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NPOのバックオフィスってなに?~現役男子大学生がインタビューしてみた②~

皆さんはじめまして。認定NPO法人まちづくりスポット(まちスポとやま)でインターンシップを経験させていただいている実習生の佐藤龍一です。

法学部の大学3年生で、まちづくりや中間支援といった広く「社会貢献」をしごととしているNPO法人に興味を持ち、大学でのインターンシップ紹介動画でこのまちづくりスポットの動画を拝見したことから、インターンシップに申し込みをしました。

この記事は、インターンシップを通じてイベントの開催といった、表に立って活動するコーディネーターのような業務だけでなく、イベント開催の調整や経理、事務処理といった裏方であるバックオフィス業務の側面も見てきました。

高い事務遂行能力を必要とするこの仕事は、NPO法人にとってとても重要なしごとであることを感じました。

今回は、普段外からはあまり目につくことのない、そういったバックオフィスで働かれているスタッフの方2名にお話を伺いました。その中でも本記事では、まちスポ飛騨高山に勤めて約5年の加藤莉穂さんのインタビュー内容を紹介します。(トップ画像右の方です)

NPOの基盤を支える方の思いや活動を少しでも知っていただけると幸いです。

1.「利用者」の立場から始まったまちスポとの繋がり
インターンシップでまちスポの業務を体験・見学してきた中でも加藤さんのお名前は度々耳にしており、スタッフの方からのお話でも加藤さんに関して「屋台骨」というワードが出てくるほど中心的に活動をされている加藤さん。

そんな加藤さんは、高山生まれ高山育ちで学生時代には音楽に打ち込んでいたそうです。その音楽の才能を活かして進学を志していたようですが、家庭の事情もあって就職の道を選ばれました。

加藤さんは地元の高山で働くうちに、自然の豊かさや人の温かさ、努力を惜しまない市民性を感じて、高山をどんどん好きになっていたそうです。

社会人として働く一方で、趣味として音楽を楽しんでいたそうなのですが、高山は音楽の披露がしづらいと感じたそうです。その折にまちスポ飛騨高山の「イベントしませんか?」というポスターを見かけたことがまちスポとの出会いだったそうです。

音楽に関する活動開催の相談に乗ってもらうことやイベントに参加者といった「利用者」としてまちスポとの関係が始まりました。その後NPOとしての活動を続けていくうちにまちスポ飛騨高山にスタッフとして所属することなったそうです。

2.バックオフィスは、誰かの「諦めよう」をなくすしごと
そんなまちスポ飛騨高山の屋台骨と言われる加藤さんですが、イベントの進行役を担当することもあるようですが、主な業務は会計業務、つまりバックオフィスの業務なんだそうです。

会計業務に関して加藤さんは、イベントだったりボランティア活動だったりを「やりたい」を実現できるのはバックオフィスの下支えがあるから、という考えを教えてくださいました。

まさに、団体の基礎となるところで働かれている加藤さんは、まちスポの活動における土台的なところを作って動かしています。

また、NPO法人の活動というものは、行政や企業に対しての報告が必須であり、その報告は明確に活動の実態を示す「数字」が重視されるそうです。そういった「数字」をまとめ上げて、報告し、アピールするのもバックオフィスのしごとであり、NPO法人として欠かせない業務であることが分かります。

そういった過去のデータや資料作成、予算を立てる業務のクオリティが高いことで、助成金や社会的信頼を獲得でき、それが私たちの目にする様々な活動に繋がっていることが分かりました。加えて、バックオフィスの業務がしっかりできていることで、他のNPO法人や活動団体からの相談に乗ることができ、ほかの人の「やりたい」という思いに還元することができます。

バックオフィスの業務は確かに、困っている誰かを直接助けられるような業務ではないのかもしれませんが、誰かの「諦めよう」をなくすことができる業務であることを教わりました。

3.まちスポでの働き方
まずは、バックオフィスを中心に働く加藤さんにまちスポの雰囲気を伺いました。
年度や所属するスタッフによって雰囲気は変わってくる、とおっしゃった加藤さん。まちスポという組織の流動性の高さがうかがえました。

しかし、加藤さんはNPO法人に所属するスタッフの皆さんは、個性や思いが強い、という共通点も教えてくださいました。なので活気があり、また様々な人が集っているので、互いを支えあい、補い合う環境ができているそうです。

また、加藤さん自身も個人事業として音楽教室をしているように、まちスポは非常にフレキシブルな働き方ができるそうです。朝:まちスポ、昼:別のお仕事、夕:まちスポ、というような働き方も可能なんだそうです。
会計に関しては、1年前ほどから国からの業務委託や助成金が増加したことで、業務は大変になったそうです。

会計という業務の一つの表現として、いっぱい財布を作る感じ(区分経理)、と加藤さんは教えてくださいました。業務や相手によってお金の出入りを分けることが求められ、活動が幅広いまちスポでは、重要な業務であることを感じました。
また、ただ仕分けをすればいいのではなく、会計に関して質問されたときに即座に答えられるように、明瞭に管理を行うことも重要なポイントであると伺いました。

活動や事業に関してのお金が、どこから入って→どのような目的で→どう出ていった、という流れを「見せる」のが大事ということも教わりました。
会計やデータをまとめる業務は、「正解」は出る作業ではありますが、相手に合わせた「正解」を見つけられるようにすることが重要であることを感じました。

4.加藤さんの描く「自分」「まちスポ」「地域」の将来
インタビューの終盤、加藤さんに「自分」、「まちスポ」そして「地域」について、どうありたいか・どうあってほしいか、ということを質問しました。

加藤さん自身に関しては、まちスポで働いているなかで、NPO職員育成の必要性を感じているそうです。バックオフィスの知識のある人が少ないので、問題を解決したい、という方々に対して充分なサポートができないことを感じているそうです。
相談業務等を通じてNPO法人やその活動に携わる人々を増やしていくことが目標というふうに教えてくださいました。
確かに、目に見える問題でなく目に見えない問題の多くはバックオフィスに関わる分野が関わってくるように感じるので、人材の育成というのは重要なことのように思いました。

まちスポに関しては、まちスポへの寄付が特定の層に偏っている傾向があることを感じたうえで、地元住民や地元企業からより応援していただけるようにしていきたい、とおっしゃっていました。
応援や善意がかたちとなったものが寄付でありそれをエネルギーとして活動しているのがまちスポなので、イベント等の活動だけではないバックオフィスや広報の業務の重要さを感じました。

地域(飛騨高山)に関しては、地元を離れて暮らす人々が多いので、移住・定住を促進したい、とのこと。特に若い世代にとって帰ってきやすい、移住しやすい環境にしたいそうです。
一方で、飛騨高山の地域に目を向けたとき、高齢者の独居が増加していることで、孤立が目立っているように感じていているそうです。
行政・金融機関での手続きやスーパーでの無人販売などデジタル化によって人とのつながりが希薄になった昨今において、地域のぐるみの助け合いの実現が必要なように感じました。

5.さいごに
加藤さんへのインタビューを行いましたが、質問に対しての回答だけでなくその周りを埋めるような話し方をしてくださり、とても丁寧で分かりやすい話し方をされる印象を受けました。

頭の回転が速いだけでなく、それに追いつくだけの言語能力があるように感じて、加藤さんのバックオフィス業務に必要である高い事務遂行能力の高さをうかがえました。

また、問題や課題に関して、度々「調査できたわけではないけれど」という発言が出てきたことが記憶に残っています。肌感でまちスポや地域の課題を察知する洞察力はさることながら、それをデータとしてとしてまとめることが前提にあることを感じました。

バックオフィス業務を中心にはたらくスタッフの加藤さんにお話を伺ってきましたが、NPO活動として連想するようなイベントやボランティア等の活動の裏には、必ずそれを実現するためにはたらく方々がいて成り立っていて、そこにも「助け合い」の精神が根幹にあることを忘れてはいけないと思いました。

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