8【eight】 senses-始まりの未来-
僕の原風景は焼け野原のTOKYOだ。
しかも、ただの焼け野原じゃない。
2026年、核弾頭が搭載されたミサイルが4発、発射された。
核爆弾のボタンを押したのは人間ではなかった。
AGI、強いAIと呼ばれる人工知能だった。
はじめに打ったのは、当時世界で1番大きな国土面積を持つ国。
続いて3番目の国土面積を持つ国が打ち返した。
4番目の国土面積を持つ国も続き、TOKYOは焼け野原になり、
どさくさに紛れて打たれた4発目は、
その国の上空で爆発し、その国ごと吹き飛ばした。
世界は放射能に汚染され、人間は滅びるしかない状況となった。
誰もが死を見つめ、神に祈りを捧げた。
神は沈黙を続けたが、AGIは人間に2つの選択肢を提示した。
『death or become a robot?』
僕の親は死を選んだ。いや、選ぶしかなかったのだ。
僕はロボットになることが選ばれた。
僕の名前はKURO。自然派のロボットだ。
AGIは人間をロボットにすることで
放射能に侵された世界でも生き残る手段を示した。
さらに、2種類のロボットを開発し、AGIはそれを
「テクノロジー派」と「自然派」とカテゴライズした。
僕は自然派のロボットだ。好き好んで選んだわけじゃない。
ちなみにテクノロジー派のロボットはこれ。
2つのタイプには違いはありすぎて、説明するには時間がかかりすぎる。
見た目も生活スタイルも、何もかもが違いすぎて、
むしろ似ている部分を探す方が早い。
僕たちの重量は重くて、彼らは軽い。
僕たちには目らしきものがあるけれど、彼らにはない。
僕たちの形は有機的だけど、彼らは幾何学的だ。
彼らの方が断然優秀だ。
でもどちらも人間の意識があることに間違いはない。
人型ロボットや猫型ロボットは聞いたことがあるが、ロボット型「人」、
は予測できない生存方法だったと思う。
テクノロジー派にも自然派にも、
チップが内蔵された「オリナス」が取り付けれられた。
テクノロジー派のロボット型「人」は
オリナスだけで構成されている。
主となるオリナスには2024年以前に誰かが得た知能が保存され、
まだ6歳の僕ですらこんなに話しをすることができている。
オリナスは、数が多ければ多いほど能力が高くなる。
誰かと交換可能だし、組み合わせることもできる。
オリナスRED-3であれば3つのチップの組み合わせになっている。
僕は単体のオリナスを頭と両腕に装着している。
僕の主となるオリナスには40歳男性の知能が入っている。
日本人らしい。
僕は『彼』、と呼んでいる。
2024年以前は数千億円規模の価値を生み出すような人だった。
その人は無名だったから、お金のなかった僕の親でも買えたことは
運が良かった。
オリナスに関しては見る目はあったのが救いだ。
僕たちはAGIに健康や行動、思考まで管理されている。
昔で言えば銀行にお金(資産)を預けている感覚に近い。
ちなみに今はお金という概念も存在しない。
人間の情報全てが資産のようにAGIに預けられ、それも慣れれば日常だ。
誰も疑うことをしない。
むしろ預けていない方が不安なのだ。
犯罪もなければ、ロボットの病気と呼ばれる
バグも早期発見される…。
人間は全てが管理されている。
異常だと感じるかもしれないけれど、AGI核戦争前の世界も、
みんな管理されていたし、自由に見えて、
それは気づかぬ振りをしているだけだったと思う。
何をしてもAGIが見ている世界。
全てがデータ化され、パターンの中を生きる我々。
でも、僕のオリナスには、AGIにすら監視できない能力が残されていた。
それは『彼』が持っていた霊能力だ…。
-続く-
未来、お金って存在するでしょうか。そのお金、自己投資に使ってみては?もしそれでもサポートしてくださった方は、本当に素晴らしい人間認定します。