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【USD/IRR】イランリヤルをウオッチする (2019/7/19)

ペルシャ湾のホルムズ海峡において、米国海軍の強襲揚陸艦がイランの無人機が警告を無視して接近してきたとして撃墜し、一方でイランの「革命防衛隊」は英国のタンカーを海事国際法に違反したとして拿捕するなど、イラン情勢が緊迫している。

特にイランと米国との関係が極度に悪化し、一触即発の状況にあるとも言われている中で、イランの通貨イラン・リアル(Iranian rial;IRR)について、主にイラン国内発の情報から、米国ドル(USD)との交換レート(USD/IRRその他の概況について見ていくことにした。


実勢レートの状況

最近の米ドルとイランリアルの実勢レートは以下の通りである。

(タスニム通信のWEBサイト:tasnimnews.comの記事を元に作表。)


イランでは為替相場管理が行われており、公定の為替レートが複数存在するが、NIMAシステムはイラン政府が米国の経済制裁に対抗して2018年8月に発表された、輸出入に関する外貨の割当てを定めるシステムである。
政府の定めた輸入品目については、外貨を売却する輸出者と外貨を必要とする輸入者による交渉により、外貨割り当てレートが決定されるとされている。該当する品目は、原材料、中間財、機械類などおよび消費財および工業製品などに及ぶ。
(JETRO 為替管理制度)
 https://www.jetro.go.jp/world/middle_east/ir/trade_04.html
(JETRO 政府が新たな金融・経済政策、米国の制裁再開に対応)
 https://www.jetro.go.jp/biznews/2018/08/88ff892ea5396b49.html

一方で、自由市場として、市中で、両替商などによる米ドルとイランリアルとの交換取引も行われている。なお、「外国為替」は、異なる通貨間の現金によらない電信や小切手による決済や送金の取引をいうので、現金と現金との交換は為替管理制度の範囲外なのだろう。(連日のニュース記事も、闇市場を取り上げる記事のような雰囲気はなく、淡々と事実を記述している印象を受けた。)

7月1日から17日にかけて自由市場の相場でリアル高が進行しているが、17日の前日の16日火曜日には1ドル117,500リアルだったところ継続して急落しているとされており、投機的取引によるリアル価格の乱高下があるようだ。


中期的な相場の状況

イランの自由市場における交換レートは公的な統計情報は無いものと思われるが、テヘランのWEBサイトによる最近2カ年(2017年8月1日から2019年7月19日)の自由市場でのUSD/IRRの交換レートの状況は以下のとおりである。なお、縦軸の表記は10リアルを1単位としている。

イランの自由市場におけるUSD価格(売り気配値)

(出所:BONBAST)

上記表のうち2018年7月までの推移は日本の新聞社による推計データとの整合が確認できる。

(出所:朝日新聞デジタル)
(https://www.asahi.com/articles/ASL7H66J9L7HUHBI014.html)


米国のトランプ政権は2018年5月8日にイランとの各協定から離脱することを発表し、同8月にイランに対する経済制裁を再開しているため、2018年中のドル高リアル安の進行は、米国による経済制裁のアナウンス及び実行の影響によるところが大きいとしてよいだろう。


続きます→イランリヤルをウオッチする【インフレと金貨の流通】 (2019/7/26)

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