見出し画像

あなたの税金の使いみち(所得税編)

昭和60年代から平成初めの頃の所得税の確定申告書には、「あなたの納めた税金は次のように使われています」として、100円あたりの使いみちが印刷されていました。と言っても私はその当時はまだ社会人にもなっていないので、そういう昔の申告書を見る機会が最近たまたまあったものです。

そのため文言も正確ではないかもしれないし、時期ももっとずっと前から続いていたことなのかも知れません。おそらく現在60代以上の当時の税務関係者はよく知っているかと思います。


なかなか面白い着想だと思いますので、今回は最近の数字ではどういった使いみちになっているのかを、2019年度予算で示してみたいと思います。

税金といってもその種類によって使われ方は違いますが、まずは消費税の次に関係がある人が多い、皆さんにおなじみの所得税で考えてみます。所得税の仕組みなどは省略して、払ったところからスタートします。「使いみち」の議論としては、本当は復興特別所得税のことや地方交付税交付金のことも考えたほうが正確なのですが、とりあえず分かりやすさを重視して忘れることにします。

単位は支払った1万円あたり、いくらが何に使われるかを見ていきます。


■ 所得税は国税で、一般会計歳入となる

前提として徴収された税金の流れを簡単に確認していきますが、ポイントとしては所得税は国の収入(=歳入)となり一般会計にカウントされる。そして一般会計歳入が一般会計歳出に充当される。と考えれば大体大丈夫です。公会計は、企業会計とは異なり基本的に単年度の収支がバランスするように予算を編成して実行していくことを主目的とするからです。

くわしくは、国税庁の税の学習コーナーがとっつきやすいかと思います。

○2019年度予算 国の一般会計歳入額 内訳


一般会計歳入を財源として、一般会計歳出が支出されるので、一般会計歳出の内訳が、「あなたが支払った所得税の使いみち」になります


■ 一般会計歳出の内訳

○2019年度予算国の一般会計歳出額 内訳


✓ 10,000円あたりの税金(所得税)の使いみち
社会保障関連費 3,360円(わたしたちの健康や生活を守るために)
国債費     2,320円(国債を返したり利子を支払ったりするために)
地方交付税交付金 1,580円(地方公共団体の財政を調整するために)
公共事業関係費    680円 (道路や住宅などの整備のために)
文教科学振興費    550円 (教育や科学技術の発展のために)
防衛関係費    520円(国の防衛のために)
経済協力費      50円 (開発途上国の経済援助のために)
その他       950円
端数誤差        △10円
合計       10,000円

となりました。どうでしょうか?

個人的には、地方交付税交付金以下はだいたい何のお金なのかのイメージがつきます。

地方交付税交付金
→財政が厳しい都道府県や市町村に渡す交付金
公共事業関係費
→道路工事や最近だと耐震改修工事や省エネ住宅の補助金もあるし、災害復興事業の予算もここ。全体として少し多い気もするけど
文教及び科学振興費
→公立学校にも私立学校にも文科省の予算は執行されている。宇宙開発やバイオやAI研究関係の予算も
防衛関係費
→略
経済協力費
→ODA。一時期1兆円水準だったことを考えると減っている


一方で、まず国債費は企業会計のセンスでは元本の返済と利息の支払いを混ぜて一括で表示しているのは見ただけで拒絶反応が起きますし、さすがに会計情報としていかがなものかと考えるので内訳を見に行きます。

(国債費の内訳)
債務償還費  14兆6580億円(10,000円あたり1,440円)
利子及割引料   8兆8153億円(10,000円あたり870円)
事務取扱費      349億円
計      23兆5082億円

 

次に「その他」については、食料安定供給9,816億円 (1.0%)、エネルギー対策9,104 億円(0.9%)、予備費5,000億円 (0.5%)等あります。
特段目立つ項目はなさそうで深入りしないことにします。 



最後に社会保障関係費です。34兆円(税金1万円あたり3,360円)が
→(わたしたちの健康や生活を守るために)
では、大まかに過ぎるとように思います。
さまざまな社会保障制度がある中で、何にどのくらい使われているのかの実感がつかめないのでもう少し具体的な内訳を見に行きます。

予算書・決算書データベースの、平成31年度予算書関連 にある
✓「平成31年度一般会計予算書」(1496ページ)
財務省財政制度審議会資料
「社会保障について」

などから社会保障関係費の内訳を確認します。

○社会保障関係費の主な内訳

歳出全体に対する比率で見ると
年金   12.0%
医療   11.8%
介護  3.2%
福祉等 6.5%


具体的には以下の内容です。

○社会保障関係費の項目毎の内訳

医療や介護は、健康保険で賄いきれない赤字分、年金は1階と言われる基礎年金部分の1/2国庫負担によるもの、福祉その他は生活保護や障害者福祉、子ども手当などへの支出ですね


なおここで取り上げている社会保障関係費は「国の負担額」で、各制度の全体の財源ではありません。全体としては121兆円とされています。


また本稿の目的とは直接関係はしませんが、社会保障関係費の相対的な増大について、象徴的な資料を参考に引用してみます。

  ○1990年度と2019年度における国の一般会計歳出歳入の比較


■ まとめ:「あなたが支払った所得税の使いみち」

国際費と社会保障関係費の内訳をもう少し細分して、支払った所得税1万円あたりの使いみちを再表示すると以下のとおり。

✓「あなたが支払った所得税の使いみち」

地方交付税交付金 1,580円(地方公共団体の財政を調整するために)
国債の償還費   1,440円(国債を返すために)
国債の利払費   870円 (国債の利子を支払うために)
年金の国庫負担  1,200円   (基礎年金を支給するために)
医療費の国庫負担 1,180円 (医療費のために)
介護費の国庫負担  320円   (介護費用のために)
福祉その他    650円 (子育て支援や社会的弱者の保護などのために)
公共事業関係費    680円 (道路や住宅などの整備のために)
文教科学振興費    550円 (教育や科学技術の発展のために)
防衛関係費    520円(国の防衛のために)
経済協力費      50円 (開発途上国の経済援助のために)

その他       950円
端数誤差           10円
合計       10,000円


サポートいただいた金額は、面白そうなものやサービスに使ってレポートをしたいと思います