拡散的読書のすすめ『想像力から感想力へ』

拡散的思考という言葉は外山滋比古さんの「思考の整理学」という本で知りました。

一部引用しますと

拡散的思考、つまり、誤解をおそれず、タンジェントの方向に脱出しようとするエネルギーによって生み出される思考である
本を読むにしても、これまでは正解をひとつきめて、それに到達するのを目標とした。その場合、作者、筆者の意図というのを絶対的とすることで、容易に正解をつくりあげられる。それに向かって行われるのが収斂的読書である。
それに比して、自分の新しい解釈を創り出して行くのが、拡散的読書である。当然、著者の意図とも衝突するであろうが、そんなことにはひるまない。収斂派からは、誤読、誤解だと非難される。しかし、読みにおいて拡散作用は表現の生命を不朽にする絶対条件であることも忘れてはなるまい。


つまり、本の内容を正確に捉えられるようになるだけではなく、そこから自分なりの考えを生み出して発信せよということだと思います。

外国人に比べると日本人はそのような読書の仕方や思考の仕方が弱いのではないかということも著者は述べられていました。

ではどうしたらそのような思考ができるようになるか?
少し考えてみたのですが、私の結論としては、

全てのことにオリジナルの感想を持つ

これに尽きると思います。


読書に限ったことではないので映画でもテレビでもいいのですが、何か面白かった作品を見てそれを友達と話す時に「おもしろかった」で感想が終わることが多いと思います。

作品の一場面や良かった文章などを取り上げて「ココが良かった」という話は頻繁にされているように思います。

しかし、これは、内容を伝えているだけに等しいと思います。
つまり収斂的思考になっているように思えます。

例えるなら、小学生の読書感想文で、感想文ではなく内容紹介になってしまっているような感じです。

私が考える拡散的読書は「もし自分が主人公ならこうしただろうなあ」というような感想を持つことです。

人それぞれ考え方や価値観、嗜好は異なるので同じ文章を読んでもそこから同じことが生み出されるとは限らないと思います。

そしてその異なる感想を生み出す根源となった思考を表に出すこと、これこそが拡散的思考、または拡散的読書であると思います。


そのために本そのものの内容から大きく逸脱してしまっても構わないと思います。

ファンタジー小説から人生哲学を見出して信仰と生命について考えて持論を展開してもいいと思いますし、恋愛小説を読んで自分の過去の恋愛での行動と照らし合わせてみて反省したり次に活かすための考え方を構築してもいいと思います。

小説だけでなくても、AIに関する本から人間の言語能力や認識能力、知性とは何かという問いを立てて自分なりの答えを考えてもいいと思います。

曲解だと言われてもいいので誤解を恐れずに感想を持つことが大事だと思います。

なので私は読書をしたら感想を書くようにしています。
大半は収斂的な感想になってしまっていますが…


拡散的読書に必要なのはまさに想像力であると思います。

自分の新しい解釈を生み出すためには想像力が必要です。
そしてそれが創造性や独創性となっていくと思います。


また引用になりますが、

おもしろい文章というのが、ほとんどストーリーのあるものという日本の傾向は、抽象的理解力のひ弱さと表裏をなしている。どうしてもゴシップ的興味が氾濫する。


具体的な話というのは取っつきやすいんです。
数学の公式は文字で書かれるより具体的な数字を当てはめてみた方が分かりやすいように。

その具体的な一つの例の裏側にある大元の普遍的なルールみたいな部分を想像する能力、これこそが仮説を立てる力や問題設定力になると思います。


中学生や高校生の評論文が苦手な人こそ試して欲しいです。
評論文が苦手な人は、おそらく文章を楽しめてないように思います。
問題解き終わった後に「今回の評論は何の話だった?」と聞いて返ってくる答えは大体一言で済んでしまい、面白さが伝わりません。

クソつまらない評論文であっても、自分の大好きな本や映画を紹介するように説明できるくらい感想を持ちましょう。

どう面白かったのか。
そこから自分はどう考えたのか。

これを熱く語れるように読みましょう。

もちろんクソつまらない、試験問題を解くためだけの評論文において、です。

無理矢理でもいいと思います。
感想を持ちましょう。

拡散的思考による感想を持つためには文章を深く読み取ることも当然重要になってくるので、読解力も自然と向上します。

まずは何でもいいから感想を持ちましょう。


拡散的思考を鍛えるチャンスは意外と多く存在すると思います。

日頃から自分なりの感想を持つようにする。
読書でも映画でも友達の話でもニュースでも。
自分はどう思ったか、そう思ったのは自分にどういう思考が生じたからか。


異なる人間なのだから異なる感想が出てきて異なる発想が出ていいと思います。


自分の想像力を活かしたオリジナリティー溢れる感想を展開していければと思います。

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