開発協力6

開発協力はこれからのビジネスのカギを握っている

 開発協力と聞くと「発展途上国の社会的開発を資金提供、インフラ構築、技術協力などの形で支援することで専門的な知識を持った人や海外青年協力隊のようなボランティアが活動している」と理解している人が多いかも知れません。しかしながら開発協力はもっと身近になってきており、また私たちの未来にとって大きな意味を持っています

 去る6月15日、岩手県の陸前高田市で国際開発学会春季大会が行われ、私も初めて参加しました。陸前高田市は東日本大震災で最も深刻な被害を受けた場所の一つで、奇跡の一本松が良く知られています。この町に国内外の教育研究機関、開発協力ビジネスや一般企業からのメンバー、地元の高校生や市民310人が集まりました。

 このような場で気付くことの一つに、「私たちの身の回りに当たり前にあるものが日本で生活していると想像もできないような現実の中で調達されている」ということです。
 この学会では、「タイの水産業・水産加工業の裏側の労働搾取事例からの開発協力の検討」というセッションがあり、インドネシアのアンボン諸島近隣で近隣諸国出身の労働者が数年から20 数年ものあいだ漁船に監禁状態で就労を余儀なくされていた事例が報告されました。この問題はタイから大量の水産物水産加工物を輸入している日本と深く関わっており、このセッションの場には大手食品メーカーの人権問題専任の社員の方もおられて議論に加わっていました。

 もう一つ気づく点は、社会開発は普通のビジネスとは全く異なった長い時間スケールでのグローバルで多様な要因が絡み合った課題への挑戦ということです。
 この学会では「地方創生から考えるポスト国際開発」のラウンドテーブルがありました。その中で、「震災からまる8年が経った今、共生主義と言われる指針の下、経済的発展だけでなくコミュニティとエコロジーを重視した新しい社会の開発が求められている。従前の「国際開発=途上国開発」という考え方から、日本と途上国ともに共通するグローバルな開発(共生)のあり方としてのポスト国際開発を考える時期に来ているともいえる。」という提言がありました。
 震災直後にボランティアで東北に来られた方からよく聞いた言葉に、「何か自分の時間や技術が役に立てられればと思って行ってきましたが、むしろ教えられ励まされ今の仕事をもっと人に役立つものにしようと思って帰ってきました。」というものがあります。このおたがいさま、おかげさま、の考え方が大きなスケールでも重要なのだと思います。

 国際開発協力の中でナンバー1のドナーだった日本は、高額な社会基盤インフラ建設中心から技術協力などの社会関係資本にインパクトを生み出すプロジェクトにシフトしてきています。その中心にある考え方は今の「困難な状況を助ける」から「自律的、主体的に発展が可能な社会にする」へということ、そして支援というより協力即ち共にに考え共に汗を流しチームとなって持続的な仕組みと組織・人材を作り上げていくということです。
 これからの企業にとって本業を通じてSDG’s推進することが最重要課題の一つですが、ここでも「開発協力によって内発的、自律的に課題解決を進めていくこと」をきちっと捉えておく必要があると思います。
                           (河田)

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