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絆のアリルはラストアクションヒーローの夢をみるか~または私は90年代ロボットアニメをどのように愛したか~

はじめに


絆のアリルおもしろかったねーーー。

絆のアリル(Amazon Video)

おもしろかったです。序盤は不安も大きかったんですが無事きっちり24話走りきりました。楽しいアニメだった。
こんなに好きになった作品は久しぶりだったのと、その理由が見えてオワーってなったので、まとめます。

作品自体の良さは自明なので特に語りません。見てね。

番組玩具は魔法のチケット

かつて勇者シリーズ・エルドランシリーズといったロボットアニメ群がありました。これらの主役ロボたちは玩具が出ます。ストーリーが進み強化合体します。玩具も出ます。クリスマスにはどでかい商品が出るのでねだって買ってもらいます。
これらロボット玩具は劇中で毎週変形合体し毎週必殺技で悪者を撃破します。なんならOPでも変形合体必殺技あるもんな毎回2回ずつ見てるようなもんだ。
で、この変形合体は玩具の変形合体と同じ手順で描かれるんですよね。バリバリにかっこいい作画で。
このときぼくの持ってる玩具が「同じ手順で変形合体する」作中のロボと一致するんですよ。そして玩具を握っている触感が作品の世界に入り込み、アニメのロボを現実的な触感をもって認識するんですね。また逆にアニメのかっこいい作画、動き、音、セリフなどが玩具のロボに定着し、空想の視聴覚として起き上がってきます。

この玩具による作品への没入、そして作品の玩具への定着を専門用語で「魔法のチケット」と言います。いま考えました。私が考えました。

※映画好きの少年が「魔法のチケット」で映画の中に入り込み、シュワちゃん演じるジャックスレイターと一緒に映画のなかで大冒険をする映画「ラスト・アクション・ヒーロー」より。

絆のアリルのリアリティのあるバーチャル

絆のアリルのライブシーン(特に序盤)はずっと変なチープさがあります。キャラクターモデルはハイエンドで動きもなめらかながら、プリレンダされていないような、つまりVRCでアバターが動いているような雰囲気。カメラワークもあまり頑張れてないというか、VRCにカメラを置いてパンしたり切り替えたりしてるような、言ってしまえばぎこちない演出。
これが当初心配していた点なんですけど、見進めていくとああこれでいいんだ、これがいいんだとなりました。
絆のアリルの舞台は基本的にバーチャル空間で、ライブパフォーマンスの視聴数を競うということ自体もバーチャル空間内でバーチャル空間の動画を見て行われているんですよね。
だから「VRCで頑張ってるみたい」って「リアルなバーチャル」足り得るんですよ。
これは「チープだから良い」という話ではなく、作品に没入する魔法のチケットになるためにできることを全てやっているから良い、という話です。
現実感のあるバーチャル空間であることが、バーチャル空間のアニメの現実と空想の境界をあやふやにしていきます。

絆のアリルのバーチャルなリアル

絆のアリルのメインキャラたちは実際にVtuber活動をしています。「玩具を売るためのアニメ」ならぬ「動画を見てもらうためのアニメ」という側面を持っているわけです。動画の再生数が収益につながるという点で玩具の販売と同じであることは説明するまでもありません。

劇中同様、歌企画があったり定期公演があったりゲームやったりゆるい企画をしたりかなり活発に活動されてます。
これアニメのキャラクターがVtuberやってみました、とは一線を画しています。なぜならミラクたちは劇中と同じことをしているわけですから、絆のアリルのキャラクターたちとしてはこのあり方こそがリアルなんですよね。

リアルなバーチャルとバーチャルなリアル。この両輪で絆のアリルの空想と現実の境界はあやふやになり、僕らは魔法のチケットを持って絆のアリルの世界に入り込むことができるんですよ。
それとももしかしたら絆のアリルが魔法のチケットを持って現実に出てこようとしてるのかもしれない。
めをさませ ぼくらのせかいが

物語の世界の終わりと終わらない現実の世界

アニメに限らず物語って最終的には空想の世界で、僕らは現実の人間なのでいつまでも空想に浸っていないで現実を生きなくてはいけない。それでも空想は現実を生きる助けになってくれる。そういう付き合い方をしていかざるを得ません。でも結局物語って終わっちゃうし現実はそう簡単に終わらないんですよね。
母港のようにたまに戻って立ち寄るような好きな作品があっても、終わってしまった物語を噛み続けていると味が少しずつ薄くなっていくもので。
小さい頃はまだ手元の玩具で遊ぶことで世界を続けることができたんですよ。玩具は終わらない現実の方にあるので。新番組が始まっても前番組・前々番組の玩具も一緒にして遊び続けていましたからね。ただ大人になってしまうといつまでも玩具遊びしているわけにはいかな  あー  ずっと東方同人誌つくってるから説得力ないなまあいいか。
絆のアリルも終わらない現実の方にキャラクターを置いてくれているので彼女たちの活動が続く限り空想の世界も終わらないでしょう。終わらない空想の世界は現実を生きるための無限の力になってくれます。
あ、これラストアクションヒーローじゃなくてネバーエンディングストーリーで話したほうが綺麗にまとまったかもしれん。ははは。

そしていつか終わってしまうときが来ても、大切なものは自分の中に残ってるってミラクも言ってたしな。

現実と空想を結ぶ素敵な作品に出会えたというお話でした。

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