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#0224【ただ恩義に報いるのみ(曹沫、専諸、聶政、史記の世界)】

1日1分歴史小話メールマガジン発行人の李です。 

今週は中国史記の世界から刺客列伝の五人を紹介。今日は、前回紹介した予譲の時代よりも前の人物を二人、後の人物を一人取り上げます。

(前回:No.223【士は己を知る者のために死す(予譲)】)

まず、曹沫(そうばつ)ですが、この人物は以前No.145で取り上げた【管仲(BC7世紀前半)】と同時代であり、魯(ろ)の国(現中国中央部に位置)の将軍でした。

No.145URL
https://note.mu/1minute_history/n/n8b1d5d4987d3

隣接している斉(せい)の国(現中国山東半島一帯の地域)と戦いました。三度剣を交えましたが敗北したため、魯の君主は斉の君主である桓公(かんこう、管仲の主君)と和睦するために領地を差し出すことを決めますが、曹沫については将軍の地位に留めました。

和睦の誓約書を魯の君主と斉の桓公が取り結ぼうとしていると曹沫は短剣をもって壇上にあがって桓公を脅迫して、斉が魯から奪った土地をすべて返す旨を約束させて誓約書を作らせました。

国に帰った桓公は、再度魯を攻めようとしますが、管仲が諫めます。「たとえ脅迫されたとはいえ、一度約束したことを破ることは義に反します。」桓公は怒りを鎮めて、曹沫が三度戦って失った土地全てを返してやったのです。

それから167年の時が流れて、次の専諸(せんしょ)が出てきます。

彼は以前No.147で紹介した【伍子胥(BC6世紀末‐BC5世紀初)】が仕える呉の王位を狙う闔閭(こうりょ)に紹介されます。

No.147URL
https://note.mu/1minute_history/n/nb5934846c7c7

当時の呉は王位継承が複雑化していました。闔閭の父は長男として王位に継ぎましたが、弟である四男に王位を継承させたいと考え、自分の死後は、次男・三男と王位を継承させました。

四男の番になると四男は王位を継ぎたくないと逃亡したため、三男の息子が王位を継ぎました。長男の長男である闔閭は「自分こそが正統な王位継承者だ」との思いをもっており、機会を伺っていたのです。

そのうち、呉の主力軍が遠征地で孤立する事態となると、闔閭は自分の従兄弟である現国王を自宅の酒宴に招きました。現国王も用心していましたが、魚料理の中に短剣を隠し、専諸が料理を出す際にその短剣を取り出して国王を殺しました。専諸はその場で国王の警護に殺されましたが、闔閭は自分の兵隊を屋敷に乱入させ、国王派を一掃して、自分が王位を継ぎます。

闔閭は専諸の息子を上卿に任じて厚く恩に報いました。

その後70余年が経って予譲の事件があり、そこから40余年が経って聶政(じょうせい)が登場します。

聶政は人を殺してしまったため、姉と老母を連れて故郷を離れて、家畜の屠殺をなりわいとして暮らしていました。

厳仲子という人物が、自分の仇を報じてくれる人物を探していると、ある人から聶政を薦められます。厳仲子は、黄金をもって聶政の下に訪れてお願いしますが、聶政は固辞します。

老母がなくなり、服喪期間が過ぎると聶政は「厳仲子は身分が高いにも関わらず、膝を曲げて私のところにやってきた。母が天寿を全うした以上は、おのれを知る者のために仕えよう」と決めて、彼の下に赴きます。そして、厳仲子の仇である人物を暗殺し、警護のものも数十人討ち果たすとみずから自分の面皮を剥いで、目玉をえぐり、腹を切って腸を掴みだして死にました。

襲撃された側は懸賞金をかけて身元を割り出そうとしますが、誰も名乗りでませんでした。そこに彼の姉がやってきてこれは私の弟であると叫ぶのです。周囲は、なぜわざわざ名乗りでるのかと姉を詰問します。

「士は己を知る者のために死すといいます。私が生きているために私をかばった弟のために、なぜ私が我が身の罰を恐れて、賢弟の名を滅ぼすことができましょうか。」

大声で三度天に叫ぶと姉も絶命して果てました。

各国の人はこの話を聞いて「聶政だけで事を成したのではない。この姉があり、そして厳仲子もよく人物を見抜いたからだ」と。

以上、本日の歴史小話でした!

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李東潤(りとんゆん)

1983年生まれ。青山学院高等部卒、慶應SFCでは学部優秀論文賞受賞。2006年住友商事に入社し、海外駐在を含めた実務経験を得て2017年独立。歴史を軸にしたコンテンツ作成を通して様々な「分かりにくい」を解消中。ベンチャー企業のバックオフィス業務や経営者のコーチングにも従事。

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