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キリンの首とヒトの涙

キリンの首はなぜ長いのでしょうか?

「キリンの首が長いのは高い木の葉などを食べるのに都合が良かったため」

という説明はよく知られているように思います。私もそうなのだろう(それだけの理由ではないにしても、理由としてはあるのだろう)。と考えていました。

しかし、実際にはそれほど単純なことではなく、キリンの首が長い理由としては、この

① 高い木の草を食べるため 以外にも、有力なものとしても

② 水を飲むのに都合が良かったため

③ ウィルスによる突然変異による

などの説があるということです。

また、結局のところよくわからない。という人もいます。

②は、足の長いキリンが水を飲むのに、かがむよりも首の上げ下げでできるほうが、敵から逃げる上でも便利で、脚を折るような心配もないから、などといった点を重視しているようです。

③は、化石調査では、現代のキリンとキリンの祖先にあたる首の短い動物との間に、中間的な首の長さのキリン類の化石が見当たらないことから、突然変異によって急に首の長いキリンが現れ、それが生存するのに都合がよかったから増えていって首の短い種類を駆逐した。という論拠をとっているようです。

いずれにしても、キリンの祖先には首の短いものと首の長いものが存在した時期があったが、生存競争の上で、首の長いほうが生存と繁殖に有利なとなり、その首が長いという性質がより多くの子孫に伝えられ、首が短いという性質を持った個体の子供は少なくなる。このように適応力に応じて「自然環境がふるい分けの役割を果たすこと」自然選択ないし自然選択という。とされています。

自然選択の考え方は、ダーウィンの進化論の基礎をなす重要なセオリーですので、多くの人に知られています。またその内容やメカニズムについて数多くの論争があるとはいえ、基本的な思考の枠組みとしては「科学」といえる位置にあるように思われます。


ところで、「キリンの首は長い」あるいは「キリンは成長するにしたがって首が長くなる」という「性質」は、遺伝子によりその情報が記述されていることですが、自然選択説によると、生命のいかなる「性質」も、「(自然)環境がふるい分けの役割を果たした結果によって」現在の遺伝子に記述されていることで発生するものと考えることができます。(自然)としたのは、近現代においては人為的な環境もそのような影響を与えるものとなりえるということです。


「いかなる性質も」とすると、「ヒトは強く悲しんだときに涙を流す」というような「性質」も、自然選択の結果そういう性質を備えるようになった。ということができます。

悲しみは感情なので、首が長いというような物理的な形質とは違うことではないか。という考え方があるかもしれません。

しかし、感情も、つまるところは脳で起こっている化学反応や電気反応といった物質的な出来事・作用であるとする現代科学による理解の立場では、首という器官の性質・特徴か、脳という器官の性質・特徴かの部位的な違いでしかなく、遺伝子に記述されている情報が原因となって発生した現象のひとつであるという点は同じです。

結局、わたしたちヒトの心の在り方、感情の発露や表現、行動の原因となる心理の決まり方、そういったものも、自然選択の結果、遺伝子の書き換え書き換えを通じてやってきて、現在時点で備わっている「性質」といえるのではないだろうかということです。

なぜこのように累々と述べてきたかといえば、最近「進化心理学」という研究分野を知り、大変面白いものだと感じているからです。進化心理学とは、ある心理メカニズム(例えば「怒り」)をもつ個体が、この心理メカニズムをもたない他の個体に比べて生存・繁殖の上で優位に立つならば、自然選択の過程を経て、「その心理メカニズムは種全体に広がっていくだろう、と考えられること」、逆に、「現在から過去を推測すると、ある形質が種内の個体の多くに普遍的にみられる場合、その形質は進化史の中で生存・繁殖の成功に役立つ何らかの機能を果たしてきたと考えられること」を基礎とする領域とされています。

ところが、このような論理展開は、人によってはしっくりと来ない、直感的に受け入れずらいという反応も見られることが少なくありませんので、一つの例示として、キリンの首とヒトの涙の比較をしてみたものでした。

なお私はこの分野の研究家でもなんでもないただの素人です。このNOTEにも、詳細かつ広範に進化心理学の解説を展開されている研究者?のクリエイターもいらっしゃいますので、興味がありましたら参考されてはどうでしょうか。






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