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あんかけスパを語ってみる


あんかけスパって何?

ソースの特徴

あんかけスパは注目の名古屋メシのひとつとして、もっか絶賛売り出し中(?)の名古屋B級グルメです。
その「あん」はうっすらトマトソース風味で、胡椒辛いのが特徴。

全くご存知ない方にあえて説明する場合…言いづらい感もありつつ…一般的なミートソースを湯でのばして、ひき肉を取り去り、味醂とか醤油とか和風な調味料も加えつつ、胡椒をたっぷり振って、片栗粉でトロミを付けた。みたいな感じです。

もちろん、各店工夫を凝らし、時間をかけてソース作りをして、それぞれの特徴を出しているので、上記の様な作り方をしている訳ではありません。
あくまで「全くご存知ない方」に味の想像をしてもらうための説明です。誤解なき様。

麺の特徴

「パスタ」は径が1.9㎜以上、2.2㎜程度の太めのスパゲッティを使用します。基本茹で置きし、注文が入ってからフライパンで炒めて温めます。

その茹で置きの仕方も各店における秘伝(?)があり、前日に茹でて冷蔵庫で一晩寝かせる等々、技があるそうですよ。

「アルデンテ」などという単語とはきっぱりと無縁。そしてフライパンで炒めるので、油をまとっております。
グラム数(200g、300g)で注文します。

トッピング

アレンジは無限大なのですが、基本メニューがいくつかパターンがあり、「ミラネーゼ」「カントリー」など特徴あるメニュー名となっています。(店により違うのでご注意ください)

ミラネーゼは懐かしの赤ウインナー(縦に4ツ〜8ツ割)炒めと茹で卵のみじん切りをのせたもの。
カントリーはミラネーゼに玉ねぎ(薄切り)とピーマン、缶詰のスライスマッシュルームなど野菜が加わります。ミラネーゼ+カントリーということでミラカンと呼ばれる場合もあります。(店による)

トッピングできる具材はバラエティに富んでいます。
コロッケ、カニクリームコロッケ、エビフライや白身魚などのフライ類(シーズンによってはカキフライ)。

ピカタと呼ばれる卵液をまぶして焼いた物。豚ピカタ(黄金焼)がポピュラーかな。(こちらもシーズンによってはカキのピカタもあります。)

牡蠣のピカタ「カッキー」というメニュー名でした。



ソテーと呼ばれる炒め物。ベーコンとキャベツ(ベーコンソテー略してベコソ)や、シーフードミックス的な小エビとイカやアサリなど(バイキングというメニュー名になっている店も)こちらも種類豊富。

ソテー系の「ポパイ」ほうれん草メイン

ガッツリ系メニューのお店だと、大きなフライドチキンがどんと乗ったり、ハンバーグも乗せたりできます。

フライドチキンとタマネギソテーたっぷり

和風な感じのトッピングもあります。ゲソ炒め(醤油味だったんじゃないかな? 現在閉店したお店)や天ぷら(玉ねぎやにんじんのかき揚げ)、アジフライなどなど。これが意外に合うんですよ。

注文の仕方

麺の量を選び、基本メニュー名、そしてさらにプラスしたいトッピングを選びます。
例〉麺200gでベコソにコロッケ(個数を指定できる場合もある)
皿には麺が盛られ、その裾野にあんかけソースを掛け回し、その頂上にトッピングがのせられて提供されます。

サイドメニューなど

小鉢のキャベツ千切り(申し訳程度のにんじん千切り、ピーマンの薄切りを含む場合あり)のサラダ、(おろしにんじん等のドレッシングがすでにかかっている)が無料で付いて来ます。ポテトサラダなどが添えられている場合もあります。
席に着いた途端、グラスの水とともにサラダの小鉢が供されるお店も。

その日のおすすめスパ(もちろんあんかけ)と、お子様ランチ風にカップに詰めて伏せて盛ったご飯と、上記のサラダがワンプレートにのったランチサービスメニューがある場合も。

ベコソにコロッケ サイドのサラダ


あんかけスパは名古屋のサラリーマンの文化だ!

「名古屋メシ」として売り出したい気持ちはわかるんだけど、安易なお店も増えています。
他地域から来て、初めて食べる人にあんかけスパについて語れる人は減っているんじゃないかなと思います。(絶滅危惧)

あんかけスパに初めて出会ったのは多分、新卒で勤めてすぐ。(30年以上前)
とある企業の1階喫茶コーナー(現在はありません)で、ご挨拶に行った先のベテランサラリーマンのおじさまとランチをご一緒しました。
その時のおじさまの注文が「ミラカン、コロッケのっけ」。「のっけ」ですよ、「のっけ」! 可愛いくないですか? キュンでした。そんな出会い。

それまでに家族であんかけスパを食べた記憶が全くないので、あんかけスパとは家族で食べに行くという物ではなかったみたいです。サラリーマンのランチとして生まれ、育っていたと言えそうです。
あんかけスパの誕生は1960年代だそうですので、私が出会った頃の「あんかけスパ文化」はまさに成熟期であったのだろうと想像します。

名古屋のサラリーマンランチの文化は多分「麺類食堂」に始まります。(私の偏見)
麺類食堂ではうどん、そば、きしめんなど麺を選び、赤(たまり醤油の出汁)、白(白だし)、味噌など出汁を選び、きつねや天ぷらなどのせる種物を選ぶ。
その上で、ご飯、ちょっとした小鉢や、コロッケやアジフライなどのおかずと合わせて日替わり定食として提供する。
お店側の毎日飽きずに通ってもらう工夫。通う人もいろいろ試して、自分のお気に入りの組み合わせを編み出します。

カレーのCoCo壱番屋も同様の方式ですね。ライスの量を選び、カレーソースの種類の辛さを選び、たくさんのトッピングを組み合わせて工夫する。
その日の腹具合に合わせて、自分オリジナルなメニューを考える楽しさ。

「あんかけスパ」とは1回食べて美味しいとか不味いとか言う様なメニューではありません。
幾度となくその道のプロ(?)みたいなおじさんと一緒に行って、もしくは店内をよく観察し「ほほう、そんな組み合わせが!」とそのオリジナリティを愛でて、次回の参考にする。
そしてトライアンドエラー。
そんなことを繰り返すうちに自分オリジナルのメニューが出来上がる。それが醍醐味!

お店によってソースの味は異なりますので、名古屋のおじさんにはそれぞれおすすめのお店があります。(たぶん)
そして行きついた「自分オリジナルメニュー」がきっとある。

もし「あんかけスパ」の真(まこと)を知りたければ、何人かのおじさんに弟子入りして、「その人のメニュー」を試してみたら良いと思います。
繰り返しになりますが、「あんかけスパに美味しいも不味いもない」。そこには文化と工夫、それぞれの人の行きついた「お気に入り」があるだけなのです。

新卒から4年間、さまざまな年齢層のサラリーマンとランチをご一緒して得た、私見に過ぎません。真面目に受け取らないでくださいませ。
是非「パスタはアルデンテ」とかの「べき」は外して、自由なあんかけスパの世界へ飛び込んでみてください。


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