参院選結果を見て(年代別の支持要因についての雑感)


前回、参院選の1人区結果を見て(→軽く分析)の記事で、分析の結果、高齢者世代よりも生産年齢層の方が相対的に自民党支持率が高いのでないか。という結論になりました。

その要因について、分析とまでもいかない雑感レベルのストーリーを挙げてみます。備忘録のようなものです。


① 雇用の改善が与党支持につながる動機の度合いが違った。

安倍政権が自らアベノミクスの成果として強調しているところですが、雇用環境は改善し、特に10代20代の若者に支持されています。


実際に有効求人倍率はバブル期を超え、1970年代以来の高水準となっています。足元でも人手不足による活発な求人活動、パート・アルバイト等の賃金水準の上昇は感じられるところです。

(厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)より)


ではなぜ10代20代の若者世代に特に評価され、年代が上がるごとに評価されないのか、となります。

この点は、相対的に若年層の方が雇用環境の影響を受けやすいから。ということは言えそうです。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構
「年齢階級別完全失業率(10歳階級)」

2000年の米国ITバブルの崩壊にともなうリセッション、2008年10月のリーマン・ショックと、上記完全失業率のピークはいずれも全世界的な不況と重なるものですが、やはり不況期に職を失いやすいのは若い世代です。

僕は2000年から2003年ころまで当時でいうフリーターのようなアルバイト生活をしていましたが、今のアルバイト事情を聞くと比べると隔世の感があります。仕事はすぐ見つかる、時給の相場は体感1.5倍くらいになっていてもおかしくなさそうです。

日本全体での賃金水準の低下は、非正規雇用の増加と正規雇用でも昔のように年次を経るごとに上昇していかない。という点で起きているもので、非正規雇用で比較すると良くなっているのだろうな。と推定します。そしてそのメリットを受ける人の割合が大きいのは若年層です。


一方で、高齢者層はそもそもリタイアしている人も多く、雇用の改善はメリットとは感じられない割合が高いでしょう。そうすると、相対的に高齢者向けの優遇措置を掲げる立憲民主党の政策のほうが直接的な利益となるでしょう。

(「立憲ビジョン2019 参院選公約」より抜粋)


ただ、僕が主に70歳代の方数人と話した感触では、(もちろんメリットがあるから、と直接言う人は少ないかも知れませんが)、野党が良いというよりも自民が良くない!という理由で非自民に投票したという意見が多かったように思います。


② 現状に対する評価は時系列が長い方が低くなるのでは?

以下は突っ込んで議論したものではなく、僕の想像になりますが、今の日本が停滞し凋落していること、壮年世代(30代後半から50代を想定)の暮らし向きが良くならないことに対する不満やもどかしさのようなものが、高齢者世代にはあるのじゃないかと。

例えばモデルケースでは、昭和20年1945生まれの74歳の人は、テレビもなかった、給食でパンと脱脂粉乳を食べていた国中が貧乏だった子供時代に始まり、高度経済成長期に国も個人も家族もどんどん豊かになる青年期壮年期を過ごし、1980年代には”Japan as NO.1”とも言われました。

基本的に生まれてから半分以上を右肩上がりの世界で生きてきたわけです。

そうすると経済は成長して給料は上がっていくのが世界観の基準となり、この30年の経済の停滞や国際社会での相対的な地位の低下、また正規雇用者の給与水準の低下、そういったことが「失政」の結果に見えてもあながち不自然ではないのかな。と感じます。

国としてお金をかける分野を間違えているのではないか、給料が増えなければ結婚も子ども出来ないだろう、中国に追い抜かれてこれからどうなってしまうのか。そういった声は、過去の成功体験との比較感もあってのことなのではないかと。


一方で、平成以降生まれの世代は、生まれたときから経済はだいたい停滞していると言ってよさそうですし、社会に出る頃には日本はただの普通の大国でしたし、給与は簡単に上がらないのが当然のことになっていました。

「失われた30年」が当たり前の基準として社会を見ると、政権与党に対する批判も相対的には少なくなりそうに思います。





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