南部鉄器のカラーポットを買った話
「南部鉄器が欲しい」
彼女が初めてそう言ったのは、5年ほど前のウィンドウショッピングだったでしょうか。
何やらお洒落で上質な雑貨の並ぶお店の一角で、ずっしりと重い鉄製のポットを手にしながらそう言ったのです。
「はあ。しかしあなた、緑茶や紅茶を淹れるポットならもう持っているじゃありませんか?」
「違う、違うの。ちょっといい気分で丁寧にお茶を淹れるための、ちゃんとしたものがほしいの」
「ははあ。しかしいいお値段ですな」
「そこなのよね問題は」
「重いし」
「重いわね」
「