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「スウィート・レモン」

「オランジェット・ノワール」を 描いてみて、
「あ、これレモンにしてもかわいいんじゃない?」
「ホワイトチョコのコーティングも綺麗だよね」
と思いやってみました。


単体ならさらにピスタチオやフランボワーズで彩りを添えたいところ。

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オランジェットのレモン版はなんと呼ぶのかしら?
レモンジェット…のはずがないな。調べてみました。

Orangette  = Orange(オレンジ) + ette
-etteという接尾辞は「~の小さい版」という意味。
 ・tartelette(タルトレット)= ひとり用のタルト
 ・pochette(ポシェット)= 小さなポケット
 ・maisonette(メゾネット)= 小さなお家 →転じて、集合住宅の一形態
orangette は 砂糖漬け用に「大きくなる前に摘み取るオレンジ」のこと
…らしい。

へぇ〜。
この法則でいくと、レモンはフランス語で Citron(シトロン)なのでCitronette(シトロネット)となるわけですね。
しかし「レモンピールのチョコレートがけ」「レモンコンフィのホワイトチョコレートがけ」みたいな表現のほうが通じやすいのかな。
オランジェットは「チョコレート菓子の名前」として定着してるぽいですが、こちらはそうでもなさそうです。



レモンときいて連想するのは?

ビタミンC? 梶井基次郎? ファーストキス?
はたまた、唐揚げ…

今回は「苦いレモン」、「甘いレモン」、「人生のレモネード」の3本立てでお送りします。



私がまず最初に連想したのは、
去年からヘビロテしている米津玄師さんの『Lemon』。

「苦いレモン」

ドラマ主題歌ということも知らず、気がついたらリピートしていた曲。
米津さんを初めて知ったのは「ハチ」名義『結ンデ開イテ羅刹ト骸』かな。
ボカロはそんなに詳しくないしPとしておっかけていたわけでもないんですが、これ好きだな〜と思う曲のハチさん率は高かった。中毒性が凄まじい…
ハッキリ「この人好き」と認識したのは『ドーナツホール』。

「胸に残り離れない苦いレモンの匂い」

ドラマ主題歌というのを知らず、いつの間にか耳に入っていつの間にか耳に馴染んで、あとから歌詞を読んで「あ、これ別れの歌だったんだな」と納得しました。歌詞をはっきり認識していなくても、切ない、物哀しい叙情は伝わっていたから。
この曲を聴いたとき高村光太郎の『レモン哀歌』を連想したのですが、米津さんもそうした文学作品の影響を無意識的に受けているようで。インタビューを読んでみるとおもしろいです。
さらにそのインタビュー等から発展したこちらの記事もおもしろかった。

酸っぱいけど、苦いけど、どことな〜くなんとな〜く希望の雫も孕んでいるような。いたらいいな、なんて感じさせるモチーフ。レモン。
清涼感と栄養も併せ持つからかな。苦いだけ、でもないのだ。

レモンの花言葉
 全体:誠実な愛、思慮分別
 花:心からの思慕、香気
 果実:熱情、熱意、陽気な考え


「香気」:甘酸っぱいレモンの匂いが恋愛の様子を思い出させて、その匂いに誘われるように意中の人の気を引く
「熱情、熱意」:レモンの果実の持つとても強い酸味が情熱を伝える
…というイメージらしい。



「甘いレモン」

レモンピールのチョコレートがけはまさしく「甘いレモン」。ですが、そういうこっちゃなくてこれは心理学用語です。よく「酸っぱいブドウ」と並べて紹介されています。

「酸っぱいブドウ」の元ネタはイソップ童話『キツネとブドウ』。

お腹を空かせたキツネは、たわわに実ったおいしそうな葡萄を見つけた。
食べようとして懸命に跳び上がるが、届かない。
キツネは「どうせこんなブドウは酸っぱくてまずいさ」と去っていった。

この話から、英語では"sour grapes"「負け惜しみ」という意味で使います(私がこの言葉を知ったのは『王ドロボウJING』時の都アドニス編)。
つまり「酸っぱいブドウ」とは、
頑張っても手に入らない物に対して、手に入らない悔しさ・不満を解消する理由付けをして、心の安定を図ろうとする心理のこと。

「甘いレモン」
はこの逆。

自分が手に入れたレモンを「これは甘いレモンだ」と言い張ること。
それは間違いなく酸っぱいのに。

これは元になった寓話があるのか、「酸っぱいブドウ」と対になるたとえとしてわかりやすく生み出されたのかはちょっとわかりませんでしたが…
要するに
手に入れたものを、自分にとって都合よく解釈して執着する心理。
さらに発展すると、手に入れたものに執着し続けて、よりよいものを手に入れるための努力をしない言い訳をしてしまう心理、ですかね。

なんかね。耳が痛いね。
甘いブドウを狩りに行かねばね。



「人生のレモネード」

レモネード(lemonade)とはレモンの果汁に蜂蜜やシロップ、砂糖などで甘味をつけ、水で割った飲み物。
最後の「人生のレモネード」は、最近見た海外ドラマ
『THIS IS US 36歳、これから』第1話に登場する概念です。

これはあなたの物語です。
誕生日が同じ36歳の男女。
自分が演じる役に嫌気がさしているイケメン俳優、
"脱肥満"を目標に努力する女性、
幸せな家庭を築いているエリートビジネスマン…
置かれている状況も性格もまったく異なる彼らには、誕生日以外にも共通点があった…。人生の壁を乗り越えようとする中で、それぞれが大切なものを失い、そして見つけ、3人の運命の糸が次第にたぐりよせられていく。


(※ネタバレあります)

あらすじに「36歳の男女」とありますが、最初に登場するのは素っぱだかで36歳の誕生日を迎えた男性。
彼の眼の前には愛する妻。妻のおなかは大きく膨らんでおり、妊娠していることがわかります。おなかの中にはなんと三つ子ちゃん!
幸せ絶頂ムードでいちゃつくふたり。そして破水。病院へ!
「今日は俺の誕生日なんだから、いいことしか起こらない」
そんな彼の祈りとは裏腹に、三つ子のうちひとりだけは…

目に涙を湛えて震える彼に、年老いた医師が言います。
「私には子供が5人、孫が11人いる。だが最初の子はお産で亡くした」
「それがこの職を選んだ理由だ」

「こう考えたいんだ。あの子を亡くしたことで他の大勢を助ける道に私は導かれたんだと」
「こう考えたいんだ。君も年老いた時に自分の経験を若者に語るだろうと」
「人生が差し出した酸っぱいレモンをレモネードに変えた経験を」
「そうなれば君は病院から3人とも家に連れ帰ることができる」
「…予定とは違うがね」

さて、これは上述した「甘いレモン」でしょうか。
医師本人も、「だからああなってよかったんだ」とまではとても思っていないでしょう。それでも苦くて酸っぱいだけのレモンを齧り続けるには、人生は長すぎる。

しかしレモンだけでは、レモネードは作れません。
蜂蜜やお砂糖は、どこから降ってくるのでしょうか。

“There's no lemon so sour that you can't make something resembling lemonade."
「どんなに酸っぱいレモンでも…レモネードを作ることができる」


この「人生のレモネード」という考え方はこのドラマが初出ではなく、
デール・カーネギーの名言として有名らしい?のですが。
When fate hands you a lemon, make lemonade.
「もし人生がレモンを与えたならそれでレモネードを作りなさい」

役者さんの演技とストーリー構成がとってもよくて。
あらすじにもあるように、このドラマは群像劇です。
他の36歳たちはどんな人生を送っているのでしょうか。それは本編を見て。

amazonプライムで字幕版が視聴できます。
家人がたまたま1話を録画していたのですが、この1話の完成度がものすごく高くて…いい映画1本見たような満足感。
amazonプライムだと、1話の後に脚本家さん・役者さんの対談もあります。こちらも楽しかったのでご興味ある方はぜひ。


私は甘ったれなので、はちみつレモンが飲みたいです。

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