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【アイナナ】ムビナナ感想


5/20(土)、5/21(日)に劇場版アイドリッシュセブン 『LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD』が公開、いや、開催された。
ストーリー第6部で四つ巴の戦いを繰り広げた4グループが、競うのではなく一緒に楽しむことをコンセプトとして企画した今回の合同ライブ。本編ラストで『4グループでライブをしよう』『全国に行こう』と彼らが語っていたのを読んでキャストライブ全国ツアーの伏線か…?と深読みしていたが、まさか『あなたの近くの映画館が、全国の映画館が全て"本会場の"ライブです』というアンサーとは思わなかった。

作曲家陣がTwitterで呟いていた音源の納品日が2021年だったことを考えると企画自体は遅くとも2020年から動いていたはずだ。コロナ禍であらゆるエンタメが苦戦し、新たな価値を模索する中、どこに住むどんな仕事の人も自分の生活に合わせて"参戦"できる全編ライブの劇場版作品の制作という判断が下されていたということが、とても嬉しい。

今回の劇場版はセットリストの違うDAY1とDAY2が同時に公開されている(正気か?)
20日(土)にDAY1、21日(日)にDAY2を観に行ったまだほやほやの感想を、後で自分が見返して楽しむことも兼ねて、印象的だったことを中心に書いておこうと思う※。(全曲やろうと思ったけど終わりが見えないので一旦断念)

※書き終える前に耐えきれず観に行ってしまったので、厳密にいうと既に5回見た後

◯全体を通して

1曲目のモンジェネが終わってIDOLiSH7の7人が階段を降りてきた時、「この光景は、初めてだ」と直感的に思った。"アイドルもの"という枠に括れないほどの普遍的かつ多層的なテーマを包含するアイナナのストーリーが何より好きな私にとって、今までアニメのライブシーンやMVで見てきた"アイドルとしての彼ら"はアイナナを構成する要素の1つ、彼らの側面の1つでしかなかったが、今回のライブはそうじゃない。初めから終わりまで一瞬の隙もなく完璧に"アイドルとしての彼ら"で、モノローグも舞台裏も心象風景の描写もない。ずっと好きで、乗り越えてきた葛藤や今までの成長についてもよく知っているはずなのに、歌い踊る彼らはどこか初めて知るようで、なんというか、出会い直したような感覚があった。

怒涛の週末を終えて、仕事をサボってふらっと映画館に寄った平日夜、階段を降りてくる彼らを見ながら改めてこの違和感について考えてみた。解の一つかもしれないのが、アプリ本編やアニメではプレイヤー/視聴者として物語を眺めているのに対し、今回の作品は明確に「ライブを観に来たファン(もしくはライビュカメラ)」の目線が貫かれる構造だから、という点。いざ言葉にすると「そりゃそうだろ」と拍子抜けする結論ではあるが、アプリストーリーを中心とした各種メディアミックスの中で今作は異質であり、かつ、今回のライブが限りなくリアルに近いものだからこそ感じるのだと思う。豪華版パンフレットの監督対談でも述べられていたが、今作のライブセットは全て現実世界で再現可能である。魔法も超能力もなく、そこには目の前の誰かの笑顔のために、地に足をつけて、必死に歌い踊る16人がいる。その現実性が自然と私の視点を「ライブ会場にいるファン」に同化させ、初めて"アイドルとしての彼ら"に出会わせてくれたのだと思う。

◯MONSTER GENERATiON

本編は、暗い空の映像から始まる。開始直後に入ってくる一音目は(おそらく意図して)今回のテーマ曲であるPieces of the worldの一音目と同じ音で、原曲と近いタイミングでドラムの代わりに鳴り響く雷鳴に、期待が裏切られる。素敵なことが起こりそうなのに、雷と吹雪が吹き荒れる光景は、もしかするとアイナナ世界でアイドル界に襲いかかった逆風の暗喩かもしれない、なんて思った。

そして始まる原点の一曲、MONSTER GENERATiON。キャストライブ等も含めるとおそらくアイドリッシュセブンというコンテンツで最も披露されている曲であり、私も見慣れているはずだが、傘を使ったダンスと演出の効果もあってか、全く印象が違った。

CUTのインタビューで真崎エリカ(と書いて神と読む)が「(1曲目で使われる小道具は)強さの暗喩だと思った」と仰っていたのを思い出しながら、パフォーマンスに目が釘付けになる。雷も吹雪も止み、もう傘はささなくていいんだ、雨は上がったんだ、そして自分たち(IDOLiSH7)は雨上がりの空にかかる虹なんだ、という希望の象徴のように思えたし、他の楽曲とは少し異質な、その辺にありそうなマンションの背景と、私服やスーツのバックダンサーは、私たちが生きている日常と地続きのところにいるんだよ、というメッセージのようにも思えた。

私はアイドリッシュセブンという作品、その中でも特にグループとしてのIDOLiSH7のことを「自分を、自分の日常を少し好きになって、一歩を踏み出す力をくれる」存在だと思っている。今回のモンジェネはそれが体現されているように感じて嬉しかった。

◯STRONGER&STRONGER

まず楽曲の前に、そろそろ禁断症状が出そうなので最推しである亥清悠の話がしたい。アイナナに出会ってから7年、途中数年のブランクを挟みながらも最終的に亥清悠推しに落ち着いた私を見て、10年来の友人の1人は「不完全を愛せるようになったんだね」と言っていた。

亥清悠というキャラクターの背景やŹOOĻの今までについて語り出すとそれだけで3万字くらいになりそうなので一旦割愛するが、DAY1のŹOOĻ一曲目、ZONE OF OVERLAPでステージに現れたその瞬間から、爆イケすぎてもう無理だった。声が死ぬほど好みなのはもはや置いておくとして※1、めちゃくちゃ華奢で白くて薄くて※2※3背も小さくて※4、なのに世界に噛み付かんばかりのパフォーマンスで。自分に自信があって強気だけど、ほんとは愛されたがりで、そして今は自分が愛されていることを知っていて。まだ磨かれきっていない輝く原石のような才能に自分が魅せられていることが、今回のライブで再確認できて本当に幸せだった。

※1 亥清悠との出会いは『ŹOOĻライブ感想』に詳しい。
※2 3Dモデル製作陣のインタビューで全員の骨格比較が載っており、はるちゃんは最も華奢なモデリングだった。
※3 種村先生はCUTのインタビューではるちゃんを書く時のテーマは「少年期の終わり」と仰っていた。わ、わかる、、、
※4 16人中、三月の次に小さい170cm


stronger&strongerは、今までのŹOOĻ楽曲とは明らかに異なる、ブラホワを終えた今のŹOOĻではないと歌えない一曲だった。リリースされる楽曲が常に彼らの成長や前に進む覚悟を示してくれるのが、アイドリッシュセブンというコンテンツの好きなところの一つだ。4グループのリリース楽曲一覧を見るだけで泣ける。

不安げにこだまするイントロに合わせて真っ暗な画面に現れた糸は、絡み、もつれ、ちぎれ、そして4本が拠り合わさるようにして中央で一つになる。周りの環境に振り回され、傷つき、自分を守るために他人を傷つけてきた彼らの在り方と重なり、開始十数秒で視界が滲んだ。

歌い方も、今までの楽曲では聴いたことがない響きだった。舞台挨拶で亥清悠役の広瀬くんが「映像を観た時、「こんなに優しい声色で歌ってたっけ」とびっくりした」と話していたが、それくらい、優しい。単に温かくてほんわかしているのではなく、痛みも抱えているし後悔も数え切れないほどあるけれど、それでも前を向くと決めた、ある種の諦めを含んだ切ない優しさで、この曲にŹOOĻの一つの結末を見たように思った。

サビ以降は、観客に背を向けるパフォーマンスに爆泣きだった。ŹOOĻの4人は他の12人に比べて、「自分自身を見てもらえなかった」ことに根深いコンプレックスを持っている。本編ストーリーでも、「俺たちの名前を呼べよ」と繰り返す本作のMCからもわかるように、彼らは他者からの承認をずっと求めてきた。
そんな彼らが観客に完全に背を向けて歌うということの意味は、とても、重い。
それは、誰かに牙を剥くことで強制的に視線を集めずともファンが自分たちを見続けてくれていることへの信頼であり、背負っていたものからの解放であり、ありのままの弱さの吐露であり、共に歩いていこうという約束に思えた。吸い込まれていきそうな真っ白な背景をバックに力強く歩み続ける4人の姿に、力をもらえる最高の一曲だった。


◯Incomplete Ruler・TOMORROW EViDENCE

7年間かけて描かれてきた伝説のアイドル ゼロを巡る物語に一旦のピリオドを打った第6部。主題とも言える一曲がIncomplete Rulerだった。TRIGGERのセンター九条天と、双子の弟でありIDOLiSH7のセンター七瀬陸がゲネプロで急遽デュエットで披露したこの曲は、数年前から張られていた「桜春樹の遺作」という途轍もなく高いハードルを軽々と飛び越える本当に素晴らしい楽曲で、アイナナ世界の聴衆も、私たちも、大いに沸き、涙した。
それくらい大切な一曲ではあるが、作中でもゲリラ的に披露された伝説のステージだったからこそ、ほとんどの人が今回のライブでやるとは思っていなかったのではないか。コスモ最速で鑑賞したDAY1朝イチの回は、incomplete rulerのイントロでどよめき、終わった後にはシアター中から啜り泣きが聞こえた。

incomplete rulerが披露されることになった経緯が知りたい、と思っていたら初週の来場者特典がそのエピソードの漫画だった。痒いところに手が届きすぎてる…

この曲は天と陸にとって最後の2人で立つステージなのだということが表情と構成の全てから伝わってきた。2人の声が合わさることが本当に嬉しいし、けれどこれがもう2度とないことが否が応でも伝わってきてしまうことが、どうしようもなく切ない。

Cメロで『手を離さないでと 風が囁いて消えた』と歌いながら手を伸ばして歩み寄る2人は、前後にすれ違う。ここのダンスが切なすぎて何度見ても胸が痛い。
そしてラスサビでは2人の掛け合いが始まる。陸が歌う時、画面の奥で天が苦しそうに陸を見つめ、天が歌う時には、陸の刹那げな視線が刺さる。最後の陸のパートで、天はどこか達観したように微笑み、ようやく歌声が重なるのに合わせて2人の視線がついにぶつかり、向かい合って手を伸ばす。重ねる手のひらに引き寄せられるように近づいて小さく頷いたあと、2人は背を向け、そして天は舞台から去っていく。こうして一連の流れを書いているだけで泣きそうなのに、超絶良い歌声とメロディが乗ってたらそりゃ爆泣きも当然だ。

背を向けて曲を終えたあと、天は舞台を去り、寂しげに俯く陸だけが舞台に取り残される。私はincomplete rulerを、ゼロに扮する天と、ゼロに呼応する存在(観客)としての陸の楽曲と理解していたが、今回のライブでは陸の真っ白の衣装が明らかにゼロを彷彿とさせることからもわかるように、ゼロと"我々"の構図を逆転させて解釈されるのかもしれない。

がらんとしたステージに1人取り残されたゼロ(陸)の元に、TOMORROW EViDENCE
のイントロと共にIDOLiSH7の6人が現れる。(ここの演出、家で円盤を見返して耐性つけてるはずなのに、映画館行くと本当に毎回泣きすぎてやばい)
「ゼロのようになるかもしれない」と九条貴匡から警告されていた陸がゼロのように消えなかったのは、「1人ではなかったから、IDOLiSH7だったから」と物語のアンサーが示されたように思った。

後ろを振り返る陸と登場した6人は一瞬動きを止め、視線を交わし合う。この時の陸の表情は観客である私たちには見えないが、「りーくーー!」と励ますように声をかけて肩を抱くその後の三月の動きから察するに、兄との決別と仲間の存在の再認識で、泣きそうだったんだろうな。
一人一人が歌うAメロは、歌う人と陸が常に画面に映し出される。消えそうな存在を繋ぎ止めるように、メンバーは陸と視線を合わせ、頷きあい、笑顔を交わす。
そんなやり取りを経てサビ終わりに陸が歌う『作ろうtomorrow evidence
だって君とみたいんだ どんな季節さえ超えた未来を』で、15年前に消えた伝説のアイドル、ゼロの物語はピリオドを打たれたように思った。たぶん、ゼロもあの会場のどこかに来ていると思う。

Cメロ前でTRIGGER、Re:vale、ŹOOĻが出てきた時は、初回は本当にびっくりした。壮大なエンディング過ぎて、夢のようで、世界が終わる走馬灯かと思った。

◯Pieces of the world

本当に素晴らしい楽曲。好き過ぎてまだ現段階では解釈も感想も書きたくないので一旦保留で。1分間の予告編しか出ていなかった段階で、公開されていた部分の歌詞を深夜に朗読し、「"世界で1番永遠に近い 青い青い空の果ての太陽" かー、言葉の響きが美しすぎる」「"僕らはひとときに過ぎない存在でも"で一気に視点が引き戻されるよね」「太陽ですら永遠なんじゃなくて"永遠に近い"だから、アイドルが永遠じゃない事もここで逆説的に言ってんのよね」「ゼロ〜〜泣泣」と大盛り上がりしていたので、フルが公開された時にはそれはもう大変なことになった。

演出に関しては、16人によるフォーメーションダンスが凄いことはTwitterなどを見ていてなんとなくわかるが、映画館に行くとどれだけ小さくても推しが写っていると推しにしか目がいかないので、いまだに全体像を理解できていない。

こんなに素晴らしい楽曲がアイドリッシュセブンという作品を構成する重要なピースの一つとして加わったことが、本当に嬉しい。最近の好きな曲(THE POLiCY、incomplete ruler、Pieces of the world)は全て作曲伊藤賢×作詞真崎エリカなので、完全にこの2人に魂を握られている…。

◯最後に

舞台挨拶で主人公七瀬陸役の小野賢章さんが「目が足りないので全員のことを観るには16人×2days=32回観ないと!笑」と仰っていたが、結局画面に推しが写っているとそれがどれだけ小さくても推ししか観られないので、とても32回では全てを把握できそうにない。土日の4回を一緒に観た友人たちと終わった後に感想共有をしていたが「あの曲の◯◯のあの振り最高だったよね」「え、なんの話…?」「知らないわ」と何一つ噛み合わなかった。

これから舞台挨拶もまだまだ続くし、キャストがほぼ全員集合して国際フォーラムでみんなで見るプレミアム上映会もあるし、いろんな映画館で音響の違いを楽しんだりもしたい。
出社する日は常にカバンにペンライトを忍ばせ、2時間の隙間時間を生み出せたら即映画館に駆け込む日々を送るつもりだ。毎日が本当に楽しい。アイドリッシュセブンのおかげで人生の輝きが増している。製作陣とキャスト陣、一緒に楽しんでくれている友人たち、その他世界の全てに心から感謝!!


今回の映画は何一つ予備知識がなくても楽しめます!少しでも興味が湧いた方!ぜひご覧になってください!声かけてもらえたら無限に一緒に行きます!!!

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