見出し画像

イランリヤルをウオッチする【インフレと金貨の流通】 (2019/7/26)

前週の記事→【USD/IRR】イランリアルをウオッチする (2019/7/19)

7月19日にホルムズ海峡でイランの「革命防衛隊」が英国のタンカーを拿捕したことにより緊張が走ったイラン情勢だが、その後は小康を得たかのように思われた。
しかしながら、イランは7月26日には中距離弾道ミサイルの発射実験を行ったことを受け、このミサイル実験を挑発行為として米国との緊張が高まるとの観測もなされており、予断を許さない状況にある。


イランリアルの対米ドルレート

最近1週間に関して、現地の通信社および情報ベンダーの公表によるイランリアルの対米ドルレートは目立った騰落はみられない。なお表中の「NIMAレート」とは、イラン政府が米国の経済制裁に対抗して2018年8月に発表した公定レートのひとつであり、広範囲に指定した商品等の輸出入に関する外貨の割当てを定めるシステムである。


インフレと金貨

イランでは1978年のイラン革命以来、インフレ率が高い状態が続いているが、2018年の米国による経済制裁により原油輸出が減少し、外貨獲得手段が制限されたこと、同時に輸入の制限によりモノの流通が減少したことでインフレ率は急速に上昇し、足元では年率50%に達する勢いとなっている。

その結果として、消費者物価指数は10年間でおよそ10倍に上昇している。

(TRADING ECONOMICS :https://tradingeconomics.com/iran/inflation-cpi

(TRADING ECONOMICS :https://tradingeconomics.com/iran/consumer-price-index-cpi


このような自国通貨の暴落を受け、またさらなる制裁による生活コストの上昇に備えて、市民が安全資産としての金の買いだめに走っていると言われている。金の需要の急騰を受けて、中央銀行であるイラン・イスラム共和国中央銀行は2018年に60トンの金塊により数十万枚の金貨を鋳造し市場に放出したが、それでも国内の金需要に対して十分ではないようである。

イランの国内メディアのニュースサイトでは、経済のカテゴリに市場動向のページがあり、そこでは為替や自動車の価格とともに、金の価格動向も、少なくとも1週間に1回以上の頻度で更新され掲載されている。

(タスニム通信社)

(メフル通信社)


主に流通している金貨としては、約8.1グラムで金純度90.0%の1アザディ金貨を基準に、1/2アザディ金貨、1/4アザディ金貨があり、また1グラムアザディ金貨もある。

7月26日現在の各金貨のイランリアルでの相場は以下のとおり(Old AzadiとEmamiは発行時点が違うがいずれも1アザディ金貨)。なお金額単位は1トマン=10リヤル。

(bonbast.com)

1アザディ金貨には重量8.1グラムの90.0%すなわち7.29グラムの金が含まれる。

金の国際価格は7月27日現在1トロイオンス(31.1034768グラム)あたり約1,418ドルであり、国際価格ベースで1アザディ金貨を評価すると7.29グラム÷31.1034768グラム×1,418ドル=332.3ドルとなる。

イランにおける1アザディ金貨の価格を上表より40,000,000リヤルとするとUSDとリヤルの交換レートが119,500リヤル/ドルであるので334.72ドルとなる。


サポートいただいた金額は、面白そうなものやサービスに使ってレポートをしたいと思います