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装画『猫の惑星』-メイキング

『猫の惑星』
著:梶尾真治 氏
刊:PHP文芸文庫
発売日:2019/5/8
ISBN-10: 456976892X
ISBN-13: 978-4569768922
デザイン: bookwall

文庫版の装画を担当させていただきました。

この世界の本当の支配者は猫なんだよ。
人間はまったく気づいていないけれど。

秘密組織「シテン」に集められた子供たちは、それぞれの能力を研ぎ澄ます訓練を受けながら、「ホンテン」から命じられた数々のミッションに派遣されていた。その中の少年の一人「イクオ」は、自分と会話できる猫「ウリ」と出会い、組織の恐ろしい秘密を聞かされる。
伝説の「猫の王」に会いたいと言うウリとともに、イクオは脱走を決意するが……。世界に隠された思わぬ真実とは? そして少年と猫の冒険の結末は?

単行本の装画は おとないちあき さんが担当されています。

これが本当に素晴らしくかわいくて、ご依頼はすっごく嬉しいけどこのままでよくねぇ!?と頭を抱えたものです。
が、実際に本文を読んでみると「私ならこう描きたいなぁ」というイメージが自然と湧いてきたので、以下にそのメイキングを。

1:イメージのすり合わせ(約7日)

bookwallさんとは『本を守ろうとする猫の話』『猫町くんと猫と黒猫』など猫が登場する小説のお仕事を複数やらせていただきました。
今回もその流れからのご依頼です!仕事が仕事を呼ぶ、ありがたや。
デザイナーさん(bookwallの築地さん)がくださった資料と、PHP研究所編集さんのご要望をもとに、メールで打ち合わせ。

・メインモチーフは「猫」と「少年」
・少し非日常な状態で、猫と少年が絡んでいる様子をかわいらしく
・SF感が強くなりすぎたり、怖い印象にはならないように
・文庫化にあたって、より色彩を強めにしてインパクトを出したい
・納期は1ヶ月ほど

「ネコの可愛らしさをしっかり出しつつも、単なる日常ほのぼの話ではないことを伝える」のが重要なのだなと認識。
ご依頼からゲラの到着・読了まで5日、
おおまかなスケジュールを設定してイメージのすり合わせをして、ラフ制作に入るまでさらに2日というかんじです。


2:アイディアスケッチ(約3日)

「浮遊する少年とたくさんの猫」というのは単行本と同じですが
カラーリングやポージングで、より緊張感を出してみようという案です。
(実際に読んでみたら、かなりハードな冒険をしていたので…)
少年の服装も、作中の表現にそって白い服に。そこはかとないSF感を意識。
メインキャラクターである太った成猫「ウリ」、3匹の仔猫「クロ・アル・ベー」ははっきり描きます。それ以外はシルエットのみで。

ミステリアスながらもやさしめな色合いで、
薄紫・ピンク系とグリーン系で2パターン。

完成版に近い、群青・ビビッドピンクのものも加えて、3パターン。
こちらは背後の「惑星」がより印象的になるように、円形をキッチリ見せています。


3:アイディアスケッチに追加案(約3日)

ここで、最初にデザイナーさんが提案されていた「例えば案」も欲しいとのご要望がありました。

頂いたものは冒険ファンタジーであることが分かりやすく
勢いもあり、とても良かったのですが、やはり
・猫と少年の絡みのかわいらしさ
・あたたかさや柔らかさ
・少し不思議(日常の延長にある非日常のような?)

という点ではちょっと弱くなってしまうかなと感じました。
(頂きましたものが「イメージと違う」というわけではございませんのでご了承くださいませ。)

追加ぶんを描いて検討した上で、すでに提出した案に決まるかもしれないというのを踏まえてさらにバリエーションを増やします。
例えば案にそって「画面いっぱい猫まみれ」が2種、「巨大な猫」が1種で、色違いも含めて10パターン追加で描きました。

ネタ出しの時点でここまでやらんでもいいのでは…という気もしましたが、この作業が一番楽しいんです…あとこういう入り組んだ構図だと、ある程度しっかり描かないと伝わらないので。

実を言うと、これらはデザイナーさんのご要望を聞いた時点でふんわり思いついてはいたのですが、描き起こす前にセルフ没にしたのです。
理由は、
・物語のハードでシリアスな雰囲気を反映させたかったから
・自分はラフを量産しすぎて時間を無駄にする癖があるから

でも「どうすればその本がより魅力的になるか」はデザイナーさんや編集さんのほうがよくわかってらっしゃるはずなので、ご要望があれば描きます。
(物語の内容をそっくり描いたイラストが必ずしもよいわけじゃないし!)

あとPHPさんとはぜひ今後もお仕事させていただきたいので「自分めっちゃやる気ありますよ!」アピールをしたかった。

4:フィードバック(約3日)

比較検討して最初の案・ビビッドカラーverに決定。
修正指示を受けて、完成イメージに近づけていきます。
(没案の巨大猫を気に入っていただけたようで嬉しい。これも別の機会に描きあげたいですね)

5:修正ラフ(約2日)

・少年を幼く(手足が短くなったぶん小さくなったので、全体的に拡大)
・猫と絡ませる
・手前の猫(ウリ)を大きく
・天地左右を広げる
・周囲の猫シルエットを追加・調整

レイアウトラフでタイトルが左にきていたので、イラストの重心も若干右に寄っているかんじになりました。
ハチワレが足にぶらさがっているのも仕草としてはかわいいと思うのですが
ぱっと見のバランスは左のほうがいいかな?とも。

6:フィードバック2(約2日)

少年のポーズを「左右バラバラ→そろえる」に変えたりすることで
「抜け感」がなくなったので、そこを調整して欲しい

少年の肩の上の仔猫(キジトラ)と、手前の太った猫(茶トラ)の色がかぶっているので調整してほしい

これは私自身も「足をばらつかせたほうが動きが出るなぁ」とは思っていました。
しかし修正前のポーズでかっこいいシルエットにしようとすると、どうにも足の長さが足りないんですよね…(だからポーズも変更した)
さてどうするか。

7:修正ラフ2(約1日)

・少年→だっこをやめ、足をばらつかせる。
曲げる足の重なり具合を左右で入れ替えました。
なびく髪もなるべく見えるように。

・肩の上の猫→色を薄茶色、顔の向きを変更
画面中央は明るめのほうが映えそうですが、これくらいならキジトラ(アル)っぽく見えるかと。
ポーズ変更の指定はありませんでしたが、他2匹とのバランスを考えると顔を真横よりは少しこちらに向けたほうがいいかなと。

・他2匹の仔猫の差分
先のラフでは正面顔が黒白二毛(べー)でしたが(顔が白っぽいほうが明るく見えますし)、黒猫を外側に置くと、空の濃青とまぎれてしまうので…正面顔の方が黒ver(左)も作りました。
クロがなつっこく、ベーは照れ屋という設定だったので表情もこちらのほうがしっくりくるかも。

指定されていないところを変えるのはあまりよくないかもしれませんが…
3匹の仔猫はなるべく帯の上に、見栄えするように出したかったので。
少年周りは少しずつ大きさ・位置も調整しています。

これでOKが出たので、右案で本番制作に入ります!


8:完成(約5日)

納期を長めにとっていただいていたので、じっくり仕上げました。
今回は最初から最後までPhotoshopです。
ご依頼から納品まで約1ヶ月。このあとは特に修正もなく終えられました。

手前の猫(ウリ)をどこまで描きこむかが悩ましかったです。
人物に合わせて簡略化したほうが馴染みそうな気もするけれど、猫の「ふわふわ感」も重視されていたようなので…
文庫の小さいサイズだと余計に悩みますね。今後しばらくの課題です。

作業量が多くて大変ではありましたが、楽しく制作できました!
あと左下のボールみたいな猫(ヒマラヤンのつもり)がデザイナーさんにウケてたのも嬉しかったです。笑

また、今回は店頭ポップにもイラストを使用したいとのことだったので素材として使いやすいようにレイヤー分けもきっちりしていました。
どんなポップになるかは、このnoteを綴っている時点ではわからないので楽しみです。
ポップ(広告)のぶんギャラも増やしていただけたのでとてもとても嬉しいです。嬉しいです!!


ちなみに背景のビビッドピンク惑星は、オリジナルで描いた月の流用。
こうした素材をストックしておくと今後の作業が効率化できそうですね。

これを色変更し、クレーターを描き加えました。
でもタイトルが入ったりすることを考えると、加筆なしのほうが見やすかったかも?まだまだ研究…


発売日は2019/5/10!
にゃんことSFがお好きな方はぜひぜひ〜


bookwallさんとのお仕事↓


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宮崎ひかり

フリーランスのイラストレーター http://1zeroberry.tumblr.com/ ・ 書籍装画→ https://booklog.jp/users/1zeroberry ・ 得意ジャンル→メルヘン、ミステリー、ファンタジー、ホラーなど ・ イラストレーターズ通信会員

お仕事絵

ClientWorks / お仕事で描いた絵+メイキングなど。 書籍→ https://booklog.jp/users/1zeroberry
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