【読書レポ 論文編】最強のアイドル、赤ちゃん

1.赤ちゃんはかわいい

過去の投稿では、「かわいい」と女性の関係についての話が続きました。しかしながら性別に関係なく、努力せずして誰からも「かわいい」と呼ばれる存在がいます。それが、赤ちゃんです。幼い容姿は、老若男女万国共通で大事に愛されます。今回は、幼い子どもに対してかわいいと感じることに注目した論文を共有します。

共有する論文:『幼さの程度による“かわいい”のカテゴリ分類』


2.幼さとかわいいについての相関関係

幼さとかわいいについて、動物学者ローレンツ(1943)は「ベビースキーマ(baby schema)」という概念を提唱しました。この概念は、幼い生物がもつ身体的特徴をもつ個体は、愛らしく感じられ、周囲の個体の攻撃を抑制し、接近、養育、保護などの行動を受けやすくなることです。

この論文の調査は、2010年1月下旬に18歳から22歳の大学生の留学生を除く男女を対象に実施されました。
あらかじめ「かわいい」と感じる事象を筆者が集め、それらを93項目に絞って列記した質問紙を用意しました。回答者を2つのグループに分け、一方には各項目のかわいさを、もう一方のグループには、各項目の幼さを、そう思うか思わないかで答えてもらいました。

男性71名、女性95名を対象に回答が得られました。

結果、かわいいと幼さにはある程度の相関関係が認められました。また幼いと評価されないがかわいいと評価される項目もありました。かわいさについては、男性よりも女性のほうが高く評価しましたが、幼さについては男女差は見られませんでした。これを受けて筆者は、幼さとかわいさは異なる概念であることを記述します。

今回の調査により、幼さとかわいさは関連があるが、かわいい感情を抱く対象はベビースキーマをもつ幼いものに限定されないことが明らかになった。 p.16

つまり赤ちゃんは誰しもかわいいと感じるが、かわいいものはみんな未成熟で幼いものとは言い切れないことが分かりました。


3.かわいいがもつ未成熟について

今回呼んだ論文では、かわいいと未成熟の関係を明らかにしました。それと同時に幼いと感じるものには、男女差がないにもかかわらずかわいいと感じるものには男女差がありました。これは、かわいい概念が特定の人たち―多くの女性―で共有されていることが表れているのだと思います。したがってベビースキーマが提唱されたように未成熟であることが可愛らしいという感覚は共有されているものの、可愛らしさは未成熟であることという結論は、疑ったほうがいいと分かります。


参考・参照文献:井原なみは、入戸野宏 2011 「幼さの程度による“かわいい”のカテゴリ分類」広島大学大学院総合科学研究科紀要. I, 人間科学研究 広島大学大学院総合科学研究科 pp.13-17

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