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故郷

帰る場所を探している。

転勤族だった私は、環境の変化に慣れる事はそう難しいことではなく、また新しい環境に飛び込むことも、それが自分の望むものならば飛び込んできた(多少の不安はあったが)。

望んで東京へやってきた。

嫌、と思う事は地元にも東京にもある。

車がないと遊びに行けないし好きなバンドはライブをしに来てくれない。もう飽きたって思うくらいの狭い範囲。

電車で隣の人と密着しなくてはならず呼吸のリズムすらわかってしまう気持ち悪さ、咳き込む音やゴミの散乱した道路、道を譲らずぶつかって舌打ちする人。

東京には便利さが、そして何より光があった。
自分の将来がキラキラしたものであるかと錯覚できる、不安を吹き飛ばすネオン、高層ビル群、綺麗な建築物・道路。

私の憧れは現実逃避の一種であり美しさへの渇望でもあった。


それを理解した今、
私は何故か、地元に帰りたくなった。

キラキラとはしていないけれど、手入れされずボロボロになった建物を見ているような気分には決してならないのが地元であった。

私が求めているのは、今は景色よりも人の温もりや、清潔さなのだ。

華美なモノは求めていない。ただ手入れがされていて整然としていて、清潔であるモノ。

それが地元にあると確信しているわけではないけれど、何故か帰りたいと思うのは、それこそが故郷というものなのだろうか?

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