モノロギア

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ノート

第8話 レティシア

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 寮の部屋で朝食を済ませ、支給された新聞を読んでいると扉がノックされた。先生が紹介すると言ってくれていたフェローが来たのだろう。僕は鍵を開け、

「えっ――」

 ……迎え入れるつもりだったのが、廊下に立っていた人物を目の当たりにして絶句した。僕のためらいが背後まで伝わったのか、いや伝わっていないのか、ヴォルトが「ふぉしたー?」とパンを頬張りながら尋ねてくる。その

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第7話 トリニティ学区

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 トリニティの学生は不良が多い。
 全寮制の男子校で、世間では禁欲的な印象で通っている。でも実際は違う。親元を離れた貴族の御曹司は社交界を知り尽くしているため、夜の遊びもお手のものだ。彼らはこの時間帯になるとお気に入りの後輩を引き連れ、きらびやかな街へ繰り出していく。
 おかげでヴォルトと僕が二人で中庭を歩いていても、ああどこかへ抜け出すのだなと勝手に納得されて声

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第6話 鉄の国

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 朝靄につつまれて、荘厳な赤レンガ橋の前に立ちつくした。
 ヴォルトの案内は見事なものだった。地図も持たずに、太陽の高さと植生だけを頼りに道を選んでいく勘のよさは圧巻だった。ただのバカではなかったらしい。何もなければ惚れ惚れするような仕事ぶりだった。
 ……何もなければ。
 気がかりだったのは、クルムホルムのあの言葉だ。

 ――誰でもいいので、7人見殺しに――

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第5話 道づれ

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 死ねなかった。
 あんな暗闇を、まして狼の出る谷を、血のにおいを漂わせて歩いていればすぐだと思ったのに。夜が明けて、光が谷を照らしだして愕然とした。
 道がある。いいやそれだけではない。およそ想像できた未来の中では最悪とも思える光景が広がっていた。
 “それ”は、ちょうど僕の立っている足下から始まっていた。
 谷底になぜこんなものがある。なめらかで美しい凹凸を備

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