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「超」AI整理法の読書感想文



「超」AI整理法 は、経済学者の野口悠紀雄先生の新刊です。

私は昔から野口先生の経済誌での連載などは好きな方でした。著作を買い込むようなのめり込み方はなかったけれども、データ重視の経済分析の明快さ、論理展開の安定性、けれんみの無さ、など、感覚的にぬめっとするところが無くさわやかな原稿が心地よいと感じています。

本書は野口先生のNOTEをフォローしている中で紹介されているのを見て内容的な興味もあり購入しました。


帯から大きな文字を拾うと

AIを活用して「仕事と生活を発展させる」方法が満載
「いらないものを捨てる」という考え方を捨てる
「無限にためて瞬時に引き出す」整理メソッドを整理メソッド全公開

といったところでしょうか。一言で言うとハウツー本ですね。


■最近の技術を利用している様子が参考になり、励みになる

画像認識、音声入力、自動翻訳などの利用方法、活用の仕方についての解説がされています。また作成されたデータの整理方法(本書では、主に検索にかけるための方法論)も紹介されています。

個々の技術の紹介はそれ自体は特段真新しいこともないのではないかと考えられますが、それを79歳の野口先生が実際に活用している(1940年生まれ)こととして文章にまとめていることが本書の非常な説得力となっています。最近の技術は取り扱いが難しいのではないかと敬遠している中高年世代には励みになるのではないかと感じます。実際に私なども、「音声入力でその場で直ちにメモを取ったり、まとまった文章を書き起こす。」ことなどは試してみるきっかけになりました。


■「超」AI整理法を実践できるかどうかは分からない

本書は全体の内容が整理メソッドにあてられているわけではなくて、情報(データ)の整理に関する部分は全9章のなかの第3章です。「超」AI整理法 のタイトルですが、これはベストセラーとなった「超」整理法 から取られたものと思われます。

第3章でデータに検索タグをつけて検索できるような形にして保存するその方法論が紹介されています(また、サポートページからは、具体的に使用できる検索用のデータフォーマットも紹介されています)。その方法論は「「超」メモ帳」と名付けられています。

それでは「超」メモ帳の使い勝手はどうなのかというと、私はまだ試していません。それは実用性が低いだろうとか不便だろうとか考えてしていないのではなくて、おそらく有用かつ便利だろうという予感はしているのですが、今までしてきたデータ類の取り扱いのやり方を変える習慣化の第一歩が踏み出せていない。というところです。

人の習慣というのは大変に強力なもので、今までやってきたやり方を変えるというのは、それによっておそらくメリットがあるだろうと思えることであっても、「今までもままでもそれほど困っているというわけでもない」と考え始めるとなかなか変化する具体的な行動のハードルは高くなるように思います。

今までしてきたことにくらべてワンアクション増えるというのは確かなので、それで将来の検索の効率は非常に上がるのでしょうが、採用されるかどうかは人によるでしょう。


■最も印象に残ったこと

実は私が一番印象に残ったのは、ハウツー以外のところでした。

それは、野口悠紀雄でも文章構成で苦労していることが分かったことです。

私は野口先生の原稿は、その内容もさることながら、論理展開の順番や、主題と解説や比喩との分量の関係や、文章全体に占めるテーマごとのバランスなどの文章「構成」が美しいと表現できるくらい調和が取れていると感じます。(特に週刊ダイヤモンドの「超」整理日記 が快適です)

そして、この人は文章構成の達人で先天的な才能もあって、苦も無く組み立ててしまえるのだろうと長年想像していたものです、しかし実がそうではなくて、野口先生も、とりあえず書き始めて、書きながら構成を考えて論理の順番をあれこれしてみて・・・といった文章構成の苦労をされていて、構成を考える上でのコツを熱く説明されている部分があり、出来上がりが非常に流麗なベテランの評論家でも、毎度毎度の原稿で苦労しているのか。と、正直にいって感動したのでした。












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