#0148【共に生きた軌跡(旧約聖書、サラの死と埋葬)】
1日1分歴史小話メールマガジン発行人の李です。
今週は、旧約聖書の物語シリーズをお送りします。
前回は【0135:ソドムの滅亡】ですが、時系列としては【0133:イサクの献納】の続きとなります。
<>内は旧約聖書からの引用を基に記述。
<サラの生涯は127年であった。これがサラの生きた年数である。>
年数の真偽はさておき、聖書に伝わる彼女が駆けた生涯はまさに激動といえるものでした。
元々、メソポタミア流域で平穏に暮らしていたのに、夫アブラハムが突然「引っ越しするぞ」と言ったと思いきや、はるばる地中海沿岸の現イスラエルの地にまで移動。
その地で異邦人、寄留者としての苦難の暮らしをします。
サラの苦労には見向きもせずに、夫は「神の命令」だからと一途に信仰に生きるわけです。
二人の間には子どもに恵まれず、仕方なしにお妾さんを許すとそのお妾さんがサラに対して不遜な態度を示す。
サラは遂に爆発。熟年離婚の危機を迎えるわけです。
そこで「神」が執り成して、サラにイサクという息子を授け、お妾さんとその子どもは別居。
ようやくサラにも心の平穏が訪れるかと思った矢先にイサクを献納しろとの神の命令を唯々諾々と聞こうとする夫。
これは神が試しただけでイサクは無事に帰ってきましたが、サラとしては死ぬ直前まで苦労が絶えなかったことでしょう。
127年という長寿も考えものです。
さて、サラが死ぬと
<アブラハムは、サラのために胸を打ち、嘆き悲しんだ。>
個人的には「遅い」というような気がしなくもないですが、生前にもっとサラに対して愛情表現をしておいた方がよかったのではないかと思ってしまいます。
アブラハムは寄留地の住民に対して、サラを埋葬することをお願いします。
<人々は、「最も良い墓地を選んでください。誰も埋葬を妨げません」と言います。
すると、アブラハムは「土地の代金を支払わせてください。」
人々「我々の一族立ち合いのもとで、土地は差し上げます。あなたは神に選ばれた方ですから。」
アブラハム「どうか、代金を払わせてください。そうすれば妻を埋葬することができます。」
人々「あの土地の代金をお支払いください。しかし、それがどれほどのことでしょうか。早速埋葬してください」
アブラハムは、代金を払い、そしてその場にいた人々全員の立ち合いのもとで土地の所有者となり、サラを埋葬しました。>
この寓意の意味するところは実に大きいと感じています。
相手の好意によって、イスラエルの地に土地を所有したのではありません。
それまで寄留者でしかなかったアブラハムが、対価の支払いという経済活動とその土地にいた全員の総意の元で土地の所有者となり、サラの埋葬を行ったのでした。
以上、本日の歴史小話でした!
(続き:No.149【アイデンティティを保つために(旧約聖書、イサクとリベカの結婚)】)
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