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喫煙率が減少して肺がんによる死亡率が上がっている件


グラフや図表を参照してなんとなくもっともらしい解説がされていても、本当に因果関係を適切に説明しているかどうかは分からない。というテーマです。


わたしは元喫煙者ですが、最近の情勢をみるとタバコの値段は上がる、安心して喫煙できる場所は減る、喫煙者は採用しないと公言する企業経営者も現れる、など愛煙家は厳しい時代を迎えていると感じています。煽りではなく、自分はたまたま少し厳しめで長めの病気をしてタバコそれどころではなかった期間を経過したらなんとなく喫煙の欲求がなくなっていた、というだけの偶然なので、喫煙が良いか悪いかといった次元での主張はあまりありません。むしろ嫌煙原理主義者の人々の主張や行動は行き過ぎていて、違法っぽいな。と感ずることがままあります。


それはさておき、世界的にも喫煙人口は減少傾向にありますが、日本でも喫煙者は減少しています。

(表①)喫煙率の推移

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公益財団財団法人健康・体力づくり事業財団のWEBサイト「厚生労働省の最近たばこ事情」より引用


タバコ・喫煙と言えば「肺がんになる」「がんのリスクが〇倍にも高まる」といった情報があふれているわけですから喫煙率が減少したことで肺がんの死亡率は減少しているのだろうと確認します

(表②)肺がん等による死亡率の推移

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気管,気管支及び肺の悪性新生物<腫瘍>による死亡率
人口動態調査のデータより抽出(縦軸は10万人当たりの死亡率)


気管、気管支及び肺の悪性新生物<腫瘍>(以下、「肺がん等」という)による死亡率は減少していないどころかむしろ増加しています。

おそらく意外な結果となっていると感じる人が多いのではないかと思います。

特に、
・喫煙すると肺がんになる
・喫煙しなければ肺がんにはならない
・喫煙がなくなれば、肺がんになる人はいなくなる
といった理解だったり、それに近い理解でいる方には、到底受け入れられない、データが何か間違ってる違いないという反応も、あるいはあるかも知れません。
(データは、人口動態調査統計表一覧死亡・年次2007年→悪性新生物の主な部位別にみた性・年次別死亡数及び率(人口10万対)から必要なものを指定したものです。)

一方で、
・喫煙者と非喫煙者を比較すると、喫煙者の方が肺がんになる確率が高くなるという疫学的データがあるらしい
・喫煙しなくても肺がんになることは当然ある
・肺がんの原因として喫煙がどの程度の影響があるか知っている。または知らない
という理解の場合は、おそらくやや意外な結果だけれどもそういうことになることもあるだろう。という反応も少なくないのではないでしょうか。

これらは、論理的な思考や分析的な思考に慣れているかどうかで変わってきます。


喫煙と肺がんの関係は喫煙者と非喫煙者では肺がんになる可能性が高まるという通説が浸透しているので、「何かがおかしい。なにか別の要素が働いているのではないだろうか」という推測が働きます。

しかしすぐには判断がつかないような事柄について、同じような図表やグラフを見せられて解説されたような場合には、例えば(表①)は同じく喫煙率の推移、(表②)が全国の飲料の自動販売機の台数だとして、「タバコをやめる人が増加するにつれ、屋外での飲料消費の需要が増え、自動販売機も増加した」というようなケースでは、なるほど確かに表を見てもそうなっているしそういうことか。となることも多いのではないかと思われます。

図表やグラフによる解説等は、視覚的に説明が分かりやすくなるのでそういうものなんだ。と理解しやすくなりますが、「本当に原因→結果という因果関係にあるのか」は見た目の分かりやすさとはまた別のことです。だ。ということは覚えておいてよいものです。



それではなぜ肺がんによる死亡率が上がっているのかですが、正直医学的疫学的な専門知識はないので、これは原因→因果の関係として影響しているのだろう。と推定することくらいですが

① 全体の死亡率自体が上昇している
② がんによる死亡率は高齢になるほど上昇するが、平均寿命も人口構成割合も上がっている

という点が挙げられます。

①については、そもそも「肺がんによる死亡率」は、人口全体に対する肺がんによる死亡者の割合で算定されているところ、人口全体に対する死亡率そのものが上がっているから。というものです。人口全体に対する死亡率が上がっているのは、人口構成の変化(高齢化)によるものです。


(表③)死亡率の推移

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人口動態調査のデータより抽出(縦軸は1000人当たりの死亡率)


② は、専門家ではないので確かなことは言えないものの、がんにかかるリスクは年齢が上がるほど大きくなるのは昔から大きく変化しないところ、他の疾患(脳血管疾患や心疾患など)での死亡が検査体制や技術の進歩等で減ったことの影響があるのかと考えます。

表(④)年齢別のがんによる死亡率の状況

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国立がん研究センターかん対策情報サービス より引用



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