいじょぶだったが、その理由ははっきりしてる。いや、怖かったけど。恐怖の対象が人間じゃなかった。怪物は怪物でもちろん恐ろしいものの、そもそも言葉が通じないのも、心が通わないのも、行動が理解不能なのも当たり前の存在だ。だから常に「ま、怪物だし」って気持ちが脳の奥底にある。

これが人間、もしくは人間の形をしてると、「ああ、こいつ違うんだ…」とわかる瞬間の恐怖がある。これが怖い。「へレディタリー/継承」は予告観る限りじゃあ、少なくとも怪物に襲われてどうこうってんじゃなさそうだし、そこが面白そうだし、怖くて無理だ。観て帰ってきてからの日常生活が怖そうだ。風呂とか、トイレとか、洗面所とか。

M・ナイト・シャマランの「ヴィジット」(これがホラー映画の中で特別怖い方かというと、きっとそうでもないと思う)を観て一週間、電気を消して眠れなくなったレベルの腑抜けとしては、勇気を出しちゃって「へレディタリー/継承」観ちゃった場合、その後の生活に大きな支障をきたすことが予想される。恐怖に慄く日々を送りたくはない。

なんかこう、真っ昼間に青空上映会とかやってくれないかと思うんだけど、それもやっぱ帰ってからが辛いな。なんかこう、劇場で手をつなぎながら一緒に鑑賞してくれて、その後も恐怖心が消えるまでおれを家に泊めて毎晩添い寝してくれる、限りなく優香もしくはチョン・ユミに近い何者かが現れないものか。ただそれはそれで、その都合の良すぎる「何者か」は、よく考えると怖い。どうしたらいいんだ。誰か「親指へレディタリー/継承」作ってくれ。

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